ロボットが受付で出迎え、クロークではロボットアームが荷物を預る「変なホテル」の開業から、本格的にロボット事業を開始したハウステンボス。このたび、後期高齢者向けのコミュニケーションロボット「TELLBO(テルボ)」を5月31日から発売することになりました。価格は、TELLBO本体と付属品のセットが3万9600円(税別、以下同)。別途、月々1290円の通信料がかかります。
開発は、子ども向けの見守りロボットなどの開発・販売などを手掛ける、ロボティクスベンチャーのユカイ工学と、ぬいぐるみの企画・製造を行うティーエスティーアドバンスが協同で行っています。
初代ロボットの不具合から開発された
TELLBOが開発された背景には、ハウステンボスが手掛けるロボット宿泊施設「変なホテル」での苦い経験がありました。メインスタッフである音声認識ロボットに、利用客からの不満が続出したのです。年齢層によって異なる声質や声量に対応できず、音声認識が追いつかないことが原因でした。
こうした背景から誕生したのがTELLBOです。コミュニケーションを取る相手を高齢者に絞ることで、音声認識の精度が向上。また、ぬいぐるみを着せ替える仕様にすることで、本体を持ち上げて話しかけたときに、自然と顔がTELLBOに近付き、より確実に音声を拾えるようになりました。
次に、TELLBOの特徴についてご説明します。TELLBOが担うのは家族と離れてひとりで暮らす高齢者や、同居していても日中はひとりになる高齢者の見守り。コンセプトとして「簡単」「安心」「可愛さ」の3つが掲げられました。
チャット感覚でコミュニケーションが取れる
TELLBOには、ぬいぐるみの腹部のマークを押して話しかけるとメッセージを録音し、連携したスマホに送信するという機能があります。相手は専用アプリでメッセージを受信し、音声とテキストの両方で内容を確認できるという仕組みです。スマホでメッセージを送信すると、TELLBOがそれを音声にしてお知らせしてくれるので、電車やオフィスなど音声での会話が難しい場所でもチャット感覚でコミュニケーションが取れます。
TELLBOがメッセージを送信。受信したメッセージは2回繰り返され、聞き逃した場合もTELLBOを持ち上げれば再生されます。基本の録音時間は6秒ですが、マークを長押しすれば最大30秒のメッセージの録音が可能。
TELLBO本体にSIMカードが内蔵されているため、自宅にWi-Fi環境が無くてもOK。事前にTELLBOとスマホをペアリングしておけば、電源を入れるだけで利用できます。TELLBO側は複雑な操作や難しい設定をすることなく、電源を入れるだけですぐに使える手軽さがありがたいですね。
さらに、スマホアプリのメンバー招待機能を使えば、家族とすべてのメッセージを共有できるグループを作れます。
なお、“癒し”を与える着せ替えぬいぐるみは、ハウステンボスの「フルック」というクマのキャラクター、その双子の妹「カーレル」の2種類が選べます。純朴でつぶらな瞳に、ふわふわな肌触り。思わずぎゅっと抱き締めたくなる可愛さに癒されます。抱きかかえるのにちょうどいいサイズでスペースを取りません。着せ替えなので、汚れてしまっても気軽に洗濯をしたり買い替えたりできるなど、長く使うことに配慮が行き届いているのも魅力です。
センサで高齢者の生活を見守り
TELLBOは、専用のセンサと連携して通知を行う機能も搭載します。購入時には、自宅のドアに取り付けて開閉の振動を感知する「ドアセンサ」が付属し、ドアを開くとスマホに通知。離れて生活する高齢者がどんな生活を送っているのかを把握でき、「今日どこに出掛けたの?」といった会話に繋がります。
そのほかにも、別売りで部屋の温度や湿度、明るさを感知する「部屋センサ」(3980円)や、鍵の開閉を感知する「鍵センサ」(3980円)、人が前を通ると感知する「人感センサ」(3980円)があります。特に、部屋センサは設定した気温や湿度よりも高いまたは低くなったときに、メッセージで知らせてくれるため、気温の変化を感じ取りにくくなっている高齢者の熱中症対策に有効です。
センサは最大8個まで接続が可能。設定に応じてTELLBOがお知らせすると同時に、スマホ側にも通知が届きます。
また、リマインドを行う機能も搭載。スマホ側で設定しておけば、高齢者が忘れがちな服薬や通院のタイミングもTELLBOが自動でお知らせ。不定期な来客や外出の予定など、1回限りのものでも登録できます。
生活がルーティン化された高齢者にとって新しい物は受け入れがたいもの。ですが、このTELLBOは、現代人の多忙さと高齢者の機械への苦手意識双方を解決し、離れて暮らす家族間での気軽なコミュニケーションを可能にしました。このことは、現代家族が抱える「孤独」という課題を解決する一歩になるのではないかと思います。
執筆/山崎理香子