デジタル
2018/4/25 17:00

カメラ、電卓、プリンター。キヤノンの歴史を繋ぐ「電卓」という特殊なプロダクト

電卓は変化させてはいけない商品!?

――当時といまのモデルを見比べても、40年ほど経つというのにさほど変化がありませんね。

 

濱田 このプリンター電卓は現在までに8代のモデルチェンジをしているのですが、実はあまり大きな変化は加えていないんです。何故かと言うと、これは電卓という商品特有の理由があるからなんです。

 

――どういうことでしょうか?

 

濱田 それまでの操作性を変えてしまうと、毎日のように電卓を活用される職業の方にとってみれば、些細なキー配列や打感の違いも大きなストレスやパフォーマンスの低下につながりかねません。そういった意味では「変えない」こともお客様の満足度を高めるひとつの要素になる場合もあります。

 

↑キー配列はもちろん、キー個々のくぼみ一つとってみても、「こだわっています」と濱田さん

 

 

電卓開発が、キヤノンのその後の多くの商品に影響を与えた

――「変わらない」商品がある一方で、1980年代には電卓をベースにしたまったく新しいモデルも登場しますね。

 

濱田 電子英語辞典、電子漢字辞典、そしてワープロですね。デジタル技術を応用した新しい商品開発にも熱心に取り組んでいました。電子辞典にしてもワープロにしても、当時の最先端のデジタル技術を投入したものでした。いまの弊社には、カメラやプリンター、複写機というイメージがあると思いますが、電卓開発で培われた多くの技術や人材がその後のカメラの電子化やプリンター、複写機などの開発に貢献したんです。

 

↑慣れた手つきで電卓を押す濱田さん。キヤノン製電卓には細やかな配慮がなされていると自負されていました

 

 

一見シンプルに見える電卓ですが、知れば知るほど奥が深い世界です。後編の次回は、電卓から派生したさらなるチャレンジ商品、そして現在のキヤノン製電卓の秘密についてお聞きします。お楽しみに!

 

 

撮影/我妻慶一

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