グルメ
2022/11/9 21:10

糠の準備から発酵・本漬けまで。家庭の冷蔵庫で「ぬか床」作りに成功する方法

ぬか床(ぬかどこ・糠床)を仕込むのに適した時期は、一般的に気温が20度~25度くらいの春や夏前などと言われています。ところが、昨今は気温が上がりすぎたり、夏前に仕込むと気温が高くなる夏の間に発酵が進みすぎてしまったりして、管理がうまくできなかったりすることも。となると、気温が落ち着いてきてじっくりと発酵を待てる秋こそ、ぬか床を仕込む好機かもしれません。料理家で菌カウンセラーの清水みのりさんに、家庭におけるぬか床の仕込み方を教えていただきました。

 

ぬか床作りの準備

ぬか床作りに必要な材料は、ぬか、水、塩、そして捨て漬け野菜の4つ。好みで昆布や唐辛子を入れたり、山椒の実や柑橘の皮で味つけを変えたりすることができますが、基本はぬかと水と塩があれば、ぬか床を作ることができます

 

「ぬかは、できるだけ無農薬のものがおすすめです。“炒り糠(煎り糠・いりぬか)”ではなく“生糠(なまぬか)”を使うといいでしょう。はじめの2週間ほどは、野菜の不要な部分を使って“捨て漬け”を繰り返しますが、これはぬかの発酵を促すためにする工程です。ここで漬けたものは食べずに捨ててしまうので、野菜の皮やヘタなどを取っておいて使うと無駄が少なくてすみますよ。捨て漬けに使う野菜は、大根やにんじんなどアクの少ない種類を選びましょう」(料理家・清水みのりさん、以下同)

 

ぬか床作りの容器は深めのものがおすすめ

ぬか床には、水分や塩分がたっぷり含まれています。そのため、使う容器はそれらによるサビに強いものを選ぶ必要があります。一般的には、ホーローやプラスチックが適していると言われていて、清水さんも野田琺瑯の「糠漬け美人」というホーロー容器を使っていました。

「ぬか床を定期的にかき混ぜるので、深めの容器だとぬかがまわりにこぼれず使いやすいんです。プラスチックでも構いませんが、においがうつってしまうのこともあるので気をつけましょう」

 

Step1.ぬか床を整える

【材料(糠1 kg分)】

・ぬか:1kg
・水:900ml〜1L
・塩:110g
・赤唐辛子:1本
・昆布:20cm1枚
・捨て漬け用の野菜:100g

 

【作り方】

1. ぬかに塩をよく混ぜる

「ぬか床を作るのとは別の容器にぬかと塩を入れ、手でよく混ぜ合わせます」

 

2. 混ざり具合を見ながら水を少しずつ加え、さらに混ぜていく

「ぬかにしっかり水分が行き渡るよう、しっかりと混ぜていきます」

 

「手でぎゅっと握ったとき、むにゅっと手の間から出てくるくらいの柔らかさにします」

 

3. 容器にできあがったぬか床を入れる

「容器にぬか床を入れて平らにならしていきます」

 

4. 昆布と赤唐辛子、捨て漬けする野菜を入れる

「ぬか床の上に捨て漬け野菜を入れたら、さらにぬか床でフタをしていきます。さらにその上に捨て漬け野菜を乗せて、いわゆるミルフィーユ状に重ねていきます。こうすることで、まとめて埋めるよりも発酵をしっかり促すことができます」

 

5. 表面を平らにならす

「ぬか床が全部入れ終わったら、平らになるように表面をきれいに手のひらで押さえて整えましょう」

 

6. 容器の側面をきれいに拭き取る

「ぬか床がまだできあがっていないときは、カビが繁殖しやすくなっていますので、容器の側面についたぬかをキッチンペーパーやティッシュできれいに拭き取るようにしましょう。ぬか床が発酵した後には、必要ありません」

 

「とはいっても、普段のお手入れのときにも、側面を指でなぞりながらぬかを落として、容器を清潔に保つようにしてください」

 

Step2.ぬか床を発酵させる

1. ぬか床を涼しい場所に保管する

作ったぬか床は、まだ発酵していないため野菜を漬けることができません。ここから2週間ほど発酵させることで、おいしいぬか床に育っていくのです。

 

「夏場は発酵の進みがとても早いので、涼しくなって来た秋の方が安心して漬けられると思います。発泡スチロールや保冷バッグなどにぬか床を入れ、温度が均一に保たれるようにしてから、玄関や食料庫などの涼しい場所で保存していきます」

 

2. 2〜3日経ったら捨て漬けの野菜を交換し、天地返しする

ぬか床の中に入っていた捨て漬け用の野菜を取り出したら、奥側のぬか床を一気に持ち上げ、手前へとひっくり返します。その後、容器を180度回転させてから同様に繰り返しましょう。これを「天地返し」と言います。

 

「天地返しの際には、かき混ぜるのではなく、裏表を入れ替えるように混ぜるだけで大丈夫です。この後は、新しい捨て漬け用の野菜を埋めて周囲を掃除し、保冷バッグなどに入れて引き続き発酵させていきます。この作業は、シンクで行うとぬかが落ちても後から掃除しやすいですよ」

 

3. ぬかの味見をしておいしくなっていたらできあがり

「2週間ほど経つと、少しずつ酸味も出て来てぬかの味が変わってきます。発酵させる前にも味見をしておいて、味の変化を見るようにするとわかりやすいですよ。冬場は3週間ほどかかるかもしれませんが、いい香りになってきたら、本漬けにうつりましょう」

発酵したらいよいよ本漬け。次のページで、その方法と、ぬか漬けにしたいおすすめの食材を解説していただきます。

Step3.本漬けを行う

おいしいぬか床ができたら、いよいよ本漬けです。漬けるものはどんなものでもお好みで構いませんが、種類によって漬け上がりまでの時間が変わるので、事前に調べるなどして、食べるタイミングに気をつけるようにしましょう。

 

「きゅうりや大根など、水分の多いものは比較的早く漬かり、1〜2日ほどで食べられるようになります。にんじんは5日くらい見てください。私は毎日食べたいので、いろいろな野菜を漬けておいて、できあがった順番に取り出して、また新しいものに入れて……というふうに循環させています。こうすると毎日食べられるだけでなく、必然的に毎日ぬか床に触るようになりますから、わざわざお手入れをするという感覚ではなく毎日の習慣になっていって、とても楽にぬか床とおつきあいができるな、と思っています」

 

1. 野菜に塩をふって下準備をする

「味が均等になるので、野菜には塩を振ってから漬けるのがおすすめ。きゅうりはアクがあるので、ヘタを取って漬けましょう。にんじんは浸かりづらいので、丸ごとではなく、切ってから漬けると早く仕上がりますよ」

 

2. ぬか床に漬けたいものを埋める

「ぬか床のちょうど真ん中くらいまで掘り、お好みの野菜を入れてぬか床で閉じます」

 

3. 冷蔵庫で保存する

「発酵したあとのぬか床は、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。温度が一定に保たれているので、常温での保存に比べて格段に管理しやすくなります」

「作りはじめは、どのくらい漬かっているか感覚でわからないかもしれませんが、味見をして浅ければ戻し、漬けすぎてしまったときは細かく刻んでお茶漬けや別の材料と和えて使うなど、いろいろな食べ方をぜひ楽しんでみてください。というのも、漬かり過ぎてしまったからといって塩抜きをしてしまうと、せっかく含まれている栄養素も流れてしまうのでもったいないのです」

 

清水さん流・ぬか漬けのおすすめ食材

毎日ぬか漬けを食べているという清水さんに、おすすめの食材を教えていただきました。実際に漬けてもらったのは、きゅうりやにんじん、大根といった基本的な食材のほかに、アボカド、ビーツ、とうもろこし、エリンギ、高野豆腐、こんにゃく、パプリカ、みょうがといった、実に多彩な食材。

 

また、変わり種の食材の漬け方についても、清水さんにコツを教えていただきました。

「高野豆腐は水で戻したものを1分ほど茹でてから入れています。エリンギやアボカドなど、ひだが細かくてぬかが入り込んでしまうものや、色をきれいに仕上げたいものは、ガーゼに包んでからぬか床に入れるといいですよ。魚やお肉をぬか漬けにしたいときは、ぬか床を魚やお肉の表面に塗って漬けます」

 

ぬか床は、漬けないときでも2〜3日に一度天地返しをして管理する必要があります。天地返しができない場合でも1週間程度であれば大丈夫ですが、長期の旅行をするときなどはぬか床を保存バッグに入れて空気をしっかり抜き、冷凍しておきましょう。帰宅後にはそのまま容器に戻して、これまでと同じように使うことができます。

ぬか床といえば毎日のお手入れが必須、というイメージがあった人も多いのではないでしょうか。それが旅行や忙しいときには冷凍しておけるのなら、気楽に仕込めそうですね。涼しくなってきて過発酵しにくいこの時季に、ぜひぬか床作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

料理家・菌カウンセラー / 清水みのり

祖父母の自然派ライフスタイルに影響されて育つ。一般企業に就職したのち、菌の魅力に気づき、製パンの専門学校へ入学。パン職人として働き、その後2004年よりパンや発酵食の料理教室をはじめる。著書に『身体が喜ぶ発酵調味料メソッド』(方丈社)がある。