Vol.76-1
表示技術とスマホの進化で普及に現実味が増した
2019年から2020年にかけて、製品ラッシュが起きそうなジャンルがある。それが「スマートグラス」「ARグラス」だ。
スマートグラスという言葉を聞いて、Googleが2012年に発表した「Google Glass」を思い出し、懐かしく感じた人もいるのではないだろうか。当時は、スマートフォンに続く未来のガジェットとして喧伝されたものの、なかなか一般向けの製品にはならず、注目も薄れていった。
このとき、いまひとつブレイクできなかったのは、大げさな外見の割にできることが貧弱だったからだろう。しかしあれから7年が経ち、状況は大きく変わった。今年の1月にラスベガスで開催されたCESでは、多数のスマートグラス・ARグラスが展示されていたのだ。共通の要素は、「普通のメガネと大差ない外観」だ。例えばNorthの「Focals」は、ちょっとツルが太いものの、メガネとして違和感のない形になっている。スマホと連携して各種メッセージの通知やナビゲーションなどを自分の目にだけ見える形で表示できるほか、声による操作でわからないことを検索&確認することもできる。
スマートグラスは比較的シンプルな製品だが、ARグラスになるとまた性格が変わる。ARグラスは、CGを実景にうまく重ねることで、「本当はそこにはないのに、自分の目にはそこに情報があるように見える」世界を実現できるのだ。すでにマイクロソフトの「ホロレンズ」やMagicLeap Oneの「MagicLeap One」などが製品化されているが、それらと同じようなことを、より小さく、使いやすいゴーグル状の機器で実現する製品が出てくる。
Google Glassの時代からなにが変わったのか? ポイントは「ディスプレイ技術」と「スマホ」の進化だ。スマートグラスやARグラスは、小さなプロジェクターのようなものがツルの部分に入っていて、そこから光を導き、メガネのレンズにあたる部分に反射させることで、情報を目に届ける。ディスプレイの小型・精細化と光を導く技術が進化した結果、それをメガネ型に仕立ててくる企業が増えてきたわけだ。このとき、データ処理はスマホか、スマホ用プロセッサーを流用した専用デバイスが請け負う。これらの処理能力は7年の間に十数倍速くなっている。当時より格段に、色々なことが可能になってきているのは間違いない。
とはいえ、CESで展示されていたスマートグラスは「2019年中に10万円以上の価格で販売」とするものが多く、まだまだ手頃な値段とはいえない。さらに機能などにも不明な点が多く、本格普及は当分先だ。時期尚早なことはメーカー側も理解したうえで製品を展開している部分がある。
その理由は、今後大手がどんどん参入してくるからだ。記事執筆段階の2月上旬現在は詳細不明だが、2月末にマイクロソフトが「次世代ホロレンズ」を発表するとみられており、アップルも2020年にこの種の製品を販売すると見られている。彼らに先駆けねば、ベンチャーとしては厳しい立場に置かれる。
では、なぜ各社が先を争ってスマートグラスを作るのか? その市場性は? そうした部分は次回Vol.76-2で解説する。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!