デリバリーやテイクアウトを実施する飲食店が増えている。特に、これまで珍しかったラーメン専門店の宅配は注目のカテゴリーだ。今回は、そのなかでも話題性が高い、日清食品が手掛ける新サービス「RAMEN EX」を紹介。実際に届けてもらい、食べ比べたレポートをお届けする。
ラーメン宅配のジレンマを解消した革新的なサービス
RAMEN EXにザワつかずにいられない理由はいくつかあるが、特にあの日清食品が手掛けていること、そして全国の超有名ラーメン店が参加している点がデカい。ラインナップは「一風堂」「すみれ」「ますたに」「無鉄砲」。これまた日清がカップ麺やチルド麺でコラボしているからこそ実現した、豪華な顔ぶれだ。
また前記4店のほかに、日清食品が独自に開発した「豚天国ラーメン」というオリジナルメニューがある点も興味深い。そこで今回は長年カップ麺で愛されている一風堂とすみれ以外の3つを、あえてオーダーしてみた。まずはGetNavi webの取材でもお世話になり、筆者は個人的にも一番頻繁に足を運んでいる無鉄砲からトライ。
【関連記事】男気あふれる日本一のド豚骨ラーメン「無鉄砲」——サニーデイ・サービス田中貴とRockなRamen
https://getnavi.jp/cuisine/201349/
ちなみに、冒頭でラーメン専門店の宅配は注目度が高いと述べたが、そこにはなかなか複雑な事情がある。というのも、看板メニューは汁ありのラーメンながら、デリバリーのメニューには汁なしやつけ麺しかないというケースは珍しくない。これはある意味、その店がこだわりをもっているからだろう。出前のラーメンはどうしても麺がのびる、スープが冷めるという弱点がある。
「本当はラーメンを食べてほしいが、のびた麺&ぬるいスープでは提供できない」という葛藤。実はこのジレンマを解消している点が、RAMEN EX最大の特徴である。ではどうやって実現しているのか。そこはさすが、即席ラーメンの王者・日清食品。麺、スープ、具材それぞれを異なる温度帯でキープしたまま届け、食べ手がレンジアップすることでできたてを再現する仕組みになっているのだ。
付属の作り方を読むと、具材をシートごと取り出してスープの上に麺の中皿とフタを再度セットし、レンジで加熱する、とある。そしてチンが完了したらすべてをドッキングして盛り付け、完成という流れだ。
食べてみると「なるほど!」と思った。実店舗の、粘度の高い“食べるスープ”的なジュレ感には届かないものの、とろみは十分。そして何より、豚骨のうまみや深みはありながらも雑味やくさみは皆無で、ペロリと味わえるおいしさ。醤油ダレのテイストも見事だ。
無鉄砲の店主、赤迫重之さんは、「大量の豚骨を骨の髄が溶けるまで煮込んだ濃厚なとんこつスープは、甘みがあり、あっさりとした味わいに仕上げています。渾身のスープを最後の1滴までお楽しみください」とコメントを寄せている。
ちなみに現在、ローソン限定で「日清 無鉄砲 濃厚とんこつ」も発売されているが、RAMEN EXの配送エリア内の人はぜひ今回の「とんこつラーメン」も試してみてほしい。
ぽってりした鶏白湯に背脂の甘味が加わる京都の老舗の味
次は「ますたに」。同店は京都の老舗で、東京には日本橋に店舗を構えている。ラーメンの特徴は、鶏ガラやモミジの白湯スープに豚の背脂を効かせたコク深い醤油味。どちらかといえばこってり系だが、今回のなかでは最もあっさりしているラーメンだ。
ますたにの調理法やレンチン時間は、無鉄砲とほぼ同じ。詳しくは各商品の調理方法を参照あれ。ルックスも一見似ているように思えるが、チャーシューは部位が異なり、こちらのネギは九条ネギを採用しているなど素材からして違う。
味わいは、まろやかさが印象的。ぽってりしたスープに背脂の甘味が加わり、円熟味を感じるおいしさだ。そこにゆるいウェーブのかかった中細の角麺がよく絡み、まとまりがあって食べやすい。
ますたにの大坂正浩店主は「マイルドな背脂の甘み、サッパリとした醤油のキレ、ピリッとした一味の辛さ。京都で60年以上続く自慢の3層スープを、ぜひご堪能ください」とコメント。現在のRAMEN EXは個性的なラーメンが多いが、スタンダードな醤油味が好みという人は、ますたにから試してみるといいだろう。
「豚天国」は想像以上にトンでもなかった!
最後は個人的にダークホース的な存在の、豚天国ラーメンに挑戦してみた。ウリは、食べ応えのある極太麺、背脂とニンニクを効かせたこってり濃厚な豚骨醤油スープ。さらに、大判のチャーシュー2枚とたっぷりの野菜がのるのも特徴だ。
豚天国ラーメンは、調理方法が前述のラーメンと若干異なり、麺とスープ&野菜を別々にレンチンする必要がある。まずは麺を600wなら約5分30秒(500wは約7分)。その後、スープと野菜のパックを同時にレンチン(600w約6分30秒/500w約7分)し、ドッキングさせるのだ。
食べてみると、いい意味でのジャンクな味わいで、腹ペコな人には特にオススメ。ワシッとした強靭な歯ごたえの極太麺に、ピッギーでサディスティックな豚骨醤油スープがよく合う。これは想像以上にとんでもない完成度の高さだ。
スープは濃厚ながら、無鉄砲とはまた違う。それほど乳化はしていないので極太麺と野菜との一体感がよく、重すぎないのでツュルヅュルッと食べられる。味付けは濃いめだが、野菜自体に味は付いていないので、そこもお互いが補い合う形だ。
豚天国は“あのラーメン”をベースに開発された
3種食べてみたものの、個人的には気になる点が随所に。そこで日清食品の“中の人”に、豚天国ラーメンだけでも素材や特徴を教えてもらえないか。また、各メニューの麺の量を教えてもらえないか、などをメールで問い合わせてみることに。すると、いくつかの質問には返答してもらえた。
「豚天国は、日清食品が2020年3月に発売した『豚園 背脂醤油豚ニンニク』をベースに開発しました。昨今トレンドになっている“背脂とニンニクがしっかりきいた豚骨醤油スープに、たっぷりの野菜と極太麺を合わせたラーメン”をイメージしており、もやしの量、スープのアブラ感、トッピングの生ニンニクがポイントです。スープは、アブラ感がしっかり効いていながらも、ちゃんと最後まで食べきれる“絶妙な味わい”に仕上げています。また、ネーミングに関しては、食べているときの“天国にいるような至福の感覚”を味わっていただきたいという思いから、『豚天国』と名付けました」(日清食品・豚天国の開発者)
「背脂とニンニクがしっかり効いた豚骨醤油スープに、たっぷりの野菜と極太麺を合わせたラーメン」をインスパイアしていると聞けば、使用している小麦粉、醤油、調味料、豚肉の部位などが気になるところ。ただ、こちらについては企業秘密とのこと。
「大変申し訳ございませんが、麺とスープの素材については公表しておりません。チャーシューにつきましては、10種類以上の素材を加えた醤油ベースの秘伝ダレに漬け込んだ肩ロースを、厚切りの大判でトッピングいたしました。見た目のインパクト、厚み、大きさ、さらには食べたときの満足感にこだわった自信作です」(豚天国の開発者)
また、各商品の具体的な麺重量については公表していないが、実店舗のラーメンと変わらないボリュームで提供しているとのこと。
RAMEN EXはまだまだ始まったばかり。今後、配達エリアは拡大するであろうし、参加店舗やメニューも増えるはず。調理工程もより手軽になっていくのではないだろうか。「一風堂監修 博多とんこつラーメン」は、RAMEN EX専用に開発された商品とあるし、すみれの札幌濃厚味噌ラーメンも気になる。とにかく、ラーメン好きには一度試してもらいたいサービスだ。
【Information】
RAMEN EX
https://www.nissin.com/ramenex/