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2020/2/17 21:00

5G時代に「ジャパンメイドのスマホ」はどう世界に存在感を出すのか?

アメリカや中国など、すでに一部の国・地域では商用サービスが始まっている5G(第5世代の移動通信システム)。日本では、いよいよ春から商用サービスが始まる見通しです。1月7日〜10日に米国ラスベガスで開催された、世界最大級のエレクトロニクス・ショー「CES 2020」でも、5Gを利用する機器やサービスが多数出展されていました。

 

モバイル分野を取材する筆者が気になったのはシャープと京セラ。それぞれ、今年発売予定の5Gスマートフォンに関する発表・展示がありました。海外のメーカーに比べると、一歩も二歩も遅れている印象は否めませんが、日本のメーカーに勝算はあるのでしょうか?

 

シャープ「AQUOS R5G」は8Kビデオが撮れる5Gスマホ

シャープは、4年ぶりに本格的に出展したというCES 2019に続いて、2年連続で出展。メイン会場であるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)のセントラルホールにブースを構えていました。

 

CES 2020の開幕初日にはプレスカンファレンスを開催し、取締役 副社長執行委員 ICTグループ長の石田佳久氏が登壇。2020年のビジネス戦略を明らかにしました。そこで掲げられたキーワードは「8K」「5G」「AIoT」。主に8つの事業分野(産業、セキュリティ、スマートオフィス、エンターテインメント、健康、自動車、教育、スマートホーム)に注力することをアピールし、2020年のテーマは「Realize(実現)」であると語っていました。昨年のCES 2019でのテーマは「8KとALoTで世界を変える」だったので、そこに「5G」が加わった形です。

↑ プレスカンファレンスに登壇したシャープ 取締役 副社長執行委員 ICTグループ長の石田佳久氏。スピーチは英語で行われた

 

↑ 8つの分野で8K+5GとAIoTを推進していくことをアピール

 

↑ CES 2020の展示テーマは「Realize」

 

そのカンファレンスでは、今年「8K+5Gスマートフォン」を発売することを明らかに。そして、2/17には日本国内で初の5Gスマホとして「AQUOS R5G」をお披露目。撮った映像をすぐに5Gで共有できることをアドバンテージとしたいとのこと。

↑ CES時点では製品画像はなく、端末イメージのシルエットだけが映し出された

 

シャープはすでに日本でキャリアと一緒に行う5Gの実証実験に参加しています。昨年9月には、8Kコンテンツを時速284kmで走行する新幹線の車両に送信する実験の成功も。なお、5Gサービスが始まったとしても、常に100Mbpsを超える高速通信が実現することは難しいと考えているとのこと。そこで、8Kの映像を圧縮して4Kサイズにして伝送し、8Kに復元して再生する超解像技術を導入。これにより、30Mbps程度の通信速度でも、8K映像の伝送が実現するそうです。

↑ 高速で走る新幹線に8Kビデオを送信する実験に成功したことを紹介

 

↑ ブース内には、8Kカメラで撮った映像を伝送する試験に用いたドローンも参考出展されていた

 

↑8Kビデオを5Gでスムーズに送信するには、超解像技術も必要になる

 

プレスカンファレンスの後、石田氏は「5Gスマートフォンのすべてに8Kカメラを搭載したい」「日本だけではなく、欧州や台湾、そしてASEANでの展開も視野に入れている」とも話していました。

 

日本では、Androidスマートフォンの販売台数で1位のシェアを持つシャープですが、海外ではまださほどの存在感は示せていないのが現状です。「8K+5G」で、どこまで世界市場に食い込めるのか注視したいところです。

↑ ブースには、ソフトバンクの5Gプレサービスに使われているスマホのプロトタイプが展示されていた。AQUOS R3がベースとするモデルだ

 

↑ NTTドコモの5Gプレサービスに使われているルーターのプロトタイプも出展

 

京セラは高耐久5Gスマホのプロトタイプを出展

CESに初めて出展したという京セラのブースには「5G Solutions」というコーナーが設けられていました。そこに展示されていたのは、堅牢性と耐久性をセールスポイントとする5Gスマートフォン・タブレットのプロトタイプ。2020年内に米国での発売を予定しているそうです。

↑ 京セラのブースに展示されていた5Gスマホのプロトタイプ

 

↑ 5Gタブレットのプロトタイプ。法人向けを想定し、ニーズに合わせたアクセサリーやソリューションの提供を検討しているという

 

京セラは、au(KDDI)から「TORQUE」という高耐久スマホを発売していますが、「TORQUE」ブランドは、そもそもは米国向けモデルに採用され、日本に逆輸入されたものです。現在も、米国向けに高耐久モデル(現在のブランドは「DURA FORCE PRO」)を供給しており、近年は法人向けの需要が高まっているとのこと。

 

そんな京セラが、今年発売予定の5G端末のコンセプトは「RUGGED & CLEAN」。「RUGGED」とは「頑丈」「たくましい」といった意味で、現行モデルの特徴を継承しつつ、新たに「CLEAN」というキーワードを追加し、需要の拡大を狙っています。具体的には、医療、ホテル、食品関連などを想定しているそう。これまで米国で発売した高耐久スマホは、ほとんどが黒を貴重とするデザインでしたが、白を用いたプロトタイプを出展したことには、そういう意図があったようです。

↑ 米国で発売予定の5G端末のコンセプトは「RUGGED & CLEAN」。「CLEAN」には、日本で発売した「rafre(ラフレ)」の洗える性能なども生かせるという

 

筆者は、CES 2020の会期中に、グループインタビューの形で、京セラの通信機器事業部本部長・厳島圭司氏らに、5G戦略について聞くことができました。

↑ 米国での5G戦略について答えてくれた、京セラの通信機器事業部本部長・厳島圭司氏

 

米国では、すでに5Gの商用サービスが始まっています。2020年を迎えてからの5G参入表明は “遅れた” という印象が否めません。これに対して、厳島氏は「メーカーとしてのコストバランスを考えて、5Gに慎重になっていたのは事実。しかし、北米のキャリアは、積極的に5Gを売っていくという姿勢になっています。マーケティング面での投資も5Gにはするが、いまさら4Gにはできないという状況。そこで、少しタイミングは遅くなりましたが、方針を変更した次第です」と話していました。

 

↑ 5Gスマホも法人向けモデルが中心になる見通し。CESの出展を機に、顧客のニーズをヒアリングし、製品開発に生かす計画

 

米国で現在販売されている5Gスマホは、コンシューマー向けのハイエンドモデルのみ。手頃な価格で買えるミドルクラスのモデルが普及するには、もうしばらく時間を要しそうです。特に、法人向け市場はコストを重視する傾向が強いでしょう。厳島氏によると、5G端末の開発・製造には、4G端末と比べて「はるかに費用がかかる」とのこと。ただ4G端末のチップセットやアンテナを5G用に置き換えるだけで5G端末になるわけではなく、全面的に部品や仕様を見直す必要があるそうです。チップのメーカーであるクアルコムがミドルクラス向けの5Gチップをリリースしたことも、5G端末の開発に着手するきっかけとなったのでしょう。

 

稲盛和夫氏が創業した京セラは、創業以来、一度も赤字に陥ったことがない企業としても知られています。「5G」という新しい波に、すぐに乗るわけではなく、慎重にタイミングを見ていたことも “京セラらしい” と言えるかもしれません。

 

ただし、ただ他社よりも遅れるのではなく、5Gスマホでは、4Gスマホにはなかった新たな特徴を盛り込む予定のとのこと。耐久性や洗える性能などが、どう進化するのかに注目しましょう。北米市場での京セラ端末の優位性について聞くと「ジャパンメイドの品質」という回答が返ってきました。米国では、警察や消防などで採用されることも多く、物質的な堅牢さだけでなく、セキュリティ面での安全性の高さも評価されているようです。昨今の米中関係から察するに、中国メーカーに対する大きなアドバンテージとなるでしょう。

 

なお、日本国内でも5Gスマホを発売する計画はあるそうですが、厳島氏いわく「北米が先。日本はそれから」。筆者の勝手は推測ですが、5G対応のTOQRUEがリリースされるとしたら、2021年以降ではないかと思います。

 

↑ 初出展ながら活況を呈していた京セラのブース

 

↑ 「5G Solutions」コーナーには、5Gのモバイルルーターのプロトタイプも展示されていた

 

5G時代に、日本メーカーが国内外のスマホ市場において、唯一無二の存在感を示してくれることを期待しましょう。

 

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