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2018/9/18 19:00

iPhone XS/XS Maxのカメラを一足早く検証! Xと比べてどれだけ綺麗に撮れるの?

ご存知の通り、「iPhone XS/XS Max」の予約販売が既にスタートしています。日本時間同月21日の発売を前に、実機を手にする機会を得ました。本記事では、iPhone Xを1年間使い続けた筆者が、静止画を中心に、カメラの実力を検証。速報では伝え切れなかった魅力について、お伝えできればと思います。

 

↑iPhone XS/XS Maxともに、背面カメラは1200万画素(広角、f/1.8)+1200万画素(望遠、f/2.4)のデュアル仕様

 

既報の通り、iPhone XS/XS Maxでは、A12 Bionicという7nmプロセスを採用したチップを採用しています。2つの性能コア、4つの効率コアに加え、4コアのGPU、8コアのNeural Engine、深度エンジンを搭載したISP(Image Signal Processor)で構成されます。そして、この強化されたNeural EngineやIPSの働きによって、カメラセンサーから取得した情報を、大量に処理できるようになりました。

 

具体的な機能として進化点を噛み砕いていくと、従来「自動HDR」と表記されていたカメラの設定項目が、「スマートHDR」へと変わりました。同機能はデフォルトでオンになっており、オフにしない限り、必要なタイミングで自動で適用されます。

 

まずはiPhone XS MaxとiPhone Xで、撮影した写真を比べてみましょう。

 

↑iPhone XS Maxで撮影(スマートHDR有効)

 

↑iPhone Xで撮影(自動HDR有効)

 

路面の明るさを比べるとiPhone XS Maxの方が、やや明るく感じますね。しかし、この写真だけではさほど大きな差は感じられません。まぁiPhone Xのカメラも十分綺麗なのですから当然です。

 

スマートHDRとは何か

さて、そもそもHDR撮影とは何かおさらいしておきましょう。例えば、HDRを使わずに、明るい部分と暗い部分が混在するシーンを撮影したときに、露出を明るい定めれば、暗い部分が黒く潰れます。また、露出を暗い部分に合わせれば、明るい部分が白く飛んでしまうのです。

 

一方、HDRが有効になっている写真というのは、明るく撮った写真と、暗く撮った写真を1枚に合成することで、双方の良いとこどりをするわけです。

 

↑明るい写真(左)と暗い写真(中)を合わせて、いいとこ取りの写真(右)にするのがHDRの基本的な原理。白くなった空や、黒く潰れた建物などが解消されているのがわかる。上記はiPhone Xで撮影したもの

 

しかし、複数の露出で写真を撮影するために、わずかながらタイミングがずれてしまうというのが従来のHDRの弱点でした。つまり動きのある被写体で活用するのが難しかったのです。

 

今回登場した「スマートHDR」では、センサーの処理スピードが向上し、ISPやアルゴリズムも強化されました。これによって、動きのある被写体でもHDRを有効にして、明るい部分と暗い部分が混在するシーンでも、美しく捉えることができるようになっています。

 

逆光でもシャッタータイミングにズレが生じなくなった

実際に検証しているうちに実感したのですが、iPhone Xで動きのある被写体を逆光で撮影しようとすると、シャッタータイミングにかなりのラグが生じました。例えば、布を投げて、その落下中を捉えてみようとしたところ、シャッターをタイミングよく押しても、写真が撮影されるのは、布がカメラの画角よりも下へ落ちた頃だったり。

 

↑iPhone XS Maxで撮影。逆光でHDRが有効になっているが、放り投げたカーテンの動きを捉えている

 

↑iPhone Xではそもそもカーテンを投げて浮いている間にHDRで撮影されないことが多々…。下部に見える白い布の一部が落ちていくカーテンだ

 

しかし、iPhone XS/XS Maxでは、シャッターを押してから撮影されるまでの感覚が短く、布を画角に収めやすかったのです。もちろん動きの早すぎる被写体はブレてしまいますが、この例では、揺らめくテクスチャーの質感を捉えつつ、HDRが有効になっているのが分かります。

 

TrueDepthカメラでも使える

さらに、スマートHDRはインカメラでも、ポートレートモードでも利用できます。例えば、インカメラで撮影したこちらの写真では、被写体の明るさを維持したまま、空の色をはっきりと表現できているのがわかります。

 

↑インカメラ(TrueDepthカメラ)のポートレート撮影で比較。iPhone XS Maxで撮影した左の写真では空の色が再現されている。一方、iPhone Xで撮影した右の写真では、HDRが反映されず、全体的に暗く、空も白とびしてしまった

ポートレートモードのボケを調整できるように

もう一つ、大きな進化点として、「ポートレート」撮影で、自由に背景のボケ具合を調整できるようになったことが挙げられます。「深度コントロール」と称されるこちらの機能は、撮影時ではなく、撮影後の編集画面で使用可能。従来も「Focos」のようなサードパーティ製アプリを活用すれば、ポートレートで撮影した写真のボケを編集することができましたが、やはり純正の写真アプリで手軽に調整できるようになったのは嬉しい限りです。

 

「写真」アプリでポートレートモードが有効になっている写真を表示し、右上の「編集」をタップ。すると下部にスライダが表示されるので、これを調整することでF1.4〜F16まで、細かくボケ具合を変更できます。

 

↑深度コントロール機能で、背景のボケ具合を調整した例。街灯や車のヘッドライトなどが、玉ボケになるのを楽しめる

 

暗所での撮影も低ノイズに

なお、iPhone XS/XS Maxでは、ピクセルサイズが1.2μmから1.4μmへとサイズアップしました。より多くの光をセンサーに取り込めるようになったことで、明るさの足りない暗所での撮影も、精彩な写真を記録できるようになっています。公式サイトの記述によれば、ノイズリダクションも進化しているようです。

 

↑iPhone XS Max(左)とiPhone X(右)で比較。前者の方が、クリアに撮影できているのがわかる

 

諸々カメラ機能が進化していますが、iPhoneユーザーが意識して使うのは、ポートレートモードの「深度コントロール」機能くらいなもの。そのほかの改良点は、どれも今まで通りに使うだけで、より鮮明で美しい写真が撮れるというのが良いですね。

 

特にiPhone XSについては、iPhone Xの価格を据え置きで、性能だけ向上しているというモデルなので、「値段は変わらず、カメラなどを中心に性能が色々アップしている」と覚えておくと良いかもしれません。

 

もちろん今回紹介した以外にもアップデートされたポイントは多いので、引き続き検証を続けたいと思います。