「週刊GetNavi」Vol.73-4
家庭の中に増えていくスマートスピーカー。そのバリエーションのひとつとして、スマートディスプレイが位置付けられている。なかでも、スマートディスプレイの大きな用途として期待されているのが「動画再生」だ。コンパクトで安価で、しかもそれなりに画質がいい。小さなテレビを卓上やベッドサイドに置くような感覚で使えて、映像視聴には思いのほか向いている機器だ。
Googleは、同社のスマートディスプレイである「Google Home Hub」のコア機能としてYouTubeをアピールしている。近年、YouTubeは音楽配信や有料サービスなど、機能拡張が著しい。特にアメリカでは、テレビ番組をそのまま視聴する「YouTube TV」というサービスもあって、万能のサービスになりつつある。日本でも、YouTuberの人気に代表されるように、若年層を中心に、YouTubeが明確に「余暇の暇つぶし」の中核に来ているのだ。そして、PCやスマホで観たコンテンツの続きを見たり、音声で検索したりと、スマートディスプレイとYouTubeの組み合わせは、かなり使い勝手が良い。
一方、GoogleとAmazonの間には、YouTubeを巡る暗闘が存在する。現状、Amazonのスマートディスプレイである「Echo Show」には、YouTubeアプリが公開されていないのだ。Googleは「UI上の要件を満たさないため」と理由を説明しているが、Amazonも消費者もあまり納得できる理由ではない。Amazon側はウェブブラウザを搭載し、そこからウェブ版を視聴することでカバーしているが、使い勝手は良くない。
その代わり、Amazonには強力な映像配信である「Amazon Prime Video」がある。もちろん、これはEcho Showから視聴できる。日本では提供されないものの、アメリカでは同時に「テレビ番組を録画し、家庭内に配信するサーバー」をAmazonが販売する。それらを使うことで、家のどこからでもテレビ番組が見られる。そして、アプリの開発情報がGoogleよりも公開されているので、動画配信アプリの開発も難しいものではない。
このように、やり方は双方で異なっているが、GoogleもAmazonも、スマートディスプレイで映像配信とテレビ番組の両方を楽しむ方法を用意している。
スマートスピーカーが音楽を軸にヒットしたように、スマートディスプレイは映像を軸にヒットする可能性がある。なにより、スマートディスプレイはテレビなどよりずっと安く、「一家に一台」ならぬ、「一部屋に一台」も決して非現実的な話ではない。かつて、どの個室にもテレビが置かれた時代があったように、スマートディスプレイがそうした「パーソナルな映像機器」としてポジションを確立する可能性は大いにある、といえるだろう。
●次回Vol.74-1は「ゲットナビ」2月号(12月22日発売)に掲載されます。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!