コンビニのレジ横から専用ラックが消えるなど、ドーナツブームがひと段落したといえる昨今。その状況にありながら、大幅リニューアルで新展開に挑むチェーンがありました。世界的なドーナツブランド「クリスピー・クリーム・ドーナツ」です。今回は進化の詳細を、店舗設計とメニュー中心にお届けしていきましょう。
地域特性に合わせた店舗デザイン化が進む
2006年の衝撃的な上陸から12年。行列店から定番となった「クリスピー・クリーム・ドーナツ」ですが、今回のリニューアルによって一層普段使いしやすいようになっています。たとえば店舗デザイン。これまでは全国で同じような設計だったものを、都市型と郊外型でエリアに合わせた形にしていくというもの。
都市型としてはまず、有楽町イトシア店からリニューアル。次いで渋谷シネタワー店も新調されました。どちらも、内装を木目調の落ち着いたデザイントーンに。さらに席数を約20%減らし、そのぶんお客さんはゆったり過ごせるようになっています。
実際に着席してみると、確かにゆとりを感じます。隣を気にするようなギチギチした感じがないので、食事をするにも軽い仕事をするにも快適。また、郊外型の店舗に関しては「イオンタウンユーカリが丘店」から施策を導入しています。ファミリー向けの内装や配置にしたうえに、キッズスペースも設置。
さらにはテイクアウトにも力を入れるほか、「ホールセール事業」という、おみやげや外販での取り組みにも注力していきます。現在、一部のクリスピー・クリーム・ドーナツ店舗以外では羽田空港と、広尾にある外国人御用達スーパー「ナショナル麻布」のみですが、今後はよりお客さんとの商品接点を増やすべく取り扱い店舗を増やすとのこと。
新作は個性的ながらドーナツ店としての矜持がある
メニューにも新たな施策が組み込まれています。それが、食事を意識したドーナツ。こちらも現在は渋谷シネタワー店と有楽町イトシア店のみですが、大きな進化といえる内容です。写真とともに紹介していきましょう。
特徴的なのは、アレンジをしていながらもドーナツであるということ。たとえばドーナツキッシュは、プレーンのドーナツ生地に野菜やチーズを使うとともに卵液でふっくらとした仕上がり。一方のドーナツ プディングは名物の「オリジナル・グレーズド®」を採用。ベリーのほかに卵液やシナモンを使い、味の方向性的にはフレンチトーストを思わせながら、しっかりとドーナツとしてのおいしさになっています。これは同店だからこそなせる新発想で、ドーナツのおいしさへの誇りを感じる傑作ですね。
選べるドリンクがひとつに。「オリジナル・グレーズド®」の生地やメープルシロップで、甘じょっぱいおいしさが楽しめます
もうひとつの目玉が、モーニングセット。こちらも渋谷シネタワー店と有楽町イトシア店のみの展開かつ、朝(8:00~11:00)のイートインのみとなります。キッシュやプディング同様、自慢の生地を使うことによって、ほかにはない味わいを楽しめるのが魅力。きわめてインパクトが大きい、技ありの逸品といえるでしょう。さらに、渋谷店にはここだけの特別メニューも用意されています。
渋谷は若者を中心にグループでの来店が多いことから、「渋谷シネタワー店」ではシェアして楽しめる「ドーナツ タワー」や、「ドーナツホール」を使った3種の商品を用意。これらも、エリアの特性に合わせた施策といえるでしょう。なお、ここまで紹介してきたメニューは店舗限定品でしたが、季節に合わせたシーズナルドーナツは全店舗で積極展開。
なお、リニューアルのコンセプトは“最高のドーナツ&コーヒー体験を提供”というもので、コーヒーも大幅に進化しています。それが、1杯ずつ丁寧に淹れるハンドドリップコーヒー。
まずは都市部の2店舗を中心としたリニューアルですが、2018年内に新機軸のコンセプトで首都圏中心に10~20店舗を出店する予定とのこと。守りから攻めに転じた「クリスピー・クリーム・ドーナツ」。今後の展開も見逃せませんね。渋谷や有楽町に行った際はぜひチェックを!