「週刊GetNavi」Vol.31-1
5月1日から、携帯電話事業者において、各端末のSIMロック解除が義務化された。これにより、すべての携帯電話事業者は、5月1日以降に自社が販売した携帯電話端末について、顧客の求めに応じてSIMロックを解除せねばならない、ということになった。春・夏の新製品(写真:NTTドコモ Xperia Z4 SO-03G)も対象だし、秋には出てくると予想される新iPhoneも対象になる。
みなさんもご存じの通り、携帯電話では通信事業者との契約情報を書き込んだICカードである「SIMカード」が採用されており、これを機器に差し込んで使う。ここで、自分が契約している事業者以外のSIMカードを排除するために端末に施されている仕組みが「SIMロック」。これがなくなると、どの携帯電話事業者のSIMカードでも端末が使えるようになり、自由度が増す。俗に「SIMフリー」と呼ばれるが、本来は「SIMロックフリー」と呼ぶべきだろう。
現在は、3大携帯電話事業者から回線を借り、速度や通信量に応じてサービスを選べる「MVNO」も増えた。より安く、携帯電話を使うためには追い風だ。SIMロック解除の義務化はこうした方向性に拍車をかけ……、と言いたいところだし、そう思っている人も多いだろう。
だが、実際問題、そうはならない。それどころか、SIMロック解除の義務化は、結果的にたいした影響を与えない、かけ声倒れのものになってしまった。理由は2つある。
ひとつ目は、そもそも解除して使う人が少ない、ということだ。確かにSIMを差し替えて使えると便利だが、多くの人は携帯電話事業者を切り換えながら端末を使おうとは思っていない。海外出張が多い人や、購入済みの端末が余っている人などが対象となるわけだが、その数は少ない。「事業者は選べないが、端末を安く買える」ほうを求める人がまだまだ多い。
2つ目は、携帯電話事業者が「不正転売」を警戒したためだ。日本では割引・割賦によって安く最新の端末を手に入れやすいわけだが、それをSIMロック解除した上で海外に持ち出して売る、という行為が考えられる。その際、支払いをせずに海外に逃亡される可能性が指摘された。そこで、SIMロック解除ルール上は、端末契約から180日後にはじめて解除に応じる、ということになった。
こうすれば携帯電話の販売店は海外逃亡の被害には遭わないが、SIMロックを解除をして使いたい消費者には一方的に不利益となる。だが、その消費者の数は少ないと考えられるので、携帯電話事業者は販売店の事情を優先した……。結果、SIMロック解除は、少なくとも年末まで有名無実である。これでは拍子抜けもいいところだ。SIMロック解除によって端末が変わったり、料金競争が起きたりする状況は、当面生まれないと考えられている。
だが、SIMフリーの流れはジワジワと広がる。大手携帯電話事業者からは変化が起きないものの、MVNOからは続々と「SIMフリーの端末」が登場し、新しい選択肢になりつつある。イオンやTSUYATAなどの流通系企業や、ビッグローブ、ニフティなどのISP(プロバイダ)がMVNOで「端末込みのビジネス」を広げようとしている。ターゲットはずばり「家庭内で2台目・3台目のスマホ」だ。
結果、大手とどのような競争を繰り広げるのか? そして、我々の「通信料金」はどう変わるのか? その辺はVol.31-2以降にて。
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