夏の風物詩のひとつ、そうめんが最近盛り上がっています。お中元で届き毎日のように食べ、夏の終わりには「今日もそうめんか……」。そんな時代は終わったのです。ここでは、2018年流のそうめんの愉しみ方をお届けします。
【魅力を伝えてくれた人】
そうめん研究家 ソーメン二郎さん
実家が三輪そうめん製麺所。著書に「簡単!極旨!そうめんレシピ」(扶桑社)があります。
伝統的なソウルフードがクラフトブームにのりヒット
ラーメン、うどん、そば。日本人に3大麺料理を聞けば、そんな答えが返ってきそうですが、夏といえばそうめんも欠かせません。
そうめんのルーツは中国の伝統菓子「索餅」にあるといいます。現地では七夕にこれを食べる風習があり、その文化ごと日本に伝わりました。そして朝廷などへの献上品として用いられ、いつからか庶民の間でも食べられるように。また、お中元にそうめんを贈る風習は、細長い麺に、幸せや喜びが細く長く続く(=末長い付き合いを)という縁起の良さからきています。つまりそうめんは由緒正しき日本のソウルフードなのです。
最近では“クラフト”がトレンドとなっている影響もあり、ちょい高な手延べご当地そうめんがヒット。昨年東急ハンズで行われた全国のそうめんを集めたフェアでは完売が続出したという。それに合わせて高価格帯のつゆも売り上げを伸長。「またそうめんか」の受難を経て「またそうめん食べたい」の時代へと復権し、各地の味を手軽に食べられるようになったいま、賞味しない理由はありません!
意外と知らない!?そうめんのいろは
そうめんは日本人にとって身近な麺ですが、意外とその歴史や作り方については知られていません。ここではそうめんの基礎を取り上げます。
Q1.そうめんに種類ってあるの?
そうめんには大きく分けて手延べ式と機械式の2種類があります。
[手延べ式] 棒状にした生地を2本の箸にかけ、ゆっくりと引き延ばします。この作業を繰り返し、職人技で麺を細くしていく伝統的な手法です。
[機械式] 機械でこねた生地を延ばし、刃物で細く切って乾燥させる手法。手延べ式に比べて強いコシは生まれにくいですが、大量生産できます。
Q2.そうめん、うどん、冷麦の違いは?
そうめん、うどん、冷麦は同じ原材料で作られていて、麺の太さによって呼び方が変わります。
[手延べ式の場合]
1.7㎜未満……そうめん、冷麦
1.7㎜以上……うどん
[機械式の場合]
1.3㎜未満……そうめん
1.3㎜〜1.7㎜未満……冷麦
1.7㎜以上……うどん
Q3.そうめんって何からできているの?
小麦粉、油、塩、水。油は生地の乾燥スピードを遅らせたり、麺同士がくっつくのを防ぐために使います。香川県小豆島のそうめんはごま油を使うのが特徴ですが、オリーブの栽培も盛んなことから、オリーブオイルを使うタイプもあります。
Q4. そうめんの発祥は?
奈良時代に中国から、日本の貴族に向けて伝わった菓子がルーツ。約1200年の歴史があり、日本最古の麺と言われています。当時の都は平城京で、いまの奈良。ここが発祥地で、奈良県桜井市の三輪そうめんが元祖なのです。
日本3大そうめんを知ろう!
うどんやラーメンと同じように、そうめんにも“日本3大”があります。この3つは全国的に知名度も高いです。まずはこれらを食べ比べてみるのがオススメ。
[奈良県]三輪そうめん
そうめん発祥の地といわれる、奈良県桜井市を中心とした三輪地方の手延べそうめん。極細ながらコシが強く、ゆで伸びしにくいのが特徴。味としてはのど越しがよく、ツルッとした抜群の清涼感を楽しめるのも魅力です。
[兵庫県] 揖保乃糸
そうめんのトップブランドとして知られ、播州地方におよそ600年前から続く伝統製法で作られた手延べそうめん。熟成と延ばす工程を何度も繰り返すことで生まれる、コシの強さとのど越しのよさが特徴です。
[香川県]小豆島そうめん
冬の澄んだ寒風にさらしながら、全国トップクラスの日照時間を誇る小豆島に注ぐ陽光で天日干しした手延べそうめん。また、瀬戸内海の塩とごま油を使う、現地ならではの製法にこだわっています。滑らかな食感が大きな特徴。
【2018 夏】そうめんトレンド
注目度急上昇中のそうめんには3つのトレンドが生まれています。熱湯のように沸騰している最前線を紹介します!
Trend 1
そうめん専門店の路面店が誕生!
今年だけでも恵比寿に「そうめん そそそ」、東中野に「そうめん居酒屋 壱兆庵」と、都内には少なかった専門店が続々と誕生。ソーメン二郎さんは「今後駅ナカにもできるのでは」と予想します。
Trend 2
そうめんを食べられるイベントが増加!
今夏は、そうめんを食べられるイベントが多数。「新宿 夜鳴きそうめん PROJECT」が発足したり、そうめん専門店がロックフェスに出店したりと、そうめんを目にする機会が多くなります。
Trend 3
全粒粉入りそうめんをパスタ風に!
小麦の表皮なども挽いた、栄養価の豊富な全粒粉のそうめんが増加。ザラっとした歯触りも特徴で、野菜やごまドレッシングと合わせたパスタ風の食べ方が生まれています。
三輪山勝製麺
全粒麺
500円
国産小麦を石臼で粗めに挽粉。何も付けずに食べてもおいしい味と食感はまさに究極です。
文/中山秀明、鈴木翔子(本誌) 撮影/佐坂和也