「SAKE COMPETITION(サケコンペティション) 」は、市販酒を対象とした世界最大規模の日本酒コンペ。日本酒の総出品数は約455蔵から1772点を数え、事実上の「世界一の日本酒」を決めるコンペとなっています。先日、速報として「SAKE COMPETITION 2018」各部門の受賞酒をレポートしましたが、今回はその表彰式で受賞した蔵元やコンペの仕掛け人にインタビューを行い、その背景を明らかにしていきます!
部門のトップとなった注目の蔵元にインタビュー
まずは昨年、「南部美人特別純米酒」がインターナショナルワインチャレンジ(IWC)2017において、「チャンピオンサケ」を受賞した南部美人。日本酒のプロ中のプロが審査する本コンペでも、純米大吟醸部門(出品数445点)とスパークリング部門(出品数74点)の2部門で1位に輝くという快挙を達成しました。
受賞の喜びを、南部美人代表の久慈浩介社長は以下のように語ります。
「瓶内二次発酵で透明、かつシャンパン並みのガス圧を持った日本酒を『世界の乾杯酒にしよう』という想いで造っているのがスパークリング。純米大吟醸は、世界一を目指すわが蔵のフラッグシップです。また、スパークリングには『進化』や『挑戦』、純米大吟醸には『伝統への回帰』を求めているのですが、その両方で評価されたことが本当にうれしいですね」(久慈社長)
意外な返り咲きを果たした「寫樂」蔵元は、受賞に驚きながらも納得
続いて純米酒部門(出品数456点)で1位に輝いた宮泉銘醸(みやいずみめいじょう)。宮泉銘醸は、「寫樂」(しゃらく)の銘柄で2014年に純米酒と純米吟醸の2部門で1位を獲得し、一躍スター蔵元として脚光を浴びましたが、今回は、それ以来のトップとなります。同蔵で全国的に有名なのはもちろん、フルーティで滑らかな飲み口の「寫樂」ですが、今回はやや辛口で、キレ良く仕上げたという地元銘柄「會津宮泉」(あいづみやいずみ)がトップに(「寫樂」も5位をマーク)。宮森義弘社長は、意外ともいえるこの結果をどう捉えているのでしょうか。
「当然かもしれませんが、流通に関係なく、すべての銘柄に全力投球しているので、地元向けの『會津宮泉』が1位になったのは、驚きがある一方ですごくうれしいです。もともと、『會津宮泉』も『寫樂』も、どちらも造るレベルは同じ。造りのクオリティを引き上げてきた結果が『會津宮泉』の受賞なんです。地元の有志にいい報告ができることもうれしいですね。特に目標としている『飛露喜』(ひろき)の廣木(健司)さん。10年前は、彼に追いつくことに必死でしたが、最近、ようやく同じ目線で日本酒を語れるようになってきました。いままでは『もう追い抜いている』とか、冗談で言ってはいたんですけどね(笑)。そんな先輩や後輩たちとともに、これからも会津を盛り上げていきますよ!」(宮森社長)
ちなみに、宮森さんが目標とする廣木健司さんは、主要銘柄の「特別純米」の造りで、「ややドライでシャープな酒質を目指す」とのこと。奇しくも、今回1位を受賞した「會津宮泉」の方向性と一致しており、今後のトレンドを象徴しているようにも見えて、興味深いですね。
吟醸部門1位の蔵は「昨年の受賞で手ごたえを感じていた」
「SAKE COMPETITION」は完全なるブラインドで評価されるため、銘柄の知名度は一切関係ありません。そのため、大都市の有名酒販店であまり見かけない酒が1位になることも。今回は吟醸部門(出品数198点)でトップとなった「極聖(きわみひじり) 大吟醸」がその好例となりました。
蔵元は岡山県の宮下酒造。日本酒を筆頭に、クラフトビール「独歩」やクラフトジン、ウイスキーなど幅広く手掛けています。全国新酒鑑評会では、現在8年連続で金賞を獲得する実力蔵ですが、実は「SAKE COMPETITION」に出品を始めたのは昨年の2017年から。専務で工場長も務める宮下晃一さんに、受賞への想いを聞いてみました。
「去年、初の出品で『極聖 純米大吟醸 天下至聖』がSuper Premium部門のGOLD第2位、吟醸部門において『極聖 大吟醸』がGOLD第8位という結果で、手ごたえを感じていましたが、今年は栄えある1位ということで本当にうれしいです。味の特徴は華やかで、豊かな甘みがありながらも後味はすっきりしていて飲みやすいと思います。贅沢な造りをしていますので、特別な日に飲んでいただきたいですね」(宮下専務)
「十四代」が10位を逃すほど、全体のレベルは確実に上がっている
最後は主催者側の声を紹介します。インタビューに応えてくれたのは、以前当サイトで単独インタビューを行ったこともある、「はせがわ酒店」の長谷川浩一社長。「SAKE COMPETITION」発起人のひとりであり、いまの日本酒ブームを作った立役者でもあります。
「W受賞の『南部美人』がすごいと思う一方で、『極聖』のようなあまり知られていない蔵がいきなり1位になるのが、このコンペの面白いところ。この銘柄、オレだってよく知らないもん。あと、やっぱり強いと思ったのは『作』(※)だね。一方で、10位入賞常連の『十四代』が入っていなかったのが驚き。高木酒造(十四代の蔵元)だって毎年レベルをぐんぐん上げているのにね。受賞するかどうかは本当に微差ですけど、それだけ全体のレベルが上がっているってことでしょうね。その点は、SILVER(トップ10入りを逃した次点の銘柄)を見ればよくわかる。十四代を含め、そうそうたる面々ですよ。
※作(ざく)……三重県の清水清三郎商店の銘柄。今年は純米吟醸部門1位で、昨年は純米部門でワンツーフィニッシュ
あと、大会の規模が大きくなるのはうれしいけど、これ以上出品点数が増えると、きき酒をする会場を探すのも大変なんだよね……。でも、何とか2020年、オリンピックイヤーまでは続けていきますよ。世界の注目が集まるこのタイミングで、大いに盛り上げていきたいですね。今後もぜひ、ご期待ください!」(長谷川社長)
長谷川社長はまた、「いまごろ、受賞した蔵には問い合わせの電話がジャンジャンかかっているでしょうね。今年もまた争奪戦ですよ」と語ってくれました。受賞酒が早々に売り切れてしまう前に、以下でチェック頂き、ご自身の舌で楽しんでみてください!
SAKE COMPETITION 2018の結果
【純米酒部門】
GOLD 10点/SILVER 36点/予審通過 166点/部門出品数 456点
1位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
會津宮泉(アイヅミヤイズミ) 純米酒
2位 宮城県大崎市 株式会社新澤醸造店
あたごのまつ 特別純米 冷卸(ヒヤオロシ)
3位 宮城県白石市 蔵王酒造株式会社
蔵王 K(ザオウ ケー) 純米酒
4位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
クラシック仙禽 無垢(センキン ムク)
5位 福島県会津若松市 宮泉銘醸株式会社
寫楽(シャラク) 純米酒
6位 京都府京都市 松本酒造株式会社
澤屋(サワヤ)まつもと 守破離 山田錦(シュハリ ヤマダニシキ)
7位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人 特別純米(トウヨウビジン)
8位 滋賀県甲賀市 笑四季酒造株式会社
笑四季(エミシキ) センセーション 白ラベル
9位 福島県河沼郡 合資会社廣木酒造本店
飛露喜(ヒロキ) 純米
10位 広島県呉市 宝剣酒造株式会社
宝剣(ホウケン) 純米酒
【純米吟醸部門】
GOLD 10点/SILVER 44点/予審通過 178点/部門出品数 534点
1位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 恵乃智(ザク メグミノトモ)
2位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 一歩(イッポ) 山田錦
3位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 純米吟醸 50
4位 福島県会津若松市 名倉山酒造株式会社
善き哉(ヨキカナ)
5位 栃木県宇都宮市 株式会社虎屋本店
七水 55(シチスイ ゴーゴー)
6位 高知県香美郡 株式会社アリサワ
文佳人 吟の夢(ブンカジン ギンノユメ) 純米吟醸
7位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 愛山(アイヤマ)
8位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 雄町(ザク ミヤビノトモ オマチ)
9位 山形県鶴岡市 冨士酒造株式会社
栄光冨士(エイコウフジ) 純米吟醸 朝顔ラベル 生貯(ナマチョ)
10位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米吟醸 雄町(オマチ)
【純米大吟醸部門】
GOLD 10点/SILVER 35点/予審通過 156点/部門出品数 445点
1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人(ナンブビジン) 純米大吟醸
2位 茨城県石岡市 合資会社廣瀬商店
SEN(セン)
3位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 雅乃智 中取り(ザク ミヤビノトモ ナカドリ)
4位 三重県鈴鹿市 清水清三郎商店株式会社
作 朝日米(ザク アサヒマイ)
5位 岩手県盛岡市 赤武酒造株式会社
AKABU(アカブ) 純米大吟醸 極上ノ斬(ゴクジョウノキレ)
6位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 プレミアム 純米大吟醸
7位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
渡舟(ワタリブネ) 純米大吟醸 斗壜取り(トビンドリ)
8位 栃木県小山市 小林酒造株式会社
鳳凰美田 赤判(ホウオウビデン アカバン)
9位 茨城県結城市 結城酒造株式会社
結ゆい(ムスビユイ) 純米大吟醸 雫酒(シズクザケ)
10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚(イシヅチ) 純米大吟醸
【吟醸部門】
GOLD 10点/SILVER 10点/予審通過 69点/部門出品数 198点
1位 岡山県岡山市 宮下酒造株式会社
極聖(キワミヒジリ) 大吟醸
2位 兵庫県神戸市 株式会社神戸酒心館
福寿 超特撰(フクジュ チョウトクセン) 大吟醸
3位 栃木県芳賀郡 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸 雫酒(シズクザケ)
4位 山口県萩市 株式会社澄川酒造場
東洋美人(トウヨウビジン) 大吟醸 山田錦 中取り
5位 京都府京都市 月桂冠株式会社
伝匠月桂冠 大吟醸(デンショ ゲッケイカン)
6位 福島県岩瀬郡 松崎酒造店
廣戸川(ヒロトガワ) 大吟醸
7位 栃木県芳賀市 株式会社外池酒造店
燦爛(サンラン) 大吟醸
8位 宮城県加美郡 株式会社山和酒造店
わしが國(クニ) 大吟醸 雫搾り斗瓶取り(シズクシボリ トビンドリ)
9位 群馬県前橋市 株式会社町田酒造店
町田酒造35 MAX(マックス) 大吟醸
10位 愛媛県西条市 石鎚酒造株式会社
石鎚 真精(シンセイ)大吟醸 袋吊り雫酒(フクロツリ シズクサケ)
【SUPER PREMIUM部門】
GOLD 3点/SILVER 2点/部門出品数 48点
1位 栃木県さくら市 株式会社せんきん
醸(カモス)
2位 兵庫県神戸市 白鶴酒造株式会社
白鶴 超特撰 天空(ハクツル チョウトクセン テンクウ) 純米大吟醸 白鶴錦(ハクツルニシキ)
3位 秋田県潟上市 小玉醸造株式会社
太平山(タイヘイザン) 純米大吟醸 天巧(テンコウ) 20
【スパークリング部門】
GOLD 3点/SILVER 5点/部門出品数 74点
1位 岩手県二戸市 株式会社南部美人
南部美人 (ナンブビジン)あわさけスパークリング
2位 広島県廿日市市 中国醸造株式会社
一代 弥山(イチダイ ミセン) スパークリング
3位 大分県玖珠郡 八鹿酒造株式会社
八鹿(ヤツシカ) スパークリング Niji
【海外出品酒部門】
GOLD 1点/SILVER 2点/部門出品数 17点
1位 アメリカ Arizona Sake LLC
Junmai Ginjo Nama
SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Namanama
SILVER カナダ Ontario Spring Water Sake Company
Izumi Shiboritate
【ラベルデザイン部門】
GOLD 10点/SILVER 6点/部門出品数 152点
1位 兵庫県加西市 富久錦株式会社
新緑の播磨路(シンリョクノハリマジ)
2位 山口県阿武町阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
純米吟醸酒 名聲希四海(メイセイキシカイ)
3位 佐賀県伊万里市 古伊万里酒造有限会社
monochrome+(モノクローム プラス)
4位 福岡県三井郡 株式会社みいの寿
三井の寿(ミイノコトブキ) 純米大吟醸 三井神力(ミイシンリキ)
5位 愛知県常滑市 澤田酒造株式会社
白老 自然栽培米 純米酒(ハクロウ シゼンサイバイマイ ジュンマイシュ)
6位 新潟県長岡市 越銘醸株式会社
山城屋(ヤマシロヤ)
7位 山口県阿武町 阿武の鶴酒造合資会社
阿武の鶴(アブノツル) 点と線(テントセン)
8位 茨城県石岡市 府中誉株式会社
太平海 純米吟醸 雄町 1314(タイヘイカイ ジュンマイギンジョウ オマチ イチサンイチヨン)
9位 福島県東白川郡 株式会社矢澤酒造
純米大吟醸 白孔雀(ジュンマイダイギンジョウ シロクジャク)
10位 新潟県新潟市 峰乃白梅酒造株式会社
峰乃白梅 KING OF MODERN LIGHT純米吟醸 無濾過生原酒(ミネノハクバイ キング オブ モダン ライトジュンマイギンジョウ ムロカナマゲンシュ)