アデノシン三リン酸→イノシン酸が熟成鮨の神髄だ!
鮨職人であるとともに熟成士でもある大将は、長崎出身。大阪の高校を卒業後、学校の紹介により大阪鮨の店でキャリアをスタートしました。住み込みで働くなか2年ほど経ち、あるとき勉強のために訪れた一軒に深く感銘を受け、弟子入りを志願。同時に江戸前鮨の技術や魚を寝かせる技を知ることに。
「さばきたてと3日熟成のマダイとを食べ比べる機会があって、味の違いにビックリしたんです。そこからはもう、熟成鮨の世界に一直線。働きながらも自分で魚を買って、さばいて、寝かせてという研究を続けましたね。当初は腐らせてしまうこともありましたけど」(白山大将)
味をおいしくするには、食感をよくするには、香りを高めるには。独学でも少しずつ試行錯誤を重ね、8年後の2017年には大阪の熟成鮨店へ移り大将に。その技を発揮しながら名声も高めていきます。そして満を持して今年上京。
大将は科学的な側面からも、熟成のメカニズムを熟知しています。
「魚の熟成のカギとなるのが『アデノシン三リン酸』。ATPといわれるもので、これがうまみ成分のイノシン酸に変化することが熟成。ただ、やりすぎてイノシン酸がヒポキサンチンに変化すると腐敗になります。この見極めが重要ですね」(白山大将)
また、シャリも酒も熟成鮨に合わせたものを厳選しています。たとえば米は長野・飯山産のコシヒカリを採用。うまみの濃いネタを引き立たせるため、砂糖は使わずに赤酢と少量の塩で仕上げています。そして酒は日本酒なら7~10種類、ワインは白赤各4種のほかシャンパンもラインナップ。ビールも用意されています。
「熟成鮨 万」は基本おまかせで、鮨(本稿のネタは一例)のほかに数皿の料理やお椀などが供され2万円~という設定。決して安くはありませんが、知られざる熟成鮨との出合いは至福の体験となるでしょう。食通の間では、予約が取りづらくなるのも時間の問題と噂される同店。いまがチャンスかもしれません!
【SHOP DATA】
熟成鮨 万(よろず)
住所:東京都渋谷区東4-6-5 ヴァビル3階
アクセス:東京メトロ「表参道駅」B1口徒歩12分
営業時間:18:00~24:30(22:00以降おこのみ可)
定休日:日