「週刊GetNavi」Vol.55-2
日本でも教育市場に向け、コンピュータの導入は進んでいる。だが、日本と海外、特にアメリカでの状況は、大きく異なっている。
最も大きな違いは、日本ではキーボードのないタブレット端末を中心に導入が検討されている、という点だ。それに対してアメリカでは、特に12歳以上を中心に、キーボードのある機器が選ばれる率が増えている。
これは、日米での教育用コンピュータに求めるものの差が出た結果といえる。
日本は、コンピュータを「教材」と考えて導入する傾向が強い。いわゆる電子教科書がすぐに思いつくだろう。実際には、現状法的には電子書籍による教科書は本物の「教科書」扱いにすることはできず、いわゆる「副読本」扱いになる。そうした教材に加え、ネットの生きた素材の利用やドリル的な活用も、もちろん必要な要素に数えられる。プログラミング教育も、コンピュータを使うひとつの要素ではある。
一方アメリカでは、コンピュータをより「文具」と捉える。もちろん、調べ物の道具や資料などとしても使うし、教科書にもする。だが、板書をタイプしたりレポートを書いたり、プレゼンをしたりと、紙のノートで行っていたことの一部を代替することが求められる。タイプは生活に必須の能力として学校で教えられるため、キーボードが大きな問題になることはない。むしろ小さなうちからキーボードに慣れさせることを目的に、キーボードが付いたデバイスが選択されることが多い。タブレットであっても、キーボードとセットで使えることが必須だ。
双方の考え方は非常に大きな隔たりがある。筆者の目から見ると、日本はどうしても、「まず機材と教材を導入する」視点から導入計画が立てられているように思える。では、それを実際に授業の中でどう使うのか……ということになると、どうにもぼんやりしてくる。現場ではもちろん、かなりの工夫をして画期的な成果が得られつつあるのだが、そのことが導入の議論に反映されているか……というとそうでもない。アメリカはより実践的に、「コンピュータは道具に過ぎない」ことを理解したうえで導入しようとしているように見える。授業でどう使うのか、生徒がどう使うのかはかなり自由な裁量に任されており、だからこそ、管理が容易なChromebookが喜ばれ、それをマイクロソフトはWindows 10 S(写真)で追いかけることになる。
こう見ると、iPadを主軸に据え、「教育に強い」と言われてきたAppleが、日本市場には向いているものの、アメリカ市場の状況とはズレてきているようにも見受けられるのが、おわかりいただけるだろうか?
では、Appleはどうしようとしているのだろうか? そこは次回のVol.55-3にて。
●Vol.55-3は6月7日(水)公開予定です。
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