「TicWatch(ティックウォッチ)」というスマートウォッチをご存知だろうか。ITスタートアップの「Mobvoi(モブヴォイ)」という会社が開発する製品で、WearOS by Google 2.0を搭載する。
同ブランドから新商品が出たので紹介したいのだが、そもそもTicWatchとはどんな存在なのか、そこら辺のところから探っていきたい。

Mobvoiとは何者か
Mobvoiは2012年に創業、北京に本拠地を置くスタートアップだ。音声認識、自然言語理解、垂直検索などの分野にコア・テクノロジーを持つAIテクノロジー企業であり、現在の従業員数は400人ほど。Googleやフォルクスワーゲンなど、大手企業とも戦略的なパートナーシップを結んでいる。
創業者のリー・ジーフェイ(Zhifei Li)氏は、Google本社にリサーチサイエンティストとして入社し、モバイル向けオフライン翻訳システムの開発に携わった経歴を持つ。2012年にSequoia CapitalおよびZhenFundからエンジェル投資を受け、Googleを退社して中国に戻りMobvoiを創業した。
そんな同社は2016年、グローバル向けにコンシューマー向けの製品群をお披露目。その中の一つが、冒頭で述べた「TicWatch(スマートウォッチ)」であった。同製品はクラウドファンディングサイトの「Kickstarter」に登場し、210万USドルを集めた。
TicWatchシリーズは4系統ある
TicWatchシリーズのラインナップには、英単語の頭文字が使われる。Essential(E)、Sport(S)、Classic(C)だ。これに「Pro」モデルを加えて計4系統。それぞれの特徴は、単語の意味から想像できる通りだ。
日本国内での発売時期を時系列に並べると、2018の1月に「TicWatch S」「TicWatch E」が発売され、同年8月に「TicWatch Pro」が登場した。そして2019年1月に「TicWatch C2」が登場している。
TicWatchシリーズの特徴は、「手頃な価格で、信頼性が高く、ミニマルなデザインであること」、とvice presidentのリン・イーリー氏は語る。「食事やファッションにおいて、ご飯や黒いTシャツは必ず必要です。これらはどんな場面にも合い、ごく自然に存在する。TicWatchも黒いTシャツのような存在になりたいと思っている」という。
同氏曰く、同シリーズの中では、グローバルだと「TicWatc E」が最も人気を得ているらしい。日本でもAmazon.co.jpの売れ行きは好調だといい、YouTubeやSNS状のポジティブなリアクションが励みになっているとのこと。
新製品は「E2」と「S2」
さて、今回のトピックは、TicWatchシリーズから新たに「TicWatch E2」と「TicWatch S2」の2種類が登場したことだ。これらの機種は、従来モデルに対するユーザーからの意見も反映し、防水性能、バッテリー性能、フィットネス機能などの面で強化されている。
ミニマムを謳うとおり、デザインは至ってシンプルであり、余計なものは付いていない。ディスプレイは1.39インチのAMOLED(400x400px)で、物理ボタンはリューズ部分に備わっている一つだけだ。ストラップに関しては、シリコン製であり、軽く柔らかい。ベルト幅は22mmで、交換も可能。ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンターが選定を行なっている「レッド・ドット・デザイン賞(red dot design award)」も受賞している。
新搭載の「TicMotion」機能により、運動するときにアプリを起動せずにいても記録ができるのがポイントだ。GPSや心拍測定ももちろんサポート。また、50m防水に対応し、水泳向けアプリをインストールして使用できる。
なお、「TicMotion 1.0」では、まずはランニングからサポートする。こうした機能は、アメリカと中国でそれぞれ数百名分のデータを収集しており、それを活用して開発にあたっているらしい。ソフトウェアのバージョンアップによって、今後も改良していくとのこと。
TicWatch Eと比較すると、バッテリー容量が300mAhから415mAhになり、38%増加した。一方で、厚みは12.6mmから12.9mmへと2%増加に抑えられている。バッテリーに関しては、残量がわずかになると、省エネモードが起動する。
このE2に対し、タフネスさを追加したモデルが「S2」である。基本機能は共通しているが、アウトドアや運動に適しており、より頑丈になっており、過酷な環境でも使用できるという。
具体的には、いわゆるMILスペック(米国国防総省の物資調達基準)に準拠。防塵機能を備えるので、ホコリや砂塵の多い場所でも問題なく使用できるほか、圧力の変化や温度変化にも対応。塩害にも強い。仕様に関して重量の記載はなかったが、筆者の体感ではE2よりもフィット感の良さを感じた。
両機の価格はそれぞれ1万8999円、2万2199円。同社の直販サイトのほか、Amazon.co.jpの販売サイトで購入可能だ。また、S2に関してはビックカメラでも販売される。
ブランドにこだわりがなければ狙い目かも
運動時の自動検知・測定機能は、例えばApple WatchやGalaxy Watchなど、ハイエンドなスマートウォッチですでに採用されているので、そこまで物珍しさは感じない。
しかし、TicWatchシリーズの価格はこうしたモデルよりもひと回り安く、お試しに選ぶスマートウォッチとしてはコスパが高く思えた。ミニマムなデザインが採用されており、装着時にギラギラしたいやらしさがないことも良い。一方で必要な機能は備わっているなど、非常に洗練された印象を受けた。
同シリーズは、iOSでもAndroidでも使える。Wear OSのスマートウォッチを試してみたいという人は、とりあえず「TicWatch E2」あたりを1回使ってみるといいかもしれない。