まだまだ寒い日も多い時期、だしが香るお味噌汁を飲むと、体も心も温まりますよね。味噌は、古くから日本人の食生活に欠かせない発酵食品のひとつ。「手前味噌」という言葉があるように、昔は農家を中心に味噌を自家製造している家庭が多く、大豆や麹の割合によって“その家の味”があったとか。
そんな味噌作りは、手間がかかるように思われがちですが、実のところ仕込み方は簡単。気温が高い時期よりも、発酵スピードが緩やかな寒い季節に低温発酵した方が旨味を引き出すことができ、雑菌の繁殖の心配も減りますから、まだ寒いうちにぜひ挑戦してみましょう。ここでは、味噌作りで押さえておきたいポイントと、工程を紹介します。
味噌づくりの材料は「大豆・麹・塩」の3つ
味噌の原材料はとてもシンプルで、その配合や素材で味が変わってくるともいえます。今回は、静岡県で150年あまり続く麹専門店・鈴木こうじ店の「手作り有機味噌セット」を使って作りました。
同店によると、「麹は、熊本県産の有機米『にこまる』を使って発酵させたものです。それに、無農薬の北海道産大豆『とよまさり』と、瀬戸内の藻塩をセットにしてお届けしています。昼夜の温度差が激しい土地ではおいしい大豆が採れると言われており、とよまさりは甘みがあり、風味がよい大豆です。藻塩は、海藻に海水を含ませて火にかけてつくる塩分濃度が低い塩で、まろやかな口当たりです」(鈴木こうじ店スタッフ、以下同)
自分好みの配合を知るともっと楽しい
自家製のいいところは、麹や塩の割合を変えて好みの味噌作りを楽しめるところ。「首都圏あたりでよく食べられている信州味噌のように、大豆と麹を同量にすれば、やや辛口で馴染みがある味になるのではないでしょうか。甘めのお味噌が好きなら、大豆750グラムに対して麹を2キロに増やし、西京味噌のような味わいにするのもおすすめです。味噌セットは大豆1.3キロに麹を1.5キロで、やや甘みのある味噌に仕上がります。東北地方では長く熟成させた味噌のことを『赤味噌』と呼ぶことがあり、熟成期間が長いほど深みが増し、赤味噌に近くなっていきます」
それでは実際に味噌を仕込んでみましょう。
味噌づくりは2日間に分けて作業する
味噌作りは2日間にわたりますが、1日目は大豆を浸水させるだけなので、余裕のある日の前夜に大豆を水に浸しておきましょう。また、味噌は専用のカメやホーロー容器に仕込みます。使う前に洗剤でよく洗って乾かし、焼酎やホワイトリカーなどで拭いて消毒しておきます。
1. 大豆を水に浸けて戻す
味噌セットに入っている大豆を、2倍以上の水(1キロの大豆に対して2リットル以上)に浸して12時間ほどおきます。一晩で大豆がぐっと水を吸収するので、たっぷりの水で戻すことが大切です。
2. 大豆が指で潰れるくらいまで鍋で煮る
一度大豆を水切りし、鍋に大豆と水をひたひたに入れ、力を入れなくても指で潰れるくらいまで柔らかく煮ます。ストウブなどの鋳物鍋であれば40〜50分ほどかかり、ステンレス製の鍋であれば3時間ほどかかるでしょう。圧力鍋で煮ると短時間で済みますが、大豆の皮がはがれて空気穴に詰まってしまう危険があるので、おすすめしません。
水が減ってきたら差し水をしながら、弱火〜中火でコトコトと煮ます。煮えたら大豆をざるに上げますが、このとき茹で汁は捨てずに取っておきます。
3. 塩と麹をあらかじめ混ぜておく
大豆を煮ている間に、麹をほぐして塩と混ぜておきます。できあがったものを「塩きり麹」といいます。生麹は柔らかくて、混ぜるたびに麹の甘い香りが漂います。生の麹は、米に麹菌をつけて発酵させた状態のものなので、届いたらなるべく早く仕込むほうがいいでしょう。乾燥させた麹は常温でも保存が可能で便利ですが、でんぷんを麹にする力が弱いため麹菌が繁殖しにくくなりますから、味噌作りには生麹がおすすめです。
4. 茹で上がった大豆を潰す
柔らかくなった大豆を、手やマッシャー、麺棒などで潰しましょう。豆の形が残らないよう、しっかり潰します。冷めてしまうと大豆が硬くなって潰しにくくなるので、手早く行いましょう。
5. 塩きり麹と大豆を混ぜる
3で混ぜた塩きり麹に、大豆を混ぜていきます。しっかり混ざったら、耳たぶくらいの固さになっているか確認してみましょう。まだ硬いようであれば、とっておいた茹で汁を少量ずつ混ぜて、固さの調節をしていきます。
茹で汁は、コクがあり栄養満点なので、これで残った分はとっておいてお味噌汁に入れるのがおすすめです。
6. 味噌玉にしてホーロー容器に入れる
混ぜ合わせたら、ハンバーグを作るときと同じく、生地を両手でキャッチボールするように、空気を抜きながら丸めていきます。丸めた味噌玉をホーロー容器に入れていきましょう。1段目が入れ終わったら手のひらでぐっと押し潰して空気を抜き、2段目にまた生地を詰めていきます。
7. 塩で蓋をして発酵させる
味噌玉を全部入れたら、上からしっかり押して空気を抜き、平たくならします。容器の周りに味噌が付着していると、そこからカビが発生してしまうので、キッチンペーパーなどで拭き取り、容器の淵を焼酎などで拭いて消毒しておきましょう。きれいになったら、その上にラップを敷き、塩を乗せておきます。この塩は味噌セットに含まれるものではなく、カビを防ぐためだけに使用するので、安価な食塩で構いません。
8. 風通しのよい場所で保存する
温かい場所や湿気の多いところは避けて、容器を保存しておきます。仕込んだ季節によっても違いますが、1月に仕込んだものは夏を過ぎたあたりが食べごろです。「毎月一度程度は味噌の様子を見て、夏が過ぎたら上下を入れ替えるように混ぜると、麹菌が活発に働きます。表面に生える白カビは“産膜酵母”と言って無害で、食べても問題はありませんが、スプーンなどで取り除くといいでしょう」
できあがった味噌は、そのままにしておくと発酵が進んでしまうので、好みの味になったら冷蔵庫に保存してください。
手間をかけずに40分で仕込めるキットも!
大豆を煮たり潰したりするのが面倒! という方には、Oisixから発売されている「季節の手仕事を楽しむ 手作り味噌」キットがおすすめです。「国産の有機大豆を煮たものをお届けするので、袋ごと湯煎して温めたら、袋の上から手で揉んで潰していただけます。あとはそれを麹と塩と混ぜて仕込めば完成する、手軽に手前味噌を楽しめるキットになっています」(オイシックス・ラ・大地 広報/丸尾幸子さん)
Oisix 手作り味噌Kit
3726円
自家製の味噌でつくるお味噌汁は、一段とおいしく感じるでしょう。味噌汁以外にも野菜のディップにしたり、炒め物の味つけに使ったりしていると、あっという間になくなってしまうはずです。
取材・文・調理=吉川愛歩 撮影=矢部ひとみ 構成=Neem Tree