グルメ
2019/3/30 21:00

【街中華の名店】「秀永」の「ほんこん飯&とりめし」は高田馬場の中華遺産だ

気配りとおいしさへのあくなき探求心が人気の秘訣

最近になって人気が高まっているのは「ロース飯」。これも独特のネーミングだが、台湾料理の「排骨飯」(パイコーハン)に似た一皿だ。

↑店頭のディスプレイ内にある「ロース飯」

 

排骨とは豚肉にスパイスを効かせた衣を付けカリっと揚げたもので、つまりそのカツをのせたワンプレートである。ここでは、その麺バージョンにあたる「ロースめん」を紹介したい。

↑「ロースめん」850円。ラーメンのベースは塩味で、もやしや青菜をごま油や鷹の爪とともにソテーした野菜炒めものる

 

カレー粉で下味を付けた豚のロースに、小麦粉と片栗粉のブレンドをまぶして排骨に。麺のうえにのせたら、最後にしょうゆベースのあんをかけて完成だ。

↑ゆるいウェーブのかかった中太麺は、多めの160g

 

排骨の存在感は具材としてだけにあらず。肉に浸透したスパイスの風味が少しずつスープにとけだすことで、食べ進めるうちにどんどん魅惑的な味わいに変化していく。

↑つまみや酒も充実している。スピードメニューとして人気の「中華風冷奴」は250円で、酸っぱく辛いタレと干しえび、刻みザーサイが絶妙。「日本酒」「紹興酒」は各450円で「瓶ビール」は550円

 

「ほんこん飯」は、忙しい香港のタクシー運転手がサクっと食べられるようにという背景から生まれたとされる「的士飯」に似ている。それにしてもなぜ同店にはトガったメニューが多いのか。荒谷店主に聞いたところ、自身が創業者にあたる叔父から受け継いだとのことで詳しくはわからないそう。ただ、ベースは広東料理とか。叔父が修業した店の味が引き継がれているという。

↑荒谷さんは約25年前にこの「秀永」の二代目店主となった。かつては早稲田や国分寺にも「秀永」があり、前者が叔父の営む本店だったが2010年11月、引退とともに閉店。いまはその屋号を荒谷さんが守っている

 

とはいえ荒谷さんは伝統の味をそのままにせず、少しずつ進化させている。たとえばそれが、食感を豊かにするために「バッコチーハン(とりめし)」へ加えたぎんなんであり、「ロース飯」を麺に仕立てた「ロースめん」だ。

↑昼はランチを求める腹ペコ族が。夜は夕食や晩酌を楽しむ人々でにぎわう

 

そういえば、同店の飯類に付く汁物は中華スープではなくみそ汁。これは「日本人ならみそ汁のほうがいいのでは」という「秀永」流の哲学だとか。料理がわかりやすい名称になっているのも、そんな気配りからだろう。ときに攻めつつも、守るべきところは大切に。それが安うまグルメ激戦区・高田馬場で永年愛される、「秀永」の人気の秘訣なのだ。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

秀永

住所:東京都新宿区高田馬場2-8-5

アクセス:JRほか「高田馬場駅」徒歩6分

営業時間:11:30~15:30、17:00~22:00

定休日:日曜

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