2022年のグルメを語るうえで、「健康」「サスティナブル」「フードテック」の3つが引き続き大きなテーマになることは間違いありません。本稿ではそこから少し目線を変えて、革新的な食の提供スタイルや販売手法に着目して、店舗=ハコのトレンドを5つ紹介していきます。
1:湯食同源
“ととのう”というキーワードとともにサウナが盛り上がっているのは周知でしょう。また、レトロ礼賛トレンドとともに銭湯も人気を集めています。この、お風呂カルチャーと外食とが、おいしく融合する「湯食同源」が今年はいっそう増えるはず。
ちなみに、食と風呂の融合としてはもともとスーパー銭湯的な施設がありましたが、筆者が言いたい「湯食同源」のお店は少々違うもの。スーパー銭湯より小規模で駐車場はなく、銭湯ほどのサイズ感で駅前や住宅街に開業されるイメージです。
銭湯は現代風にリノベ―ションされることも多く、樽生のクラフトビールが飲めるお店も続々出現中(例:代々木上原「BathHaus」、錦糸町「黄金湯」など)。一方、風呂をテーマにした大衆酒場(例:根津「不健康ランド 背徳の美味」、湯島「大衆食堂ゆしまホール」)も開業していて、今後は実際湯に浸かれる飲食店も出てくると思います。
上記「恵比寿サウナー」のような、サウナ兼飲食店も増えてくるはず。なおサウナの本場フィンランドでは、海の家のようにサウナ上がりにそのまま飲食できる、お洒落なレストランが点在しているとか。とにかく「湯食同源」は、ポカポカ状態のアツさなのです!
2:カタカナスシ
2022年の外食でアツくなるジャンルは寿司です。土台はすでに固まっていて、ワタミは昨年12月に「すしの和」を開業。そして、スシローグループの「海鮮三崎港」は昨年11月から「回転寿司みさき」へとリブランディングを進めています。この戦略にはロールモデル的なものがあり、それが寿司酒場の「鮨 酒 肴 杉玉」。これもスシローグループの店舗なのですが、「鮨 酒 肴 杉玉」の影の立役者がスパイスワークスという外食企業です。
スパイスワークスは外食店舗の運営だけでなく、内外の施工やメニュー開発といった店舗プロデュース業にも積極的。あの「恵比寿横丁」も手伝っています。そんな同社が最近力を入れているのが横文字の寿司店「カタカナスシ」。
特徴は、いまどきの大衆酒場のようにカジュアルな和モダン感があり、気軽につまんで飲めること。なお、スパイスワークス以外にも、カタカナスシは存在。新店では荏原中延の「ブルペン」、既存店でも三軒茶屋、下北沢、用賀には「大衆酒場 スシスミビ」、豪徳寺には「大衆酒場 スシビ」、代々木には「すし酒場 サザエ」があります。ゼヒイッテミテクダサイ!
3:次世代スーパーマーケット
外食からは少し外れますが、小売店にもぜひ注目したい流れがあります。コンビニ、ドラッグストア、均一ショップ、ホームセンターなどもどんどん進化していますが、筆者がアツいと思うのがスーパーマーケットです。キーワードは3つ。「ゼロ・ウェイスト型」「名物フード型」「テック型」です。
「ゼロ・ウェイスト」とはゴミゼロのことで、扱う食品だけでなく販売手法でもサスティナブルに積極的な店舗が出現。袋や梱包トレーなどを用意せず、量り売りで販売するのです。有名なのは、イオンが日本で展開するオーガニックスーパー「ビオセボン」の量り売りコーナーですが、京都発の「斗々屋」は全食品が量り売り。2021年には東京進出も果たしました。今年の拡大に期待です。
「名物フード型」は八百屋のフルーツサンドで有名な「ダイワスーパー」(愛知県)、ほぼ具おにぎりの「生鮮館やまひこ」(愛知県)、おはぎの「主婦の店 さいち」(宮城県)などが代表的で、全国各地で同様に名物フードによる差別化を図るスーパーが増えていくと思います。
また首都圏でもピザやカツ重で有名な「オーケーストア」のように、高コスパな自社フードに力を入れていく店舗が増えるはず。最新店では「ヤオコー」傘下の「フーコット」の躍進に注目です。
「テック型」の代表店は、九州発の「トライアル」。会計端末が付いた「レジカート」は、時短や非接触が礼賛される現代において先進的なシステムだといえるでしょう。また、無人店舗はコンビニが先行していくはずですが、目白の「紀ノ国屋スット」は無人スーパーの先駆ですし、2025年には八王子にAIやロボット技術を駆使したイオンモールの出店が予定されており、今後も目が離せません。
4:試食専門店
冒頭で売らない店「b8ta」に触れましたが、米国発の同店に対して“日本版b8ta”と言われるショールーム一体型のAIカフェが、2021年夏開業の「AZLM CONNECTED CAFE」です。
ネットショッピングが一般化したいま、店舗は対面販売にこだわる必要はありません。そんな時代に出てきたのが、オンラインとオフラインを融合させる手法「OMO(Online Merges with Offline)」です。クラウドファンディング発の「Makuake SHOP」や西武渋谷の「チューズベース シブヤ」もOMOにあたるでしょう。
OMOが様々なジャンルを扱うなか、試食をウリにしているのが2021年12月に正式オープンした代官山の「メグダイショップ」です。ネットとリアルがシームレスな現代のマーケットで重要なことは、その製品によって得られる体験であり、一方でネットでは体験ができません。だからこそ試食が価値的なのです。
2021年春開業のOMO「フードテックパーク」も将来的には試食可能になります(感染症対策のため現在は停止中)し、試食に特化したショールーム店舗はいっそう増えていくでしょう。
5:飲める食堂
コロナ禍で強い逆風にさらされた業種のひとつが外食。ディナーのみ営業のお店が、対策としてランチ営業を始めるというケースも多く見られました。また、昼間の時間帯に間借りさせたり、昼と夜で異なる業態で営業したりする二毛作スタイルも2020年以降どんどん増えています。
こうして新しい生活様式が叫ばれる昨今、昼夜どちらにも適応できる業態として新しく生まれているのが「飲める食堂」です。昼は定食や洋食などを提供し、夜は居酒屋系の惣菜をメインに飲めるのが大きな特徴。例えば「庄や」で有名な大庄グループは2021年から「定食のまる大」を積極展開しており、人気を集めています。
これまでも大衆酒場は外食トレンドの1つでしたが、「飲む」というイメージが人によってはマイナスに捉えられてしまう状況下、居酒屋や酒場ではなく食堂と銘打つ飲食店は増えるでしょう。「ネオン酒場」の元祖といわれ、2021年に大阪から東京進出して話題の「大衆食堂スタンド そのだ」も、酒場ではなく食堂です(そのだは2016年開業なので、時勢に合わせたわけではありませんが)。ウィズコロナ時代の飲食店は、提供スタイルにも注目です。
今回はモノよりハコを中心に紹介しましたが、筆者個人としても店舗や施設を積極的に取材したいと思っている2022年。今年のGetNavi webも、フードジャンルにご期待ください!
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