昨今のジャパニーズウイスキーを語るうえで欠かせない話題が、新設蒸溜所の台頭だ。シーンをけん引する銘柄を中心に、期待が高まるこのムーブメントを紹介しよう。
※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。
【私がオススメします!】
フードライター・中山秀明さん
酒好きのフードアナリスト。クラフトウイスキーの聖地・秩父で育ち、全国の蒸溜所やブレンダ—への取材経験も多い。
世界唯一の鋳物型蒸溜器が生み出すまろやかで洗練された味わい
1952年製造開始(※)
若鶴酒造/三郎丸蒸留所
シングルモルト
「三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTESS」
実売価格1万3750円
北陸唯一の蒸留所が、富山の伝統工芸品・高岡銅器の技術を用いて作られた世界初の鋳物製銅錫合金ポットスチル「ZEMON」で蒸溜した原酒を、初めて商品化。銅と錫の2つの効果により、まろやかで洗練された酒質を実現している。
※:2017年に大改修をし、三郎丸蒸留所としてリニューアル。2019年に、「ZEMON」を導入
【Nakayama’s Review】伝統のスモーキー香や果敢な冒険心にも注目
同蒸溜所のテーマ「ピートを極める」を実感できる、力強いスモーキー香も魅力。同社は他社との原酒交換にも積極的で、日本のクラフト蒸溜所同士で初のコラボ商品を発売するなど、冒険心も魅力です!
3基のポットステルを駆使した待望の定番シングルモルト
2017年製造開始
小正嘉之助蒸溜所
シングルモルト 嘉之助
9900円
日本三大砂丘のひとつ、鹿児島県・吹上浜沿いに設立。最大の特徴は、大中小とサイズの異なる3基のポットスチルを備えていることで、本品は同蒸溜所初の定番商品。ウイスキー本来の風味が楽しめるよう、冷却濾過は行っていない。
【Nakayama’s Review】名焼酎のDNAを継ぐ上品で甘くメローな味
日本初の長期樽熟成焼酎として小正醸造が生み出した「メローコヅル」のDNAは、蒸溜所のコンセプト「MELLOW LAND, MELLOW WHISKY」へ。上品で甘くまろやかな味はまさにメロー。多幸感にあふれる一本です。
希少な国産ピートが香るスモーキーな味わい
2016年製造開始
厚岸蒸溜所
厚岸ブレンデッドウイスキー 小満
1万3200円
ピーティーなアイラモルトへの憧れと敬意から、潮気を含む霧やピートが取れる地の利を求めて北海道・厚岸の地に誕生。本作は「二十四節気シリーズ」の第11弾となるブレンデッドウイスキーだ。
【Nakayama’s Review】厚岸の恵みに育まれた燻香と爽やかな甘味
季節ごとに原酒を作り分けたり、地元産の大麦やピート、ミズナラ樽を使ったり、厚岸のテロワールを生かす姿勢がユニーク。本品は、燻香に柑橘のような爽やかさに甘味が重なる奥行きのある味わいです。
寒暖差のある気候が生み出す力強く厚みのある味わい
2016年製造開始
本坊酒造/マルス津貫蒸留所
シングルモルト津貫 2023エディション
8800円
1985年、長野県にマルス信州蒸溜所を設立した同社が、より多彩な原酒を作るべく創業地の鹿児島県津貫に設立。一年の中で寒暖差が激しい盆地という環境が、力強い酒質を生み出す。本品では、国内の品評会で金賞を受賞。
【Nakayama’s Review】バーボンの樽香が導くリッチな風味がナイス
本作は、バーボンバレルを主体に様々な樽で熟成した原酒をヴァッティング。モルティな甘味と、温かくフレッシュな果実味が印象的です。樽のウッディな香りは味わいに厚みをプラスし、全体的にリッチ。
【これもCheck!】老舗の焼酎蔵がウイスキー製造を開始
本坊酒造のグループには熟成麦焼酎の銘酒「神の河」で有名な薩摩酒造があるが、同社は今年、枕崎に「火の神蒸溜所」を竣工。2026年内のファーストリリースを目指している。麦の名手の新酒に注目だ。