1994年に登場したチョコバー「ブラックサンダー」は、いまや全国のコンビニ、スーパーなどで広く売られている、国民的なお菓子です。その9割以上を製造しているのが、愛知県豊橋市に位置する有楽製菓・豊橋夢工場。
フル稼働すれば1日に70万本ものブラックサンダーを製造できるこの工場には、限定品を多く扱う直営店が併設されているなど、まさに「聖地」と呼ぶにふさわしい存在です。見学するだけで食欲がそそられてしまう、その工場内部の様子をレポートします。
【 ブラックサンダーの工場見学の様子を写真で解説(画像をタップすると拡大表示されます)】
↑外観にこそ、工場らしい無機質さがありますが、周囲には、それと矛盾するかのような甘い香りが漂っています ↑ロビーには、各種のブラックサンダーのほか、著名人のサインなどが展示されています ↑入り口のマットは、黒地に黄色の稲妻のデザイン。まるで、“あの”パッケージです ↑マット手前の看板は、パッケージそのものでした ↑工場に入る前に、潜ることになるエアシャワー ↑原料のビスケットを機械に投入するところ。写真は白のビスケットですが、ブラックサンダーには黒のビスケットも併せて配合されています ↑こちらは黒いビスケット ↑配管を通り、ビスケットとチョコが混ぜ合わされていきます ↑タンクに入ったチョコ。これが、配管を通ってビスケットと混ざり合います ↑巨大な液チョコタンク。その容量はなんと15トン! なかでチョコが固まることがないよう、常に保温されています ↑チョコとビスケットが混ざった状態 ↑棒状に成形された直後のブラックサンダー。コーティングのチョコをかける前なので、白ビスケットの色が目立っています ↑成形後、1個目の冷却トンネルを抜けると、カットの工程が待っています ↑カット後の検品作業。欠けていたり、とがりがあるものを間引いていきます ↑検品が済むと、次はコーティングです ↑コーティング機を横から撮影 ↑コーティング後のブラックサンダー ↑コーティング後、2回目の冷却トンネルを通る様子 ↑包装機から超高速で出てくるブラックサンダー。カメラのシャッタースピードを速めても、ぶれてしまうほどの速度でベルト状を流れていきます ↑包装に問題がないか、スタッフによる検品が行われます ↑出荷を待つブラックサンダー。ここに積まれているのは、コストコに向けて出荷される製品です ↑ファミリーパックのパッケージフィルム ↑包装に問題がないかチェックをされつつ、出荷用の箱に収められていきます ↑直営店の前には、写真撮影用の顔出しボードが置かれています ↑お店入り口通路の壁には、有楽製菓の社長・河合辰信さんのトリックアートが。遊び心満載です ↑店内にあった製品で、筆者が個人的に好きだったのがこのビーチサンダル。これを履いて砂浜を歩くと、稲妻型の足跡が残ります ↑直営店の目玉、ブラックサンダーの詰め放題。1回1000円でチャレンジできます ↑筆者がチャレンジした結果、43個でした。ちなみに、50個以上詰めた猛者もいるとか……どうすればそこまで入れられるのか、コツが気になるところ ↑限定品のカップアイス 実は難しい「ザクザク食感」のチョコバー作り
有楽製菓・豊橋夢工場は、渥美半島の付け根・豊橋市の東端に位置しています。その外観を見たところ「有楽製菓」の文字こそあれど、ブラックサンダーを思わせるものはありません。しかし工場の周囲には、常時チョコの香りが漂っています。
↑外観は工場らしい無機質なものですが、周囲には甘い香りが漂っています
いざ入り口をくぐりロビーへ足を踏み入れると、そこにはブラックサンダーだらけの世界観がありました。入口のマットは黒い稲妻を背景にしたデザインですし、壁面に設けられた展示スペースには、この工場で作られている製品、つまりブラックサンダーが並んでいます。
↑入り口にある看板はパッケージそのものでした。「ブラックサンダー号」が走る、豊橋の市電についての掲示もあります
↑入り口のマットは、黒地に黄色の稲妻のデザイン。パッケージと同じ色使いです
↑ロビーの展示スペース。各種のブラックサンダーのほか、多様な品々が並びます
食品の工場ですから衛生管理には非常に留意されており、見学前には衛生的な服に着替えたうえで、エアシャワーを1回通過。その後、コロコロで全身の細かなホコリを吸着しなければなりません。もちろん、入念な手洗いも必須です。衛生面の工夫は、工場内にあるトイレからも感じることができました。というのも、出る時にアルコール消毒をしないと扉が開かない仕組みになっているのです。
↑工場に入る前に、潜ることになるエアシャワー。ただエアシャワーを通るだけではNGで、体を叩いてほこりを払う、両手を上げて2回転するなど、手順が決まっています
今回見学したのは、家族向けに売られているファミリーパックの「ブラックサンダー ミニバー」を製造しているライン。ミニバーは、コンビニなどで1個30円で売られている通常のブラックサンダーより小さなサイズのものが、大袋に入った製品です。
↑ブラックサンダーミニバーの大袋。コロナ禍で自宅で過ごす人が増えたことから、このタイプの商品の売れ行きが好調。2021年度には、このファミリーパックが前年比で1.1倍の売上を記録
ブラックサンダーの最大の特徴は、ほかのチョコバーにはない「ザクザク感」です。同社では、ブラックサンダーの材料となるチョコとビスケットのうちビスケットの比率を高めることで、このザクザク感を実現しています。
↑見るからにザクザク
しかし、チョコバーに多くのビスケットを含ませることは簡単ではありません。なぜなら、ビスケットの比率が高いチョコバーは成形の難易度が高く、冷却させた後にカットする工程でボロっと崩れやすくなってしまうからです。
詳しくは企業秘密とのことですが、ブラックサンダー専用のビスケットの開発、独自のチョコの配合、長年の研究によって生まれた配合比率、さらには機械の微調整があってこそ、あの食感は生まれています。
工場ならではのスケールは圧倒的! ブラックサンダーができるまで
有楽製菓のスタッフによれば、チョコバーの製造過程は混ぜる、冷やす、固めるという「単純」なもの。しかし上で述べたように、ただこの3工程を経るだけではブラックサンダーを作ることはできません。多くの人に支持されるあの甘さを安定して作り出すため、様々な工夫が凝らされているのです。
その製造工程は、ビスケットとチョコを混ぜるところから始まります。使用されているビスケットは、工場内の別ラインで製造されたものです。
↑原料のビスケットを機械に投入するところ。写っているのは白のビスケットですが、ブラックサンダーには黒のビスケットも併せて配合されています
一方、チョコは特注の液体チョコと、固形のチョコを工場内で混ぜ合わせています。工場をフル稼働させた場合、1日に30トンのチョコを消費するそうで、構内にはその需要に堪えうるだけの、大型のタンクがいくつも並んでいました。ちなみに、フル稼働時の生産量は、通常のブラックサンダーなら70万本/日、ミニバーなら200万本/日だそう。なんとも、想像を絶する数字です。
↑巨大な液チョコタンクの容量は、なんと15トン! この写真以外にも、複数の大型タンクが備え付けられています。また、これらのタンクでは、内部でチョコが固まることがないよう、常に保温されています
↑液体チョコと、液化させた固形チョコを混ぜた状態。これが配管を通り、ビスケットと混ぜられます。このタンクには1トンのチョコが入っており、ノーマルタイプのブラックサンダー8万本ぶんに相当するそうです
↑チョコとビスケットを混ぜる工程で使われる配管
↑混ぜられたチョコとビスケットは、ベルトコンベアで成形機へ送られていきます
材料を混ぜたあとは、棒状に成形してから冷ます工程です。冷却は2回。内部のビスケットを固める工程と、表面にコーティングしたチョコレートを固める工程の2回に分かれています。実に細かい工程です。
また、2回の冷却の間には、カット・検品・コーティングの工程があります。冷却と冷却の間にカットをする理由は、チョコをキンキンに冷やしてからカットしてしまうと、ボロッと崩れることがあるからだそう。なるほど、自宅でチョコ作りをする方にとっても、参考になるかもしれません。
なお、チョコバーの製造は気温や湿度などの影響を受けます。そのため、日ごとのコンディションにあわせた機械の微調整が欠かせません。特に成形機では、100分の1ミリ単位での調整が行われているそうです。
↑棒状に成形された直後のブラックサンダー。コーティング用のチョコをかける前なので、白ビスケットの色が目立っています
↑成形後、1個目の冷却トンネルを抜けた先にあるカッター。写真左側を見ると、バーに切れ目が入っているのがわかります
↑カット後の検品作業。欠けていたり、とがりがあるものを人の目でチェックし、間引いていきます
↑検品が済むと、次はコーティングです。成形時に使用したチョコとは異なる、コーティング専用に配合されたチョコレートがかけられていきます
↑コーティング後のブラックサンダー。このあと2回目の冷却に入ります
↑コーティング後、2つめの冷却トンネルを通る様子
長い冷却トンネルを抜けると、金属探知機による異物混入チェックや工場スタッフによる最終的な検品が行われ、向かう先は包装機。包装の速度は凄まじいものがあり、まさに“カメラのシャッターにも止まらぬ速さ”で、機械から製品が出てきます。
↑包装機から超高速で出てくるブラックサンダー ミニバー。カメラのシャッタースピードを速めても、ぶれてしまうほどの速度でベルト上を流れていきます
↑包装に問題がないか、検品を行う様子。これが済むと、ファミリーパックの大袋のなかに再度包装されます
↑機械に備え付けられたファミリーパックのパッケージフィルム。超高速で消費されていきます
↑大袋の包装に問題がないかチェックをしながら、出荷用の箱に収めていく様子
↑出荷を待つブラックサンダー。ここに積まれているのは、コストコに向けて出荷される製品です。なおこの倉庫には、万が一の停電対策として、蓄電池や太陽光発電による予備電源が用意されています。電源がなくなってしまうと新しい製品を製造できないだけでなく、倉庫内の温度が上がってチョコが溶け、製造後の製品まで駄目になってしまうので、対策は厳重です
なお今回取材したのは、工場内に6つある製造ラインのうちのひとつ。ほかのラインでは、ブラックサンダー以外の製品も作られています。
ファンの夢が詰まった工場直営店が併設
豊橋夢工場の敷地内には、直営店が併設されています。各種のブラックサンダーが売られているほか、国内数カ所でしか購入できないレアな品が並ぶファン垂涎のお店です。
↑直営店の前には、写真撮影用の顔出しボードが置かれています
↑お店入り口通路の壁には、有楽製菓の社長・河合辰信さんのトリックアートが。「しゃちょう」のタスキがいい味を出しています
↑店内にあった製品で、筆者が個人的に好きだったのがこのビーチサンダル。これを履いて砂浜を歩くと、稲妻型の足跡が残ります
この直営店の目玉は、ブラックサンダーの詰め放題。1日80セット限定、1000円でチャレンジできます。1個30円で売られているブラックサンダーですが、この詰め放題では平均40個以上は詰められるので、普通に買うよりお得に大量ゲットできます。
↑直営店の目玉、ブラックサンダーの詰め放題。1回1000円でチャレンジできます
↑筆者がチャレンジした結果は43個でした。ちなみに、50個以上詰めた猛者もいるとか……どうすればそこまで入れられるのか、コツが気になるところです
↑ここを含む、国内3か所でしか販売されていないカップアイス(250円)。ブラックサンダーのビスケットを使用していることが特徴ですが、チョコの味わいが深く、高級アイスを思わせる上品な甘さが印象的でした
現在、豊橋駅直結のホテル・ホテルアソシア豊橋とのコラボキャンペーンも行われており、ホテルの部屋が丸ごとブラックサンダーに染まったコラボルームも登場中。コラボルーム宿泊者には、工場直営店での詰め放題が無料になる特典もあり、いまブラックサンダーのファンが豊橋を訪れる価値は上がっています。
豊橋夢工場までは、JR豊橋駅から車で30分ほど。やや距離はありますが、ファンの方ならぜひ一度訪れてみたい“聖地”です。
【アクセス】
有楽製菓 豊橋夢工場
愛知県豊橋市原町字蔵社88番地
JR豊橋駅より、車で30分程度