Vol.77-1
二つ折りならではの構造で新奇性をアピールする
2月25日から28日、スペイン・バルセロナで開かれたモバイル関連イベント「MWC19バルセロナ」で話題となったのが「二つ折りスマホ」だ。
二つ折りスマホのなかでも、特にいま注目されているのは、ディスプレイに折り曲げられる有機ELを使い、1枚のディスプレイを真ん中から折り曲げ、「片手持ち用の細い形状」と「閲覧用の正方形に近い形状」の両方を同時に実現するタイプのもの。昨年から話題になり始めていたが、2019年1月、CESで中国・Royole社が「FlexPai」を展示。その一か月後にあたるMWCでは、開催に先立ち、複数の企業が二つ折りスマホを発表する形となり、一気に加熱した感がある。
なかでも大きな注目を集めているのは、サムスンとファーウェイという、スマホのトップメーカー2社が発表した製品だ。
サムスンが発表したのは「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレイを備え、本のように開くと広く使える。閉じたときには外側にもう一つ搭載された4.6インチディスプレイを使う構造になっている。
ファーウェイの製品は「HUAWEI Mate X」。8.0インチのディスプレイを、Galaxy Foldとは逆に、外側に折り曲げる構造になっており、ディスプレイが常に表に出ている。完全に中央で折りたたむのではなく、少し位置をずらすことで薄型になるよう工夫されており、Galaxyが折りたたみ時17ミリと厚くなっているところを、折りたたんだ状態でも11ミリに抑えている。
こうした二つ折りスマホのポイントは、やはり「新しく見える」ことにある。スマホのデザインは、すでにあまり代わり映えしない。だが、二つ折り構造になると工夫の余地が出て、デザインに新奇性が出る。もちろん、画面が広くなってタブレットのように使える点も大きい。
だが一方、問題は「高くなる」ことだ。Galaxy Foldは4月26日から世界各地で販売を予定しているが、価格は1980ドル(約22万円)とかなりなもの。HUAWEI Mate Xは、二つ折りであるだけでなく5Gにも対応し、2019年半ばの発売を予定。価格は2299ユーロ(約28万円)と、Galaxy Foldよりもさらに高いものになっている。
MWC会場にも展示されていたが、どちらのモデルもガラスのケースに収められ、触れられないようになっていた。強い照明を浴びて輝くその姿は、まるで高級ブランドの製品のようだ。
スマートフォン市場は、すでに停滞期を迎えている。iPhoneにしろGalaxyにしろ、人気のハイエンドスマホの価格は高止まりしているが、一方で、過去のように「昨年との違いが誰の目にも明らか」というほどの差異は出しづらくなっている。そんななか、あえて「違い」を打ち出すためにも、価格がさらに高くなってでも新機軸の製品を投入し、「スマートフォンにはまだまだ進化の余地がある」とアピールしたい、そんなトップメーカーの思惑が背後にあると感じられた。
では、実のところ「二つ折りスマホ」はどこが便利なのか? そして、なぜ急に複数の企業から製品が出ることになったのか? そうした部分については、次回Vol.77-2で解説していこう。
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