日本の携帯電話料金は、諸外国に比べ、特に「月20GB」などの大容量プランで高価である、という調査結果が出ている。これは事実。平均的な料金が7000円を超えており、ニューヨークに並び、世界でもっとも高い水準にある。
こうした料金の高止まりの背景には、携帯電話端末の料金を携帯電話会社が割り引く、というモデルの存在が指摘されている。携帯電話の端末料金を、通信料金の収入から補填して割り引くことで、我々は10万円を超えるような携帯電話を(結果的には、だが)安く手に入れることができている。
このことが批判を浴びている。
「携帯電話の端末代金と通信料金を一体化するようなやり方は、他国には少ない。携帯電話料金が結果的に高くなるから、端末料金と通信料金を分離せよ」
総務省はそう主張しており、携帯電話事業者もそれに倣う姿勢を示している。KDDIとソフトバンクは、すでに「分離プラン」を主軸に置いているし、NTTドコモも、低価格な機種に関しては端末料金を割り引かずに販売し、その一方で通信料金を毎月1500円割り引く「docomo with」という料金プランを提供している。
だが、このことは、本当に消費者のためになるのだろうか?
家計全体で考えてもらいたい。端末を購入する料金は結局必要だ。通信料金が安くなっても、端末をローンで買えば、結局のところ、出費は同じようにかかる。むしろ、見かけ上の端末価格が高くなるため、「高いスマートフォンは避けて、低価格なものしか買わない・買えない」という人々も増えるだろう。結果的に、業界全体で見ればブレーキを踏む結果になりかねない。
分離プランはあっていい。そのほうがわかりやすいし、それらが選べるべきであることに異論はない。一方で、「割引制度が悪である」というのもまた極端な話だ。
本当に世界で「割引プランがない」のかといえば、そんなことはない。筆者は9月中アメリカで取材をしていたが、大手は皆「古い機種を持ってきて、契約を継続してくれればiPhone XSを大幅値引き」といったプランを提示していた。割引プランがないわけでも、分離プランしかないわけでもない、というのが実際のところだ。
むしろアメリカでは、T-Mobileを中心に、NetflixやSpotifyなどのサービスをバンドルして割り引くプランも増えている。
携帯電話料金の複雑化は世界的な問題であり、日本だけが特別ではない。端末の割引だけが問題なわけでもない。
日本の携帯電話料金における問題は、「すぐに大手3社が横並びになってしまう」構造と、「12か月や24か月の長期契約の後も、無条件でさらに12か月以上の長期契約が続いてしまう」ということにある。すなわち、携帯電話会社を移るのが難しく、それぞれの差も小さくなりがちであることが問題なのだ。
そもそも論として、政府が私企業である携帯電話事業者の料金や利益率に口だしをすべきではない。それは政府の役割ではないからだ。政府の役割は、あくまで「競争を阻害する要因の排除」や「消費者に対する不公正の排除」であるべきだ。携帯電話の料金を下げる話よりも、「長期契約後は確実に、簡単にいつでも契約を切り替えられる」形が選べるように、契約のあり方や契約時の顧客との対話などを改善することではないのか。うがった見方をすれば、「政府が人気取りに走っている」ように思えてしまう。
またそもそも筆者は、「諸外国と料金を比べること」そのものにも疑問を持っている。
では、携帯電話料金はどうあるべきなのか? そこは次回のVol.71-4で解説する。
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