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2020/1/31 19:00

禅にも通じる!? ワインへの新しいアプローチ「ワインアロマセラピー」で心の声を聴く

「ワインが好き」というひとでも、多くが二言目に発するのは、「でもよく知らなくて」。ビールで同じ質問をしたら、果たして同じ回答が返ってくるでしょうか? ワインは、他のお酒に比べて圧倒的に「知らなくてはいけない」というイメージが強いお酒です。しかしワインは本来、世界的にみても“生活の一部”として人々の喜怒哀楽に寄り添い人生を豊かにするツールであって、知識の多さを競うものではないはずです。

 

「知識ではなくもっと心に従って、自由にワインを選んでいい」との信念をもち、まったく新しいメソッド「ワインアロマセラピー」によって、ワインの楽しみ方を提唱している人を取材しました。

 

心身へ作用する精油の役割を、ワインの香り・色・味わいに置き換える

「アロマセラピーとは、精油を使って心身の疲労回復やリラクゼーション、ストレスの解消などを目的とした自然療法。それを精油ではなく、ワインの香りや色、味わいで行うのが、ワインアロマセラピーなんです」と語るのは、ソムリエでありワイン講師、またライターとしても活躍する一般社団法人ワインアロマセラピー協会の会長、蜂須賀紀子さん。

 

ワインアロマセラピー協会は、2018年12月に蜂須賀さんが発起人となり他3名の理事とともに法人化されました。でも実は、「ワインアロマセラピー」という構想自体は、すでに4年も前からあったそう。着想のきっかけは、何だったのでしょうか?

 

「当時私は、自営のフレンチレストランでソムリエやワインスクールの講師などをしていたんですが、臨床心理士でありアロマセラピストの友人との会話から、最初の構想が生まれました。自然の産物であるワインも、精油のように無数の香りの種類があって、たとえワインを何気なく飲んでいるときでも心身に影響しないわけがない、それをアロマセラピーのような観点でカテゴライズしたら面白いのではないか? と考えたんです」(蜂須賀さん)

↑ワインアロマセラピー協会会長の蜂須賀紀子さん

とはいえ、「果たして、ワインを香りだけでカテゴライズできるのか?」「精油でないワインにセラピー効果が期待できるか?」と、それぞれ互いの道のプロフェッショナルだからこそ躊躇していたところへ、背中を押してくれた人物がいたと言います。

 

「嗅覚の研究者として高名な、東京大学大学院農学生命科学研究科の東原和成教授です。ワイン愛飲家でもある東原先生は、ワインを分析するのではなく、複合体としてそのものを楽しめるメソッドならば、ぜひ確立すべきだと後押ししてくださいました」(蜂須賀さん)

 

その後東原先生を正式に相談役に迎え、4年の歳月を経た試行錯誤の結果、ワインの香りや色、味わいの要素によって12のカテゴリーに分類。それぞれに期待される心理作用を親しみやすい表現で提示し、知識やブランドではなく、“今の心理状態に共鳴する”ワインを選べるように体系化されました。

 

では、その“心で感じる”12のワインアロマセラピーカテゴリーをご紹介しましょう。

 

「ワインアロマセラピー」12のカテゴリー

・白ワイン

No.1 元気&リフレッシュ【ビタミン系白ワイン】
ハーブや柑橘類の香りが中心で、フレッシュな酸味の白ワイン

No.2 チャーミングに弾けるお色気【南国女子系白ワイン】
トロピカルフルーツや花の香りが中心で、酸味が柔らかな白ワイン

No.3 満ち足りた大人の幸せ【大人リッチ系白ワイン】
バニラやバターの香ばしい香りが中心で、辛口の白ワイン

No.4 子供のころの夢の世界【ゆるふわまったり系白ワイン】
オレンジやはちみつの香りが中心で、甘みの強い白ワイン

・赤ワイン

No.5 若さと未来への希望【キュート系赤ワイン】
梅やさくらんぼのすっきりした香りが中心で、軽やかな赤ワイン

No.6 肉食女子のエネルギー源【肉食女子系赤ワイン】
熟した黒い果実と動物的な香りが中心の濃厚な赤ワイン

No.7 内省と落ち着き【哲学系赤ワイン】
土や森、スパイスの香りが中心の落ち着いた赤ワイン

No.8 万物との一体感、心からの静かな幸福【時の旅人系赤ワイン】
チョコレートやロースト、腐葉土のような香りが中心の熟成した赤ワイン

・ロゼワイン

No.9 しっとりした女性の可愛らしさ【ガーリッシュ系ロゼワイン】
さくらんぼやイチゴの甘い香りが中心の優しいロゼ

・スパークリングワイン

No.10 華やか賑やか、元気パワー【元気パワー系スパークリングワイン】
柑橘類や酵母の香りが中心の、フレッシュなスパークリングワイン

No.11 成功からの活力【成功リッチ系スパークリングワイン】
はちみつやトーストの香ばしい香りが中心のスパークリング

・ナチュラルワイン

No.12 生命の息吹【自然力系ワイン】
大地の力強さを感じさせるナチュラルなワイン

 

詳細は、ワインアロマセラピー協会HP

 

このワインは「美味しい」と言っていいんですか?

この斬新なメソッドを提唱する蜂須賀さんは、自身もまた、型にはまらない経歴の持ち主でした。元銀行員で、その新卒で入社した大手銀行を退社し、長年の夢だった料理人へ転身を遂げます。東京のレストランに在籍したのち、2年間の単身フランス修行へ。帰国後、出産を経て、仕事と子育てとの両立を考慮してソムリエへと転身しました。その後、同じく料理人だった夫と東京・南青山にレストランを開業。

 

そのころ、カルチャースクールのワイン講師としても活動していましたが、そこで受講生からの忘れられない質問があったといいます。それは「先生、このワインは『美味しい』と言っていいんですか?」ということ。

 

当時、ワイン資格取得対策講座などで教鞭をとり熱心に教える日々でしたが、その言葉をきっかけに「何かが違う……」と感じ始めたそう。この経験は、冒頭の「知識ではなくもっと心に従って、自由にワインを選んでいい」という、現在の蜂須賀さんの信念を築く礎となったと言えるでしょう。

 

ではいよいよ、ワインアロマセラピーを実践。また、今回テイスティングしたワインも紹介していただきます。

 

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ワインアロマセラピーを体験してみよう

それでは実際に、ワインアロマセラピーの手順に従って、ワインをテイスティングしてみましょう。まずは2~3回深呼吸。さらに手を組んで上に伸びるなど、好きなリラックスポーズをしながら心の声に耳を傾ける準備を整えます。

 

そしてワイングラスを手に取り、色を見て香りを嗅ぎます。この時、とても重要なことは「意識を外に向けないこと」。つまり、このワインの色は何色で、香りにはどんな要素があるかなど“外的要素”を捉えようとしてはいけません。なんの品種でどこの産地のワインかを当てることなど論外(!)。その香りで自分が何を感じるか、どんな情景が浮かぶか、それが好きか嫌いかという“内面の声”だけを捉えます。

↑リラックスして、鼻腔をくすぐる香りに思いを委ねます

 

例えば、それが上記のカテゴリーでNo.7に属するワインで、香りを嗅いだ時に土のような香りを感じたとします。それによって浮かぶ情景はなんでしょう? 静かな山奥にあるお寺でしょうか、子供のころに遊んだ賑やかなキャンプ場でしょうか? その情景が落ち着くと感じるでしょうか、そこには行きたくないと感じるでしょうか?

 

それによって、今自分が求めている感情を認識します。心地よければいま求めているのは心の落ち着き、違和感があるようならエネルギー溢れる活力を求めているのかもしれません。

↑その後、味わい、色をたしかめます

 

まるで誰かのカウンセリングを受けているかのように、12のカテゴリーを手がかりにワインから、今の自分を教えてもらう。マインドフルネスや瞑想のように、現代人に必要と言われる内観の時間を、ワインとともに過ごすのがワインアロマセラピーです。

 

気分に合うワインを、心のままに選んで楽しむ

ワインのテイスティングには、それぞれの立場による最適なテイスティング方法があります。ワイン流通における立場とは、大きく分けて「生産者」「小売店」「レストラン」そして「消費者」など。生産者は、できたワインの質や欠点を見極め、向上・改善するために細かく分析しながらテイスティングをします。小売店は、お客様へ正しくそのワインの情報を伝え、適正価格で販売するために、商品特性を見極めるテイスティングが必要です。レストランに従事する人は、そのワインと料理との絶妙な相性を見極め、温度や抜栓時間など最適なコンディションで提供するためのテイスティングが必要です。

 

では一般消費者は? これまでに挙げた「ワインのプロ」たちが行うような立場での細かなテイスティングは、果たして必要でしょうか? その日の気分に合うワインを、自分の心に聞いて自由に楽しむ、ワインアロマセラピー的なテイスティング方法は、消費者にとって純粋なワインの楽しみ方の本質と言えるでしょう。

 

「ワインアロマセラピーのようにじっくりとワインを味わうことは、ワイン自体に対しても理解を深めますので、“後回し”とはいえ、知識が身につく効果ももちろん期待できます。また、飲みすぎてしまう習慣の改善にも。ブドウ品種や銘柄で認識していた好みが、その日の気分によって変化し広がるので、結果的にワインライフクオリティーそのものが向上するとも言えます」(蜂須賀さん)

 

ワインを取り巻くさまざまな人の思いも、受け止めてくれる懐の深さをもっているようです。さぁ、今日のワインが教えてくれるあなたの心の声に、耳を傾けてみましょう。

 

テイスティングしたワインリスト


ブノワ ショヴォー
「コトー デュ ジェノワ ブラン シレックス 2018」
フランス・ロワール地のソーヴィニヨン・ブラン。白い花や白桃の豊かなアロマ、草原を思わせるハーブのニュアンスも爽快に香ります。ワインアロマセラピーカテゴリーでは1番。

 


ヴァンサン ジラルダン
「ブルゴーニュ ルージュ キュヴェ サン ヴァンサン 2016」
フランス・ブルゴーニュ産のピノ・ノワール。小さな赤果実や梅のようなニュアンス。チャーミングな味わいながら上品な酸味とバランスが特徴です。ワインアロマセラピーカテゴリーでは5番。

 


シャトー オート ド プレザンス
「シャトー オート ド プレザンス 2012」
フランス・ボルドー地方のやや熟成した赤ワイン。芳醇な熟成香は、土や葉巻などを思わせる荘厳な印象。ゆっくりと身体に染み入るような落ち着いた味わいです。ワインアロマセラピーカテゴリーでは7番。

 

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