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2018/10/15 17:30

新潟の蔵がついに達成! 当たり前に見える「地元米100%の日本酒」はとんでもない快挙だった

以前取材した新潟県の蔵元から、筆者のもとにこんな一報が届きました。

 

「地酒を醸す酒蔵、麒麟山酒造(株)では、今年の9月から始まる酒造期において、全銘柄にて地元・奥阿賀エリアで生産された原料米100%での酒造りを達成する見込みである」

 

まず、まじめ! 文章がまじめ! …と思いましたが、「ついにやったか!」とも思いました。

 

というのは、この麒麟山、「地元の人に愛される本物の地酒」を目指し、「淡麗辛口の復権(※)」と「地元米100%での酒造り」を悲願としていたから。昨年に取材した際は、あと「3年で達成したい」と言っていたのですが、そうか、前倒しになったのか……。

※淡麗辛口…甘味と酸味が少なく、さっぱりしている日本酒の味を表す言葉

↑麒麟山酒造

 

この規模での「地元米100%での酒造り」は、米どころ新潟だから難しかった

ちなみに、この「地元米100%での酒造り」について、「なんだ、米どころの新潟なら簡単にできるんじゃない?」という方がいるかもしれません。しかし新潟県は食用米の名産地ゆえ、実はこれが難しい。わざわざ栽培の難しい酒造好適米(酒造用の酒)を苦労して作る必要などないのです。それを同社は、一軒一軒地元農家を説得して回り、1995年に「奥阿賀酒米研究会」を結成。以来、自社でも米作りを行うアグリ事業部を創設し、20年以上をかけて、ここまでたどり着いたわけで……。

しかも、麒麟山酒造の生産量約5500石は、通常の蔵元の10倍以上の生産量。全国の上位100蔵に入る規模となっており、その使用米を「県単位」ではなく、「町単位」でまかなっているのが驚異的なのです。「ウチは県内の米だけで造ってます」という小さな蔵は数あれど、この規模で「町の米だけで造ってます」という蔵はそうそうありません。「ちょっと努力したらできちゃった」というレベルではなく、長い時間を掛け、強い意志でやり通さなければ達成できない、文字通りの「血と汗と涙の結晶」なわけです。当たり前のように見える「地元米100%」がどれほどすごいか、おわかりいただけたでしょうか。

 

新潟の同業者が認める社長が取り組みを主導

そんな強い意志を持って、「地元米100%での酒造り」を主導したのが、麒麟山酒造の齋藤俊太郎社長。09年には新潟県酒造組合新星会(青年部会)会長に就任し、15年には10万人超が参加する超大型イベント「にいがた酒の陣」の実行委員長に就任しています。この経歴を見るに、自社だけが儲かるのでなく、地域で日本酒を盛り上げていこう、とのお考えがわかりますね。

 

ちなみに、つい先日、新潟の某蔵元の女性社員さんに齋藤社長のお話をしたところ、「ホント、よくまとめてくださってね~」と、感心とともにちょっぴり憧れがこもったコメント。なるほど、できた人なんだなあ……。そんな齋藤社長、悲願を達成した感慨はいかばかりか……。

↑1年前、取材した際の齋藤俊太郎社長

 

普通酒「伝統辛口」の透明感に衝撃を受ける

そんなある日、麒麟山の主力銘柄「伝統辛口」を飲む機会がありました。あれ、気のせいか? 1年前に取材したときより旨いぞ。なんだか透明感とキレが増したような……。しかもこちら、吟醸酒や純米酒、本醸造酒より下のランクにあたる普通酒のはず。それでこの透明感とは…ちょっと信じられません。

 

…そういえば、貯蔵によるお酒の劣化を極力抑えるために、麒麟山は延床面積2000㎡、2階建ての巨大貯蔵棟「鳳凰蔵」も新設してたんだよな。それが功を奏したのか……? などと、ちらっと考えてみましたが、美酒の前では考えるだけムダ。旨ければそれでいいんです。「地元米100%での酒造り」という大事を為した、麒麟山酒造さんにカンパイ。本当におめでとうございました!

 

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