ワコムは、持ち運びもできるペンタブレット「Wacom MobileStudio Pro」シリーズを2016年11月から発売開始しました。そこで今回は、ペンタブレット使用歴20年超、現在はワコムの据え置き型ペンタブレット「Cintiq」シリーズを愛用しているユーザーの視点から、この最新機種をレビューしてみたいと思います。
これ1台でどこでもイラストが描けるモバイルペンタブレット
ワコムのペンタブレットは、筆者のようなイラストレーターやデザイナー、マンガ家などがPCなどで絵やイラストを描くときに使うデバイス。ペンやマーカーなどで紙に描く昔ながらのアナログ派もまだまだいますが、デジタル入稿が主流の現在では、こういったペンタブレットでイラストを描く人が増えています。
このWacom MobileStudio Proシリーズのラインナップは、大きくわけて2種類。13インチ画面タイプと16インチ画面タイプがあり、搭載するCPUやSSD容量によって、全部で6モデルから選べます。価格は13インチが 18万1440円~、16インチが30万240円~。今回は16インチのものを使用しました。
本製品は、モバイルと銘打っているだけあって、これひとつでイラスト制作が可能。PCに接続が必要な据え置き型と異なり、単体でも使用できます。
搭載OSはWindows 10。デザイナー・イラストレーターは圧倒的にMacユーザーが多いので、どちらかというとマンガ描き向けかな、というのが第一印象です。ただ、ディスプレイキーボードはMacのそれに近い、シンプルなキー配置なのでMacユーザーでもそれほど問題なく使えそう。とりあえず自前のCintiqと比較してみましたが、やはりWacom MobileStudio Proのほうが美しいような気がします。
使い方に困ったら、WacomのFAQサイトにつながる「ワコムタブレット>デスクトップセンター」をクリックすればOK。ここで初めて使う人にもわかりやすいチュートリアル動画も見られます。
ただ、グラフィックソフトはバンドルされていないので、それぞれAdobeやCLIP STUDIO PAINTなど、使い慣れたものを入れましょう。
従来よりも高性能になった新しいペン
インターネットにつなげ、セットアップが完了したらまずは試し書き。ということで基本の「ペイント」を立ち上げてみます。
描き心地はすごく自然で、紙に描いているのと変わらない感触です。視差がほぼないですし、発色が良いからでしょう。気のせいかCintiqのペンよりレスポンスが良いかも? と思っていたら、付属の「Wacom Pro Pen 2」は正確さがこれまでの4倍に向上しているそうで、なんだか納得。ちなみに筆圧感度も、従来の4倍の8192レベルまでアップしています。
洗練された操作性で使いやすい
実は、発色よりも気になっていたのが「使い勝手」。ペンを持っていないほうの手で操作するファンクションキー(エクスプレスキー)やタッチホイール(ラジアルメニュー)は、絵を描きながらよく使うので、ここがどれだけ使えるかがとても気になってました。実際に試してみると、6個あるファンクションキーを自由にカスタマイズできるので操作性しやすく、ワンタッチで「取り消し command+z」になるタッチホイールも便利。
なかでも気に入ったのは、ボタン操作で画像を回転させる機能。ソフトによってはマルチタッチ機能で画面を回転させることができないので、これまではタブレットごとぐるっと回さなくてはいけなかったんですが、これはホイールをカチカチさせるだけ! 地味だけどかなりポイント高いです(Adobe Photoshop ccで試してみたのですが、ちょっと反応が鈍かったような……でも慣れればガンガン使えるんでしょう)。
地味にうれしいのは、レイヤーをラジアルメニューで選べる機能。利き手はペンで描くことだけに集中できるし、なにより体感と画面がリンクしてくれるって、実際に描いてる人にはすごく助かるので、ここに気づいてくれてありがとうって感じです(笑)。
タッチ操作にも対応しているので、ささっと手でスワイプやピンチ(縮小拡大)もできるし、使いやすさでは紙を超えたかも!
さっそくイラストを描いてみる
というわけで、ペイントwebアプリ「PIXLR」を使って、イラストを描いてみました。このアプリは普段使っているものではないのですが、”モバイル”と銘打ってるならば、webアプリでしょ! と思って試してみることに。
使用するネット環境にもよると思いますが、サクサクとストレスフリーに描けました。エフェクトをかけても処理時間で待たされることもありません。下絵からおよそ1時間で完成です。描きあがったイラストがこちら!
据え置き型のCintiqとの最大の違いというか、 Wacom MobileStudio Pro最大の売りが、本体にカメラが内蔵されていることで、これで対象物をぐるりと撮影するだけで3Dデータを作れるそう。筆者は3Dモデリングをしないので今回はこの機能を利用しませんでしたが、このお手軽さはぜひトライしてみたいものです。
機能面での不満はほとんどなかったのですが、気になったのは本体の発熱。別売りのスタンドを使わない場合は膝に乗せて使ったりするのでしょうが、夏場などは放熱を考えつつ使ったほうがいいかもしれません。音はまったくないので、静かな環境でもガンガン使えそう。
使う前は少し高価に思えましたが、ハイスペックPCと高解像度モニタとペンタブレットを買うと思えば、それほど高くないのかもと思えるようになってきました。これからイラストやマンガ制作のデジタル環境を揃えよう、という方にもいいのではないでしょうか。なんといっても持ち運びできて、どこでも作業ができるという自由さはプライスレスですね!