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2018/11/16 7:30

【西田宗千佳連載】シャープは今後どう携帯ビジネスを「拡大」するのか

「週刊GetNavi」Vol.72-4

シャープのスマートフォンビジネスは、いまのところうまくいっている。ただ懸念点があるとすれば、その成功が「日本国内」に限られている、ということだ。

 

スマートフォンは圧倒的に「数」のビジネスになっている。プロセッサーなどの主要パーツを他社からの供給に頼る以上、一定以上の数がないと、取引上優位な地位に立てない。日本という国は、国別でみればかなり恵まれた市場だ。人口が多く、所得水準も(まだいまのうちはそれなりに、という留保がつくものの)高い。なによりネットインフラが整備されている。だが、アメリカと中国という巨大市場には太刀打ちできないし、各エリアの国々を「合わせて」市場として見ると不利になる。数のビジネスで勝負するなら、他の国を含めたより広い市場を確保し、そこで競争できる状態を作る必要がある。

 

とはいえ、それは「日本国内向けスマホ」のビジネスと同じか、というとそうではない。

 

日本のシャープのスマホは、日本国内で企画され、パーツの多くも日本製だ。特にハイエンドの「AQUOS zero」のような製品は、一気に世界に売って出られるほど多数の生産を前提としていない。海外でのブランド構築も、販路構築もできているわけではない。日本で人気だからそのまま規模を拡大、というわけにはいかないのだ。

↑AQUOS Zero

 

シャープはヨーロッパやアジア地域にスマートフォンを出荷しているが、数はごく少数だ。ここを拡大するのは簡単ではない。事実、ソニーは市場拡大を試みて失敗し、スマートフォンビジネスそのものに痛手を負った。

 

ではどうするのか? おそらく答えは、「シャープの後ろ盾はどこか」ということに関わってくる。

 

ご存じのように、現在のシャープの親会社は台湾の鴻海精密工業。iPhoneの製造も手がけるスマートフォン製造の大手であり、部材の調達力も非常に高い。シャープが海外展開を目指す場合、当然、彼らと連携し、彼らの製造・調達能力を活かした製品で戦うことになるだろう。

 

現状、日本以外でシャープのブランド力が強いのはASEAN諸国。そこに向け、新たに商品企画を行ったスマホを、鴻海精密工業を後ろ盾に生産して販売するモデルになるのではないか。

 

それは、日本でのスマホの成功とはまったく異なるモデルだが、ここまでの連載で解説してきたように、シャープのスマホビジネスの成功が「日本市場に特化した形で進んできた」のだから、致し方ない。

 

海外展開を一気呵成に行うのか、それとも、うまくいくエリアを定めたうえでじっくり行うのか。そのあたりの戦略で、今後のシャープがどのような会社になるのかが見えてくるのではないか、とすら思っている。筆者は「一気には攻めない」方を採る、と予測しているが、こればかりは、シャープ首脳陣の頭の中を覗いてみないとなんともいえない。

 

逆にいえば、海外での成功が困難な課題であるからこそ、シャープはこれから、日本市場での成功をより強固なものにするべく、足場固めに入っていくのは間違いない。2019年秋には楽天がMVNOでなく、MNOとして携帯電話事業をスタートする。すでにシャープは楽天に対しスマホ提供を行っているが、楽天の事業拡大にあわせ、関係はより深くなっていくだろう。国内の「トップ4社」とどう綿密な関係を築くかが、シャープの携帯ビジネスにとって重要な要素になっていくはずだ。

 

●次回Vol.73-1は「ゲットナビ」1月号(11月24日発売)に掲載されます。

 

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