デジタル
Apple
2018/7/6 10:00

ビズリーチのエンジニアは「iMac Pro」を選んだ――会社に300台を一斉導入した理由

TVCMでもお馴染みのビズリーチは2009年4月の創立以来、多種多様な“転職サービス”を提供する伸び盛りの企業です。インターネットの力を活用して「即戦力」になる人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」が絶好調。そんなビズリーチでは今春、社内に在籍する優秀なエンジニアとデザイナーの開発環境に、アップルの最新デスクトップPC「iMac Pro」を一斉導入しました。

 

↑ビズリーチが展開している多彩なサービスはすべて社内のエンジニアとデザイナーが開発しています。開発チームにベストな仕事環境を整えるためiMac Proを300台揃えました

 

メインマシンをiMac Proにしたことによってビズリーチの仕事環境がどのように変わり、作業効率を高めることに結びついたのでしょうか。そして同社の改革には、ほかの多くの企業が学ぶべき「生産性向上」のためのヒントが隠されているのでしょうか?その真相を探るため、ビズリーチを訪ねてきました。

 

プロダクト開発のアイドルタイムが大きく改善できた

今回は株式会社ビズリーチ取締役の竹内真氏にインタビューしながら、iMac Proが一斉導入された背景をうかがいました。

 

↑ビズリーチがiMac Proを一斉導入する理由を取締役の竹内 真氏にインタビューしました

 

ビズリーチには現在エンジニアとデザイナーが約300名在籍しており、転職サイトのビズリーチ以外にも20代向けの転職サービス「キャリトレ」や、戦略人事クラウドサービス「ハーモス」、M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」など幅広いプロダクトを開発しています。

 

竹内氏によると、iMac Proの導入はスタッフの希望をヒアリングしながら先行136台から用意して、最終的には約300名のスタッフが全員、最新のマシンを標準機として使える環境を整えるのだといいます。

 

竹内氏はiMac Proを「自作PCを除けば、現在手に入るコンシューマー向けオールインワンPCの中では世界最高水準のマシン」と高く評価しています。確かにその通りですが、1台あたりの導入コストも高くつくはず。なぜ製品開発のチーム全員に支給する必要があったのでしょうか。竹内氏は「スタッフの作業効率を最大限まで高めるためには、仕事のメインツールになるPCに由来するアイドルタイムを減らすことが肝要だと考えたから」であると説明しています。

「ある時に、当社のエンジニアが自分の席でぼんやりとPCのモニターを眺めていたことがあって、声を掛けてみました。すると『いま“ビルド”の時間に時間を取られているのだ」という答えが返ってきました。ビルドとは、エンジニアがプロブラミングしたソースコードをコンパイルした後から、最終的に実行可能なファイル形式にまで落とし込む作業のことです。ハイスペックなマシンを導入することでビルドにかかる時間が短縮できて、エンジニアたちの作業効率も上がるのであれば、iMac Proの導入は十分に費用対効果があると判断しました」と竹内氏。

 

↑ビズリーチでは同社のプロダクト開発の現場に求められるスペックにふさわしかったことから、今回はiMac Proの8コア標準機をベースに多くのマシンを選んで導入しています

 

↑ビズリーチ本社、開発チームのフロアはオープンな雰囲気

 

ビルドが完了したソフトウェアをユーザーの実環境に近い“たたき台”にして、エンジニアやデザイナーはバグのチェックや改善点を見つけるための動作確認を行います。ところがここでも、例えばたった1文字を直すだけの小さなプログラム修正箇所が見つかると「ソースコードを直して>ビルドして>テストする」という作業の繰り返しが発生します。その1件ずつが数十秒~数分単位の作業だったとしても、毎日・1年間と積み重なってくればスタッフの作業を妨げる要因になることは明白です。

 

竹内氏は、思い切ってiMac Proを導入したところ、以前の作業環境と比べてビルドのための待機時間短縮に大幅な違いが現れたと強調しています。例えば同社プロダクトのひとつである「ビズリーチ・サクシード」のWebフロントのクリーンビルドでは、待機時間が100秒から15秒に、つまり約6.7倍も短くなったそうです。ほかにも「キャリトレ」のプラットフォームに公開するために、長さ約3分間の1080/60p画質の動画をレンダリング/エクスポートするために必要なアイドルタイムが、およそ3時間から10分へ劇的な“時短”を達成したというから驚きです。

 

↑iMac Proが東京・本社のビズリーチのオフィスに到着したときの様子。壮観な眺めです

 

「近頃はエンジニアやデザイナーなど技術職の優秀な人材を確保することが難しくなっています。ヒューマン・リソースが入れ替え可能であるという昔ながらの考え方が、今はもう通用する時代ではありません。自社に在籍する大事な人材を育てて、個人の能力を最大限に引き出せる環境を整えることが会社に求められています。これを実現することはまた企業経営の成功にもつながっていると考えます。当社は今回、iMac Proを一斉導入するために合計2億円前後になる投資を行いました。その負担は絶えず新たな人材を確保するための人的投資に比べれば軽微であると判断しました。」

 

↑まるで屋外のゴルフコースのようなビズリーチ本社のレセプションエリア。伸び伸びとしたスペースのそこかしこでミーティングが行われていました

現場のエンジニアもiMac Proの可能性を実感していた

では実際にビズリーチのプロダクト開発の最前線で働くエンジニアの方々は、自身の新しいメインマシンになったiMac Proをどのように使っているのでしょうか。「ビズリーチ」のプロダクト開発のチームで、Webフロントエンド デザイナーとして活躍している小枝氏に訊いてみました。

 

↑「ビズリーチ」のサービス開発に携わる小枝氏にiMac Proの手応えを訊ねました

 

「iMac Proで仕事をするようになってから、作業中に随所で発生していたアイドルタイムが解消されました。おかげで細かなストレスを感じることもありません。私は画像処理系にブラウザ、エディタなど複数のアプリケーションを立ち上げてマルチタスクを走らせることも多いのですが、それぞれのスピードと安定感がまるで違います」

 

マシンスペックの数値だけでは計れない“作業の健全性”が高まることが、エンジニアの満足感を引き出しているのかもしれません。小枝氏はまたiMac Proのディスプレイが大型、かつ高精細であるおかげで作業がはかどる手応えもあると語ってくれました。

 

ビズリーチの竹内氏は、現在はmacOSとLINUXサーバーの組み合わせによる開発環境が業界のグローバルスタンダードになっていることも、iMac Proを選んだ理由のひとつであると説いています。Windows PCによる開発環境の構築は難易度が高く、動作保証やウィルス対策の面でもリスクが高いといいます。社内には一部、営業・管理部門のスタッフが仕事にWindows PCを使っていますが、Macとそれぞれに互換性のあるディレクトリサービスによって一元管理しているので、スムーズに運用ができているそうです。このあたりの知見についてはこれからiMac Proの導入を検討している企業、あるいはクリエイターの方々にも参考になるのでは。

 

↑開発チームのフロアにはセミナーなどが開催されるイベントスペースも設けられています

 

iMac Proによる開発環境の大型強化を実現したビズリーチが、これからも一段と独創的なアイデアを形にしていくことを期待したいと思います。