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2019/6/6 19:00

【WWDC19考察】iTunes終了、Sign in with Appleの意図は?一見ではわかりにくい5つのAppleトピックス

Appleは6月3日(米国現地時間)、サンノゼでディベロッパ向けのカンファレンス「WWDC19」(通称DubDub)を開催。秋にアップデートを予定する新バージョンOSの機能などが、まとめて発表されたが、例年にも増して内容はてんこ盛りだった。 そこで本稿では、多くの発表内容から、「あらためて押さえておきたい」と言える5つのトピックスについて、それぞれの概要を振り返りつつ、考察したい。

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↑WWDC19のキーノートに登壇したティム・クック氏

(1)Macの「iTunes」アプリがなくなる

Apple製品を長く愛する人たちにとって衝撃だったのは、「MacのiTunesアプリがなくなる」というニュースだろう。iTunesというアプリが解体され、端末を同期する役割は「Finder」へと移され、その他の機能は「Music」「Apple TV」「Podcast」アプリへと分割される。一方、Windows向けのiTunesアプリは提供を継続。あくまで、Appleがかつて掲げたデジタルハブ戦略における母艦としての役割が終了したと言える。

↑macOS Catalinaでは、iTunesが解体され、デバイス管理は「Finder」で行う。また、「Music」「Podcast」「Apple TV」アプリというiOSでお馴染みのアプリが導入され、iTunesが担ってきた機能はこちらに引き継がれる

そもそも、かつてのiTunesの主な役割は、リッピングしたCDやオンラインで購入した楽曲のライブラリを、iPodやiPhoneに同期すること。そして、データバックアップや初期設定、OSのアップデートの際などに、デバイスを接続して管理することなどだった。しかし、最近はiPhoneで音楽を聴く場合なら、Apple Musicのようなストリーミングサービスが主流だし、iPhoneへ直接バックアップや初期設定はiCloudで行える。いまどき、最初に触れたApple製品がiPhoneであり、MacやiPodに触ったことがないという人も多い。

 

しかし、なんと言うか、このトピックに関しては「iTunesがなくなる大変だ!」と感じる層と、「あ、そうなんだ。そりゃそうだよね」と感じる層の温度差をかなり感じた。Appleとしてはどちらの感覚があることもわかっているのだろう。キーノートで「おつかれさま!(Nailed it!)」の文字が出たときにそんなことを考えた。

 

ちなみに、筆者は完全に後者だ。個人的にiTunesはApple Musicの作業用BGMを再生するくらいの用途しか使っておらず、自身の使用スタイルの中では「アプリ名がMusicに変わる」くらいの感覚でいる。

 

(2)Apple Watch単体での潜在能力UP

Apple Watchのアプリをインストールするためには、従来はiPhoneでの操作を経由する必要があった。しかし、watchOS 6では、Apple Watch単体でApp Storeにアクセスし、必要なアプリをインストールできるようになる。

 

また、従来はApple Watchで使うために入手したアプリは、自動でiPhoneにもインストールされる仕組みだった。しかし、ウォッチ単体でアプリインストールが行えるようになることに合わせ、ここも変わる。iPhoneへのインストールを不要とし、Apple Watchだけでアプリを利用できる仕組みが整えられた。

↑watchOS 6では、App Storeにウォッチ単体でアクセスし、アプリをインストールできる

もちろん、iPhoneからアプリをインストールする手順が完全になくなるわけではない。しかし、Apple Watchだけで行えることが増えるのは、使い手を向上させることにつながるので、ユーザーとしては大歓迎だ。例えば、GPS + Cellularモデルなら、モバイル通信でアプリを落とせるようになり、ランニング中にiPhoneがなくても、そこで必要なアプリを入手できるような環境が整う。

 

ただし、こうした進化が具体的にどんなケースで力を発揮するのかはまだ明言されていないように思う。経験上、屋外で「Apple Watchだけでアプリをインストールしたい」と感じたことはなかった。いざという時に役立つという意味では重要かもしれないが、それだけだ。

 

そこで頭をよぎるのが、将来的にiPhoneとペアリングをしなくてもApple Watchが使えるようになるという可能性だ。もちろん、現状の電話番号の付与方法や、Apple Payの登録方法を考えると、やはりiPhoneがなければフル機能が活用できないと考えて間違いない。しかし、他社製のスマートウォッチでは、スマートフォンとペアリングしなくても、時刻確認や運動量の測定などごく一部の機能だけが使えるようにしている製品もある。そのため、今回のアップデートも、Apple Watchのベーシックな機能だけをAndroidユーザーなどに向けてオープンにする路線へ向かうための布石……と考えられなくもない。もちろん、可能性は限りなく低いだろうが。

 

(3)「iPadOS」が独立し、よりPCライクに

従来はiOSデバイスだったiPadシリーズだが、今年からそのOSが「iPadOS」として独立する。とは言ってもiOSから完全に切り離されるわけではなく、実質的にはiOSの兄弟や暖簾分け的な存在で、根本的な部分は共通する。

↑iPadシリーズは「iOS」ではなく「iPadOS」に

タッチ操作、ファイル操作、マルチタスク、Apple Pencil利用時のパレット——。新しいiPadOSでは、こういった部分に様々な改良が加えられる。確かに「Slide Over(スライドオーバー)」機能やApple Watchのパレッド表示などは、iPhoneでは使えないiPad独自の機能だ。こうしたアップデートが徐々に増えてきたので、OSとしても別の区切りで管理するのは自然な流れだろう。

 

改良されるポイントを見ていると、iPad Proをパソコン代わりに使ってみたことがある人なら「あぁ、なるほど」と納得できる内容だ。Macとの併用ならばさほど不満はない部分だが、iPad Pro単体をメインマシンとして活用する際にはクリティカルな不便を感じやすいところ。これらをピンポイントで解消しにきた印象を受けた。

 

一方で、既にPCを使いこなしている大人からすると、「そこまでPC風に使いたいならばいっそMacを選んだ方が良いのでは?」という考えも頭をよぎるのも自然だ。しかし、筆者としては、iPad ProはiOSに属することに価値があると思っている。iPhoneに親しんだ人ならば、その延長上にiPadOSが存在する。つまり、ゼロからパソコン操作を学ぶ必要がなく、導入時の一歩を踏み出しやすい。

 

Appleが提供する教育プログラム「Everyone Can Code」や「Everyone Can Create」でも、まずはiPadで、そしてプロフェッショナルな作業ではMacへという流れが意識されている。つまり、iPhoneと同じiOSでありながら、よりPCライクなことができるようになるiPadは、Appleから見て将来的なMacユーザーを育てることにも貢献する重要な役割が増していると思うのだ。

 

(4)ARが弱点を克服し、次のステップへ

ディベロッパ向けに公開されたフレームワークでは、ARKit 3に関するアップデートに注目したい。昨年登場したARKit 2でもすでにオブジェクトに影を反映するような緻密な描写が実現されており、カメラで写した現実世界を正確にマッピングする仕組みが実装されている。AR対応のiPhoneやiPadからMac Proの製品ページにアクセスすると、USDZファイルが公開されているので、「See Mac Pro in AR」という部分からARで表示してみると今のクオリティがよくわかるはずだ。

 

しかし、Apple が提供する従来のAR機能には、人が入れないという弱点があった。AR表示とカメラに映る人が重なったときに、要するに「レイヤーの前後関係」を正しく処理できなかったのである。秋のアップデートでは、ここが新技術によって、解消される。表示したオブジェクトの手前に人が横切っても、前後関係が正しく処理され、オブジェクトは人の後ろ側に表示されるようになる。

↑キーノートのデモで紹介されたMinecraftのARでは、オブジェクトに前後を挟まれるように人物が写っているのがわかる

つまり、ARで作成した世界観の中に、人が入り込めるようになった。これが活きるのは複数人でおなじAR空間を共有するような場面や、人とARを重ねて撮影する際だ。想像だが、例えば、ARで脱出ゲームの部屋のような空間を作成し、複数人でiPhoneやiPadを持ちながら歩き回って謎を解いて楽しむようなアプリが出てくるのではなかろうか。

 

(5)普段のメアドを使わずにログイン可能に

「Sign in with Apple」という機能が発表された。多くの人はWebサービスやアプリにログイン(もしくはサインイン)するときに「Facebookでログインする」や「Googleアカウントでログインする」「Twitterアカウントでログインする」などの選択肢を見かけたことがあるだろう。Sign in with Appleとは、要はこうしたソーシャルログイン機能の「Apple IDでログインする」に相当する。

↑Sing in with Appleでは、登録サービスごとにランダムなメールアドレスが作成される

一般的なソーシャルログインでは、ユーザーは新規登録の手間を省いてサービスを利用できるが、その裏ではメールアドレスやSNSのアカウントなどに紐づく個人情報を渡している。しかし、プライバシー保護を重要視するAppleだけに、ほかとは一味違う仕組みを整えているのが特徴だ。

 

Sign in with Appleを使うと、サービス登録時に自動でランダムなメールアドレスが作成され、普段使用しているメールアドレスをサービス側に提供せずに済む。しかも、これはバックグラウンドで実行されるので、ユーザーとしては、面倒な登録作業をする必要はなく、「Sign in with Apple」を選択し、Face IDやTouch IDなどで認証を済ませるだけで良くなる。なお、利用したアカウントは、自動で2ファクタ認証により保護される。

 

そもそも、EUが定める個人情報保護の枠組み「EU一般データ保護規則(GDPR)」が2018年5月から施行されたように、国際的にプライバシーへの注目度は高まっている(※)。時期を同じくして、個人情報管理に積極的ではないと言われる米国でも、プライバシーの取り扱い方が問題として敏感に取り上げられるようになった。だからこそ、以前から先駆的にプライバシー管理を重要視してきたAppleは、GAFAという括り方においても「プライバシーにおいてはAppleは別の括りだ」と宣言しており、今回も同社が先駆的な”お手本”を示したことになる。Sign in with Appleについては、単なる機能としてだけではなく、その背景も含めて評価すべきだろう。

(※プライバシーが注目される背景についてはこちらの記事を参照)

 

一方、我々ユーザーとしては小難しく考えすぎず、新しい便利なログイン方法の恩恵を享受すれば十分だ。秋からは多くのサービスを利用する上で、アカウントとパスワードを設定・管理する必要がなくなり、プライバシー管理に定評のあるAppleのIDで、手間なく安全にログインできるようになると理解しておきたい。

 

以上、一見しただけでは背景の意味までは見えにくい5つのトピックスについて考察してみた。とは言え、これ以外にも重要なアップデートは多い。気になる人は必要に応じて既報や公式サイトなどで全体像をチェックしておくことをお勧めする。

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