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お酒
2020/2/28 17:00

ウイスキーの達人が明かす「バーでの敬意ある飲み方」と「バーボンへの思い」の噺

本稿は「バーはハードルが高い」と思われている方々のために、バーの魅力や楽しみ方を識者に教えてもらう連載の後編。前回同様、元バーテンダーであるGetNavi編集部の鈴木翔子(すずき・しょうこ)が、有名酒販店「目白田中屋」の栗林幸吉店長に根掘り葉掘りお聞きします。前編ではバーの魅力やバーで学んだこと、印象深いエピソードなどを語ってもらいましたが、今回は、「バーでの飲み方」について聞いていきます!

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です

↑栗林幸吉さん。世界中を巡り、5000種類以上のウイスキーを飲んできた栗林さんは、自著「ウイスキー案内 狂おしいほどの1本に出合う」(洋泉社)を上梓したりTV番組で特集されたりする有名人

 

ウイスキーに敬意を表して、1杯目はストレートで飲む

鈴木 今回は、現在の栗林さんがどのようにバーを楽しんでいるのか、そのあたりからお聞きしたいと思います。栗林さんといえばウイスキーですが、バーで飲むのもウイスキーですか?

 

栗林 そうですね。そもそもバーとの出合いもウイスキーがきっかけでしたからね。

 

鈴木 出合ったころと現在で、飲み方は変わりましたか?

 

栗林 昔は「かっこいい」と思う人のマネをしていました。松田優作さんがロックで飲んでいたら同じ銘柄をロックで、原田芳雄さんがソーダ割りを飲んでたら同じ銘柄のソーダ割りをチョイスしていましたね。

 

鈴木 確かに、彼らが飲んでいる姿を見たら、どんな味なのかを知りたくなりますもんね。

 

栗林 でも、飲みはじめたころは、その魅力が十分にわかっていなくて、少し背伸びして飲んでいた感じでしたが(笑)。いまは基本的に、最初はストレートで飲んでいます。

 

鈴木 やっぱり、その銘柄本来の味を知るためですか?

 

栗林 それもありますけど、一番は「敬意」かな。僕にとってウイスキーは一本一本が完成された作品。そこに敬意を払いたいから、まずはストレートでひと口ね。でも、そのあとは、ハイボールでも水割りでも、その人が好きな飲み方でいいと思うんです。たとえば、バーボンだったらロックで飲むことが多いかな。

 

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音楽や風景もウイスキーのつまみになる

鈴木 ウイスキーを飲むとき、おつまみはどうされていますか?

 

栗林 僕の場合、なんでもつまみになっちゃうんですよ。パスタとかスイーツとか、そのときのおすすめとして出されたものならなんでもOK。まじめなことを言えば、ウイスキーにはスモーキーな風味があるので、それに似た風味のあるもの、例えば燻製やスモークナッツ、ソーセージやベーコンといった、似た風味を感じるものは合うと思いますね。なかでもバーボンだったら、肉系のおつまみがぴったり。ジャーキーや生ハムなどがおすすめですね。あと、僕は音楽もつまみになると思っています。

 

鈴木 音楽! その発想は栗林さんらしいかもしれませんね。

↑「目白田中屋」には、栗林さんが音楽好きであることを示すアイテムが随所に見られます

 

栗林 例えばバーボンにはリズム&ブルースが合いますよ。あれは最高のつまみですね。あとは、「つまみになる風景」というのもあると思います。例えば、壁に貼られたポスターや絵画とか、重ねられたレコードのジャケット、並べられた酒瓶やシェーカーの具合とか。マスターやカウンターに座る面々も風景のひとつ。いい風景を眺めて、いい音楽を聴くのもいいつまみになるんじゃないかな。えてしてそんなときは、黙っていたほうがいいこともありますね。

 

鈴木 ああ、なんとなくわかります。バーの独特な空気が生み出す、濃密な時間ですね。

 

栗林 慣れない人もいるかもしれませんが、大人の雰囲気を楽しむ時間というか、いろいろと想像もふくらむし、それもまたバーやウイスキーの魅力だと思います。

 

バーボンにはジーンズのイメージが重なる

鈴木 ちなみに、バーボンはウイスキーのなかでも⽐較的価格も手ごろで、初⼼者でも試しやすいジャンルかと思います。そこで今回は、バーボンについて深堀りしてみたいのですが、栗林さんにとってバーボンってどんなイメージがあるでしょうか。

 

栗林 僕にとってバーボンは、ジーンズのようなイメージがあるんですよ。

 

鈴木 バーボンとジーンズが似ているということですか?

 

栗林 はい、醸し出す雰囲気がね。アメリカで「労働者の酒」といわれた、アルコール度数の強いバーボン。一方で、生地が厚くて丈夫な労働者のジーンズ。つまり、どっちも、もともとは労働者のものだったわけじゃないですか。でもジーンズは、1950年代ごろにマーロン・ブランドやジェームズ・ディーンといった当時の若者のカリスマが着用したことで、若者のかっこよさの象徴になっていったんです。

 

鈴木 ジーンズにもお詳しいんですね!

 

栗林 ええ。僕、ジーンズも大好きなんです。まあ、そんなアメリカにおけるジーンズの台頭が、バーボンにリンクするんですよ。ジーンズと同様、カリスマだった松田優作さんや原田芳雄さんが飲んでいる姿に憧れて、自分も飲むようになったという若者は多かったと思うし。

 

鈴木 その若者のひとりが栗林さんだと。

 

栗林 そうですね(笑)。一方、1970年代になると今度はデザイナーズのジーンズが出てきます。「カルバン・クライン」とかね。これとリンクするように、80年代に入ると「ブティックウイスキー」と呼ばれる洗練されたカテゴリーに人気が集まりはじめます。バーボンでいうと「ブラントン」がまさにそれ。労働者の酒だったバーボンを、デザイナーたちも好んで飲むようになり、ボトルやラベルがおしゃれな銘柄が登場するようになったんです。

 

鈴木 たしかに、「ブラントン」のボトルは印象的なデザインですよね。

 

栗林 ええ。だから僕は「ブラントン」は、「デザイナーズバーボン」だと思いました。事実、おしゃれな人も好んで飲んでいますし、香りや飲み口も華やかでリッチ。贈り物にもぴったりでしょう。

↑栗林さんが手にする「ブラントン」のボトル。ブラントンのボトルキャップは、ケンタッキーダービーのサラブレッドを模したフィギュア(8種類)となっています

 

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バーボンは「打ち破りたい存在」だった

栗林 ただ、僕にとってバーボンはウイスキーの入口であり憧れでもあったけど、「打ち破りたい存在」でもあったんです。

 

鈴木 え! それはどういう意味ですか?

 

栗林 僕はスコッチのシングルモルトウイスキーも大好きで、「目白田中屋」に入る前はシングルモルトの輸入会社を経営していたんです。でも、当時は全然人気がなくて。だからこそ広めたかったんです。

 

鈴木 栗林さんが輸入業をしていたのは、シングルモルトブームの前だったんですね。だから、当時売れていたバーボンを打ち破りたかったと?

 

栗林 そうです。あとは、バーボンの販売元がどこも大企業だったから、というのもありますね。自分たちしか取り扱っていないものを売りたかったし、規模は小さいものの、こだわりのある会社を応援したい気持ちも強かったです。

 

鈴木 ベンチャー魂みたいなものですか。

 

栗林 でも、いまは「規模が大きいこともすごいことだ」と思うようになりました。例えば、日本のベンチャーウイスキーの蒸留所の方と話をしたら、「メジャー(大手)はやっぱりすごいよね」って話になったんです。「飲む人にとって、”手ごろな価格でおいしいものが手に入る”って、素晴らしいことじゃないですか」って。それを聞いて、確かにメジャーのすごさってそこだよなと思いました。いまでも小さな蒸留所を応援したいという思いはありますけど、メジャーもリスペクトしています。

 

鈴木 メジャーブランドには、それぞれ歴史の深さもありますよね。

 

栗林 そう。”おいしくて安くて、どこでも買える”というのは、造り手にそれだけの歴史や製造技術の蓄積があるからこそ。だから、そういった点はすごいと思うんです。

 

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バーに行けば、悲しいときでも「また頑張れるな」と思える

鈴木 では最後に改めて、バーやウイスキーに興味はあるけれど、まだ存分に楽しめていないという初心者にオススメのメッセージを! まずはウイスキーについてお願いします。

栗林 ウイスキーは嗜好品のなかでも、感性を刺激する最たるもののひとつ。特に熟成させるという「時間」の概念が入っているので、これを楽しめるのはすごく幸せなことですよ。何をやっても長続きしなかった自分が、気付けば30年もウイスキーに関わる仕事を続けている。これって、ウイスキーという素材が、奥深くて魅力的だったからなんだと思います。ある著名なウイスキー評論家の方も「飽きっぽい俺たちがこれだけ続いてるんだから、ウイスキーってやっぱり魅力あるんだな」って言ってますよ。やっぱり面白いもん。

 

鈴木 たしかに、30年続くってすごいですよね。やっぱり、栗林さんにとってウイスキーとの出会いは運命だったと。では、続いてバーについてお願いします。

 

栗林 まずは、バーに飲みに行ってください。すると、きっと感性の部分が変わるはず。そこを磨いておくと人生が楽しくなりますよ。いろいろな人と出会えるし、そこで多少失敗したっていいんです。私だって恥をかくことも、反省することもよくありますよ。ああ、しゃべりすぎたな、とかお会計のタイミングが悪かったな、とか。バーで人と接するうちに、そんなことを感じ取れるようになるんです。

 

鈴木 バーは感性を磨ける場であり、人の心の微妙な動きを学べる場でもある、と。

 

栗林 それともうひとつ、バーのいいところは、楽しいときも悲しいときも行けること。僕はおふくろが亡くなったときに、レストランでおいしいものを食べたいと思えなかった。そんなとき、なじみのバーに行ったら、お酒だけはなんとか飲めるわけです。何だかわからないけど、そんなときに限って、いつもは安酒を出すマスターが「……これ飲んどけば?」っていいものを出してきて。たまたまかもしれないけど(笑)。楽しいときも、悲しいときもいつでも行けて、「何かいいよな」「また頑張れるな」と思える。それが、僕にとってのバーですね。

 

鈴木 バーって人の人生に寄り添う、温かい場所なんですね。栗林さんのお話をお聞きして、私もさっそくバーに行きたくなりました。いろいろとお話しくださり、ありがとうございました!

撮影/我妻慶一

 

前編はコチラ→バーの「かっこいい大人たち」から何を学んだ? ウイスキーの達人が語る「バーの魅力と探し方のコツ」の噺

 

<取材協力>

目白田中屋

2010年のWWA(ワールド・ウイスキー・アワード)で、単一小売店部門の世界最優秀小売店として認められた名店。店内にはブランデー、ワイン、日本酒、ビール、リキュールなど5000種以上のお酒を用意しており、なかでもウイスキーは約2000種と圧倒的な品揃え。客の年齢層も20~80代と幅広く、都内はもちろん、地方や外国からもファンが訪れます。

住所:東京都豊島区目白3-4-14 田中屋ビル B1

アクセス:JR山手線「目白駅」徒歩2分

営業時間:11:00~20:00

定休日:日

 

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