コーヒーチェーンのスターバックスがLINEと組んで会員向けの電子決済「LINEスターバックスカード」と、その他の情報サービスを一体化したLINE公式アカウントを4月8日にオープンしました。どんな人にとって使えるサービスになるのか解説したいと思います。
LINEとスターバックスによるデジタルサービスは、2015年にLINEの友だちにギフトをプレゼントできる「LINEギフト」での協業から始まりました。昨年12月には両社が今後も連携を強めてデジタル系サービスの強化を加速させる業務提携を発表していましたが、その具体が4月8日に開催された発表会で明らかにされた形です。
LINEアプリから簡単に登録できる「LINEスターバックスカード」
両社のコラボによる新しいサービスは大きく2つあります。1つは現在注目されている「キャッシュレス」に関わるサービスで、日本国内のスターバックスコーヒーの店舗で使える「LINEスターバックスカード」です。
現在スターバックスコーヒーで品物を買うときに、同社が発行しているプリペイドカードを使っている方もいると思います。この「スターバックスカード」はプラスチック製のカード、またはiOS/Android対応のスマホアプリとして利用できますが、そのカードをLINEのアプリからも発行して、LINE Payを使って支払いができるサービスがLINEスターバックスカードです。
カードの発行はとても簡単。LINEのアカウントに登録されているユーザー情報を使うため、別途スターバックスカードへのID情報の入力がいりません。新規にカードを作る場合でもわずか数ステップで登録作業が完了します。その間、わずかに1分程度。
登録方法はLINEアプリを開いて「ウォレット」メニューに移動。「マイカード」をタップして、リストに並ぶ「LINE Starbucks Card」を選択してガイダンスに従って先に進むだけです。
もし、すでにスターバックスカードを活用している場合は、現在の登録情報やカードにチャージしている残金をLINEスターバックスカードに引き継ぐことも可能です。会員のためのロイヤリティプログラムである「STARBUCKS REWRD」の“スター(ポイント)”情報もカードの画面からいつでも確認できます。
LINEスターバックスカードの支払い方法はLINE Payに限られます。それって不便じゃないの?と思うかもしれないですが、結論から言えばその心配はなさそうです。
LINEスターバックスカードでLINE Payを利用する場合、アプリの画面に表示されるバーコードをPOSレジのバーコードリーダーで読み取るだけなので、多くのスターバックスコーヒーの店舗で利用できるからです。対して通常のLINE Payで支払う場合は、店舗に決済用の専用据置端末が設置されている必要があるところがLINEスターバックスカードとの大きな違いです。スターバックスコーヒーではこのLINE Pay専用端末を2018年末から一部店舗で導入していますが、今後はスターバックス全店に広げる計画があるようです。
LINEスターバックスカードはプリペイド方式のキャッシュレスサービスなので、お金のチャージが必要です。LINEアプリ内の「ウォレット」を開いて、LINE Payの画面からチャージを選択すると銀行口座(ゆうちょ銀行も含む)からの電子チャージ、またはコンビニで現金チャージなどの方法が選べます。アプリの操作は必要ですが、誰でも簡単に使用を始められるのが特長です。
LINEにスターバックスの公式アカウントが登場
2つめのコラボ展開による新サービスは、スターバックスコーヒーの「LINE公式アカウント」です。意外にもまだなかったんですね。公式アカウントの主なメニューは「今週のおすすめ」「カスタマイズ」「ギフトを贈る」の3つ。LINEスターバックスカードはここからも呼び出せます。
「今週のおすすめ」は名前の通り、スターバックス商品のレコメンド情報です。ユニークな「カスタマイズ」は、飲みたいドリンクの内容を「気分」や「フレーバー」の条件をトーク画面上に入力していくと、アプリがおすすめのメニューをピックアップしてくれるというものです。
「カスタマイズ」の機能はスタート当初はあらかじめ設定されたシナリオチャートに沿って、ユーザーにおすすめのコーヒーを紹介するというアナログっぽいサービスですが、将来はAIや音声操作によるインターフェースにも連携できそうです。例えば「今日は寝覚めが悪いから、ピシッと頭が冴えるようなコーヒーが飲みたい」とスマホに話しかけるだけで、AIがスターバックスのメニューの中からぴったりな飲み物をセレクト、オーダーもしてくれて、毎朝出勤前に立ち寄る会社の近くのスタバで出来立てのドリンクをピックアップできる、なんてことが実現したら最高ですよね。
発表会に登壇したLINEの出澤剛社長は「AIや音声アシスタントを活用するサービスの裏側にあるディープラーニングの技術開発はLINEが得意とするところ。今は具体的な計画はないけれど、これからアプリにぜひ組み込むことも検討したい」と語っていました。またスターバックスコーヒージャパンのデジタル戦略本部長である濱野努氏も「LINEスターバックスカードをご利用いただくユーザーの購入履歴は当社のサーバーで管理されるため、そのデータをもとにお客様がいつもどの時間帯に、どんな商品をご購入されているのか、好みのテイストなどパーソナライズドされた体験をご提供できる下地はある。」と、AIを活用したサービス強化の可能性に自信をのぞかせました。
最近はスターバックスコーヒーのように独自のモバイルプラットフォームをつくってキャッシュレス決済サービスを提供するショップも増えています。ユーザーとしてはサービスごとに違うアプリがスマホの中に増えていくと、そのうち管理が面倒になってアプリを入れていたこと自体を忘れることもあります。コミュニケーションアプリとして頻繁に使うLINEでも利用できるサービスなら親しみがわくし、繰り返し使いたくなるかもしれません。登録がスムーズに抵抗感なくできるところも好印象でした。スマホによるキャッシュレス決済をまだ試したことがないという方も、まずはスタバのコーヒーをスマホで買うところから体験してみてはいかがでしょうか。