経済産業省 資源エネルギー庁では、省エネルギー促進に向けたさまざまな広報事業を展開しています。その事業の一環として「SAVE THE ENERGY PROJECT」という試みを実施しているのをご存知でしょうか?
平成27年から開始しているこのプロジェクトは、これまでファッション業界や陶磁器業界を取り上げ、さまざまな省エネルギーの普及や促進を図っています。さらに、本年度は「おいしい省エネ」をテーマとしたレシピの紹介にも注力するそうです。
今回、おいしい省エネレシピを検討・開発したのは、「チャイニーズダイニング 美虎(みゆ)」の五十嵐美幸シェフ。“おいしい”と“省エネ”を両立させるレシピとはどんなものなのでしょうか?
レシピ考案者の五十嵐シェフの料理教室はなんと300人待ち!
「おいしい省エネレシピ」を考案した五十嵐シェフは、1997年にフジテレビの人気番組「料理の鉄人」に22歳で当時最年少挑戦者として出演した「中華料理界の女傑」。2008年には渋谷区幡ヶ谷に「中国料理美虎(みゆ)」をオープンし、いまでは全国での食育活動や町おこしプロジェクトの参加、海外における中国料理の普及など、その活動は多岐に渡るそうです。
そんな五十嵐シェフは料理教室も開催しており、なんと予約は300人待ち。家庭の火力で本格的な中華料理を作るノウハウを学べることで大人気なんだとか。
今回、メディア向けの試食会で紹介されたレシピは「よだれ鶏」「春キャベツとアサリの炒め」「中華丼」の3つ。それぞれの作り方と省エネポイントをご紹介しましょう。
「よだれ鶏」は余熱で火を通せば省エネに
最初に作ったのは「よだれ鶏」。“よだれが出るほどおいしい”という意味でこの名が付けられた四川料理で、ピリ辛のタレとしっとりした鶏肉が特徴です。
まずは鶏ムネ肉の皮を剥いだら、約1cmの厚さになるよう横に包丁を入れます。フライパンに冷たい状態の鶏ガラスープを入れて火にかけましょう。
スープが沸騰してきたら肉をひっくり返してフタをし、火を止めてしまいます。余熱だけで火を通せるのが、このレシピの省エネポイント。600Wの電子レンジで6分程度加熱するのが一般的なレシピですが、余熱で蒸し煮にするとエネルギーの使用量が抑えられます。
鶏肉が冷めたらそぎ切りにします。あとは、下ごしらえしたきゅうりともやしを器に載せ、鶏肉を盛り付けたら、タレ、長ネギ、ピーナツ、香草を添えて完成。
鶏肉の量にもよりますが、15分もあれば完成する手軽さもこのレシピのいいところ。火を使う時間が短いので、これからの暖かくなる季節でも気兼ねなく作れそうです。
【材料】
鶏ムネ肉 1枚
鶏ガラスープ(有塩) 500cc
きゅうり 1/2本
もやし 1/2袋
長ネギ 1/3本
香菜 お好み
ピーナツ等 お好み
<タレ>
おろしニンニク 大さじ1
おろし生姜 大さじ1
酢(黒酢) 大さじ4
醤油 大さじ3
ラー油 お好み
砂糖 大さじ2
ごま油 大さじ3
すりごま(黒) 大さじ3
味噌 大さじ1
山椒粉 大さじ1/2
【調理工程】
1.鶏ムネ肉は皮をはぎ、厚さ半分(約1cm)になるよう横に包丁を入れる。フライパンに冷たいスープを入れ、鶏ムネ肉を入れて火にかける。沸騰したら肉をひっくり返してフタをし、火を消して蒸し煮にする。そのままにして、冷めたらそぎ切りにする。
2.もやしはさっと茹でる。長ネギはみじん切りにする。きゅうりは斜め薄切りにし、細く切る。ピーナツは軽く叩く。
3.フライパンにタレの材料を入れ、混ぜて加熱する。
4.器にきゅうり、もやしを載せ、鶏肉を盛る。タレをかけて、長ネギ、ピーナツ、香菜を添える。
「春キャベツとアサリの炒め」は野菜をオイルコーティング
家庭で作る野菜炒めをシャキシャキに仕上げるのは難しいと諦めている人もいるはず。そこで覚えておきたいのが、五十嵐シェフの考案した「オイルコーティング」の技。
野菜を先にオイルコーティングしてから旨みのあるスープに入れてフタをすることで、油通しと炒めが同時にできるんです。しかも、通常の作り方ならキャベツを3〜4分炒め、アサリを加えて5〜7分中火で蒸すところが、この方法なら5分も加熱すれば完成します。
おいしくて省エネになるだけでなく、普段作るよりも短時間で作れるとは一石三鳥くらいの価値がありますね。今回はサラダ油を使いましたが、ごま油を使ってもいいそうです。この「オイルコーティング」の技はほかの料理でも活用できます。
【材料】
春キャベツ 1/2個
アサリ 12粒(200g)
たけのこ(水煮) 100g
鶏ガラスープ(有塩) 200g
サラダ油 少々
【調理工程】
1.春キャベツは食べやすい大きさに手でちぎる。ボウルにサラダ油少々を回しかけてから軽く混ぜ、オイルコーティングする。
2.たけのこは薄切りにする。
3.フライパンに鶏ガラスープ、アサリ、たけのこを入れて加熱する。沸騰したらキャベツを加えてフタをし、蒸し炒めにする。
4.1〜2分経ったら(蒸気が上がったら)フタを外し、軽く混ぜる。
「中華丼」は野菜の大きさとオイルコーティングが決め手
先ほどの野菜炒めと同様、中華丼を作る際もオイルコーティングを活用します。さらに、野菜の切り方を工夫することで、均一に火が入るので加熱時間を短縮できるそうです。
野菜に火が通りやすいように切ることで加熱ムラが防げるうえに、どの順番で野菜を入れるかなどを考える必要もありません。通常、中華丼を作るには5〜7分炒めて、その後2〜5分煮込むのですが、この方法なら手際のいい人は5分もあれば完成するでしょう。
【材料】
チンゲン菜 40g
白菜 80g
ピーマン 1/2個
グリーンアスパラ 1本
パプリカ(赤) 1/6個
しいたけ 1個
ヤングコーン 1本
豚コマ切れ 80g
むきエビ 2尾
うずらの卵 2個
生姜薄切り 1枚
サラダ油 大さじ2
ごま油 大さじ1
鶏ガラスープ(有塩) 150cc
ごはん 適量
<調味料>
オイスターソース 大さじ1
醤油 大さじ1/2
酢 大さじ1/2
砂糖 大さじ1/2
水溶き片栗粉(1:1) 大さじ1/2
【調理工程】
1.野菜(生姜以外)はひと口大に切る。生姜は1cm角に切る。
2.野菜(生姜以外)をボウルに入れ、サラダ油を回しかけてオイルコーティングする。
3.フライパンにごま油を入れ、豚肉と生姜を加えて炒める。鶏ガラスープを加えて、沸騰したら、2の野菜、むきエビ、うずらを加え入れ、フタをして約1分間加熱する。
4.3のフタを外し、調味料を加えて軽く炒める。仕上げに水溶き片栗粉を加えてとろみをつけ、ごはんの上に盛る。
ちなみに、今回紹介した料理を盛り付けるのに使った器は、省エネ窯で焼かれた長崎県の波佐見焼なのだそう。こんな器作りにも省エネが導入されているというのがユニークですね。
私達が日常生活を送るのに欠かせないところから省エネを意識すれば、エネルギーを効率よくスマートに使えるようになるかもしれません。まずは自分だけの省エネレシピを考えてみましょう!