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2017/5/15 16:00

【西田宗千佳連載】意外に多い「BD/UHD BDセット売り」、爆発的ヒットはなくてもじわり定着へ

「週刊GetNavi」Vol.54-4

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シン・ゴジラ Blu-ray特別版 4K Ultra HD Blu-ray 同梱4枚組(税抜8800円)
発売・販売元:東宝
©2016 TOHO CO.,LTD.

 

Ultra HD Blu-ray(UHD BD)は、ゆっくりあたりまえのものになるだろう、と筆者は予測している。

 

その根拠のひとつは「売り方」だ。

 

現在のUHD BDは、特にハリウッド系作品の場合、Blu-ray(BD)とセット販売されていることが少なくない。特に初期出荷のものはその傾向が強い。買いたいと思う映画でUHD BDとBDがセットになっているなら、UHD BDを再生できる環境を持っていなくても、「とりあえずはUHD BDとのセットを買っておけば、将来的にも安心」と思える。

 

実はこの施策、DVDとBDのセットや、3D版BDとBD、DVDのセットなどの形でも展開されている。映画ファンならそうしたディスクをけっこう買ったことがあるはずだ。こうしたセット売りは、BDが出てしばらくして始まった。セットにすると売り上げが下がってしまいそうに思えるが、そうでもない。セットが生まれたのは意外な理由である。実は、DVDとBDのパッケージを間違えて買うことがないように……という配慮だったのだ。ディスクの生産コストは、初期のソフト価格の中ではたいした比率ではない。ディスクを1枚つけてしまっても、それで売れる人が半分になることはあり得ない。むしろ「せっかくだからセットのうちに」と考え、単価の高い初期版を買ってくれる消費者が増える。しかも、クレームも減って現場も助かる……。こんな発想だったのである。UHD BDにおいても、同じ発想でセット販売が少なくない。

 

もちろん、すべての映画会社がこのやり方を採っているわけではない。アニメ系の会社がこのやり方を採用する例は極めて少ない。彼らは「数」よりも「付加価値」で勝負するからだ。アニメは製作過程の問題もあって、実写に比べ、BDとUHD BDの差が付きづらい。だから、UHD BDへの移行にはかなり時間がかかるだろう。

 

そもそも、UHD BDに前向きでないメジャーな映画会社もある。ディズニーはその代表で、UHD BDに慎重な姿勢を崩さない。

 

これらが示すように、ディスクのすべてがUHD BDになる日はそうそうやってこないだろう。だが、「ディスクの再生機」を持っているなら、BDでなくUHD BDをもっていた方が得である……という時期はそろそろやってくる。各社が一斉にハードウェアを発表したのは、「その時期が遠くない」と判断したためだ。

 

一方で、UHD BD世代では、過去に比べ、ディスクビジネスの比率が下がるのは間違いない。DVDが非常に長く売られているように、BDも非常に長い寿命のメディアになりそうだ。そして、その上のメディアとして、UHD BDもずっと使われ続けるのだろう。

 

そのうち、パッケージメディアは「こだわりのある人」しか買わなくなる可能性が高い。そうなると、画質が悪いディスクより画質が良いディスクの方がいいに決まっている。また、UHD BDは開発の過程で、4K配信とも歩調を合わせる形で規格が策定されている。もちろんUHD BDの方がずっと高画質なのだが、同じソースから配信用・ディスク用のデータを作るのはそう難しいことではない。ニーズが下がることを前提に、「より低コストにパッケージメディアを作れる」ように配慮されているからだ。

 

爆発的にヒットはしなくてもじわりと定着し、「AVファンはあたりまえに使っている」ものに落ち着くのでは……というのが筆者の見立てである。

 

●Vol.55-1は5月24日(水)発売の「ゲットナビ」7月号に掲載予定です。

 

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