ソニーモバイルから出揃った2018年の「Xperia」シリーズの主力モデル。今回は前機種とも比べながら「Xperia XZ2 Premium」「Xperia XZ2」、そして「Xperia XZ2 Compact」のカメラ機能の実力をチェックしたいと思います。
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まずは「レンズ」「センサー」など中身に注目
3機種のうち最もカメラ機能に注力しているのが、最上位のXperia XZ2 Premium。シリーズとして初めて、2つのレンズユニットを持つデュアルカメラシステムを採用した話題のモデルです。
シリーズ初の2眼カメラシステムは、静止画撮影時には最高ISO感度51200! 肉眼以上に暗所での被写体の形や色を鮮やかに記録できる、スマホの内蔵カメラとしては未体験のゾーンに到達しています。
ちなみにXZ2とXZ2 Compact、そして前機種のXZ Premiumは、静止画撮影時の最高ISO感度が12800までになります。これでも十分な性能に感じますが、実際にXZ2 Premiumと夜景を撮り比べてみると、静止画における情報の豊かさに大きな差があることがわかります。
↑同じ場所の夜景を撮り比べてみると、XZ2 Premium(写真左)がXZ Premium(写真右)に比べて、明るく豊かな色を再現できるようになったことは一目瞭然だ
↑XZ2(左)とXZ1(右)を比較してみても暗い風景からより多くの情報が引き出せていることがわかる
↑XZ2(左)とXZ2 Compact(右)の写真仕上がりはほぼ同じ印象
動画撮影のISO感度はXZ2 PremiumがISO12800、XZ2とXZ2 CompactはISO4000になります。
XZ2 Premiumに搭載されているデュアルカメラは、約1220万画素の1/2.3型“モノクロ”CMOSイメージセンサーと、約1920万画素の1/2.3型“カラー”CMOSイメージセンサーによる構成です。暗所を撮影する時には、カラーのイメージセンサーで色情報をキャプチャーして、新搭載のモノクロのイメージセンサーで輝度情報を記録します。
2つのセンサーが連携して捉えた情報をリアルタイムに処理することで、ノイズが少なく明るい静止画/動画撮影が可能になるという仕組みです。記録される写真だけでなく、液晶でのライブビュー表示も明るく高精細なので、暗がりに潜む被写体をフレーミングしながらシャッターが切れます。夜間のポートレート撮影などに効果がありそうです。
デュアルカメラ機能はカメラアプリの設定メニューからオート、またはオフが選択できるようになっています。オート設定の場合は周囲の明るさや、近接する被写体の有無によって自動で単眼撮影モードに切り替わります。明るさが十分に得られる環境ではデュアルカメラ撮影による視差移動などが発生して写真の出来栄えに影響を与えることがあるので、これを避けるためにオフ設定も選ぶことができるようになっています。
デュアルカメラシステムを搭載する他のスマホと同様に、被写体にピントを合わせながら背景をぼかしたり、モノクロのセンサーを活かしたシャープな印象のモノクロ写真撮影にもXZ2 Premiumは対応しています。ただ、それぞれの機能は発売後のソフトウェアアップデートによって提供される予定です。今回の取材ではまだ試すことができませんでした。
スマホ初の「4K/HDR」撮影に対応
続いてXZ2シリーズに共通する機能のハイライトを見ていきましょう。まずは「4K/HDR動画撮影」から。HDR(ハイ・ダイナミックレンジ)とは、映像の輝度を幅広く残しデジタル映像の再現性を高める技術です。撮影時の解像度は4K/2K(フルHD)が選択可能。HDR撮影時のフレームレートは毎秒24フレームに固定されます。
XZ2で撮影した4K/HDRと、従来の4K/SDRでの動画を見比べてみました。HDRモードで撮影した動画はSDRモードと比べて、格段にナチュラルな色合いと滑らかな階調表現を特徴としています。明部・暗部の飛んだりつぶれたりしがちな情報も、4K/HDR撮影ならディテールが明瞭に浮かび上がってきます。コントラスト感も目で見た風景の印象に近付く手応えが得られました。
XZ2 Premiumは、4K/HDR動画をそのまま4K/HDR画質で視聴できます。その他のモデルで4K/HDR動画を楽しむには、動画ファイルをUSBメモリを通じて4K対応テレビで再生する方法があります。筆者宅の「ブラビア KJ-43X8300D」ではこの方法で、4K/HDR動画が見られましたが、他のテレビについてはそれぞれの対応状況を確認してみてください。
4Kと2Kの動画ファイルは容量を比べるとそれなりに差があるので、ストレージ容量の節約を考えるなら2K/HDRモードでの撮影が実用的と言えるかもしれません。または4K/HDR撮影時に、カメラアプリから選べる2種類のコーデックのうち、「HEVC/H.265」を選択すると記録されるファイルのサイズが少し抑えられます。XZ2 PremiumはデュアルカメラによるISO12800の高感度動画撮影を優先する場合、画質がフルHD/60fpsまでの対応になることも覚えておくとよいでしょう。
スーパースローモーションや3Dスキャニングが進化
これまで、XZs/XZ Premiumから搭載が始まったハイフレームレート撮影&スーパースローモーション再生機能は、毎秒960フレーム/720pの画質で、約0.2秒録画した動画を約6秒間再生するまでが限界でした。しかしXZ2シリーズからは、毎秒960フレーム/1080p(フルHD)の画質で約0.1秒録画、約3秒間の再生ができる設定も選べる。
スローモーション映像を見比べてみると、フルHD画質の方が水しぶきの粒まで細かく再現できています。実際に使ってみるまで、再生時間が3秒間というのは短いだろうと思っていましたが、6秒間のスローモーション再生と見比べてみると十分な長さだと感じました。流しをたたきつける水しぶきをフルHDと720HD画質で撮って比べてみました。ご覧ください。
専用アプリによる立体的な被写体の3Dスキャニング機能「3Dクリエイター」は、これまでメインカメラ側でしか使えませんでした。XZ2シリーズではフロントカメラでも、撮影状況をディスプレイで確認しながら「セルフィースキャン」ができるように。
メインカメラ側だけだと、被写体の周囲を360度まわってスキャニングできるスペースを確保することが意外に大変でした。しかし、セルフィースキャンなら椅子に座ったまま自分で撮影できるのでかなり楽に扱えます。ただ筆者は不器用のためか、何度か試してみたところやはり上手に3Dスキャニングを撮りきることができませんでした。
カメラの画質にこだわる人にXZ2シリーズをおすすめしたい
最後に、XZ2シリーズのカメラ機能を試してみた手応えをまとめてみたいと思います。
高感度で静止画・動画が撮れるXZ2 Premiumのデュアルカメラは、たしかに魅力的です。画質もさすがXperiaシリーズと言える安定感を実現していました。真っ暗闇の中で風景や人物を撮ることはあまりないと思いますが、ある程度明るさのある夜景や室内でのポートレート撮影でも抜群の安定感を発揮してくれることでしょう。
XZ2はXZ1に比べるとカメラ機能に大きな差がないようにも感じられますが、まだ4K/HDR動画撮影ができるスマホがないことを考えると、その先進性をいち早く体験したい人におすすめできそうです。
そしてXZ2 Compactは、メインカメラで他の兄弟機とほぼ同じ高度な機能が使えるプレミアムコンパクト機。XZ1 Compactと細かく比較していくとスペックデータ的には変わっているところもありますが、画質など安定感は前進しているように感じました。女性でも片手で手軽に扱えるサイズ感を考えれば、“セルフィー最強”のスマホとして一番に名前が挙がるのではないでしょうか。
あとは3機種ともに前モデルからデザインや素材が変わっているので、見た目以上にホールド感が大きく変わっています。前モデルからの買い換えを考えている方は、店頭の実機をぜひ触ってみてから検討を進めてほしいと思います。
次回はXZ2シリーズのHDR対応ディスプレイの画質、そしてサウンドまわりの機能をチェックしてみましょう。