老若男女から支持を得ているそば屋の人気メニューといえば「カレー南蛮」。複数のカレースパイスとそばの出汁を組み合わせた濃厚なつゆが味わえる一品で、いまでは多くの店でメニューに取り入れられています。ということで、立ち食いそばの名店を振り返る「2016年そばベスト」の第3回目は、カレー南蛮に定評のある店をピックアップ。厳しい寒さが続くこの季節こそ、絶品のカレー南蛮で身もココロも温めてみてはいかがでしょうか?
【その1】
白河そば/牛込柳町
同店では、都内では珍しい塩味ベースのつゆを使用。つゆはかつお節を基本に昆布、しいたけ、いりこでだしを取り、そこに塩と砂糖を加えたもの。シンプルながらだしの深いうまみがあり、そばにもうどんにも合う味わいになっています。
人気メニューのひとつ「カレーそば(うどん)」は、牛すじのスープを使ったカレールーと塩だしつゆが見事にマッチ。また、刻んだ油揚げにおかか、玉ねぎの薄切りなどを混ぜて塩で味付けし、ごはんにのせた「きざみごはん」にも注目です。油揚げは近所の豆腐店の上質なものを使っており、味付けせずともつゆを吸わせただけで絶品に。訪れた際には、ぜひ試しておきたいところです。
【その2】
立食いそば 山吹 鶴巻町店/早稲田
同店の「カレー南蛮そば」は作り置きのカレールーを使わず、カレー南蛮粉をつゆと一緒に小鍋で煮立てて作っています。立ち食い店としてはとても手間のかかるやり方ですが、そのぶんスパイスの香りが鮮烈。これをそばに絡めながら“ヒーヒーハーハー”と食べるのが醍醐味でもあります。
そばは生そば、ゆでたての極細麺はもりでも温そばでも絶品。もりではシャッキリした強いコシを味わえ、温そばならつるつるののどごしが楽しめます。また、つゆは昆布、しいたけ、本かつお節とさば節から取っただしに、ほどよい濃さのかえしを合わせたもの。甘みがやさしく深いコクが味わえるのが特徴で、好みで「関西風」のつゆが選べるのもポイントです。
【その3】
満留賀/浜松町
浮世絵の看板が目印の同店は、もともと本格そば店の組織“のれん会”のひとつに属していましたが、平成5年に立ち食い店に移行。元のれん会系だけあって、そばのレベルは高いと評判です。
そば粉と小麦粉の割合が5対5の同割そばを自家製麺にしており、ゆでたてを提供。色白の麺はコシ、浜のどごしは抜群です。だしもかえしも独自の配合で丁寧に作っていて、豊かなコクの滋味あふれるつゆに仕上げています。なお、同店は完全立ち食い形式の店で、昼は大勢のそば好きビジネスマンで賑わっています。
【その4】
こばやし/高田馬場
高田馬場駅から神田川を渡り、新目白通りに差しかかる場所にある同店は、つゆの仕込みから揚げまで丁寧な仕事が評判。そばは同割のものを仕入れ、注文後にゆで始めています。冷水でしっかり締めた細身のそばは、もりそばで注文すると角がしっかり立ち、つやつやとした輝き。鼻から抜ける爽やかなそばの香りが楽しめ、コシも申し分ありません。
つゆは利尻昆布と宗田節、本かつお節、さば節で取っただしに自家製のかえしを合わせ、キリッとした味わいが特徴。若き主人はもともと大のそば好きで、一流そば店から立ち食いまで複数の店で働き、そば作りや経営ノウハウを独学で学んだそうです。同店では、そんな主人の熱意が生んだ珠玉のそばが味わえます。
【その5】
そば新 蒲田西口店/蒲田
24時間営業の立ち食いそば店のなかで味がトップクラスと評判の同店。そばは生麺ゆでたてのコシのある細麺で、60円増しで香り豊かな石臼挽きそばに変更できます。だしはかつお本枯節、宗田節、さば節、北海道南かやべ産の根昆布、しいたけを使い、奥行きのある香りとコクが特徴。かえしは関東の薄口しょうゆと関西しょうゆをブレンドしたこだわりの味です。
店頭の看板でも、石臼挽きとだしへのこだわりをアピール。客層は会社員や学生などが中心で、飲食店で仕事を終えた人が深夜に来店することも。同店が供する一杯のそばは、そんな彼らに安らぎを与える味なのです。
【その6】
麺房 八角 横浜駅東口地下街ポルタ店/横浜
「麺房 八角」は大正10年創業の老舗。戦後は製麺業に転じ、現在は製麺所直営店として横浜市に2店舗を構えています。横浜駅地下街の「ポルタ店」は全席椅子付きで、ちょっと高級な町場のそば店のような雰囲気です。
そばは更科系の細麺で香りがしっかりあり、コシものどごしも絶妙。もりそばは410円とやや高めですが、大盛り無料なので納得できます。聞けば、同店のつゆは大正の創業時のレシピを踏襲しているとか。つゆが誕生した遠い昔に想いを馳せつつ、そばを楽しむのもオツですね。
※価格やメニューは変更になっている場合があります。また、年末年始の営業日は店舗までご確認ください。