「週刊GetNavi」Vol.32-1
6月8日(現地時間)に米・サンフランシスコで開かれた開発者会議「WWDC」にて、Appleは、新音楽サービス「Apple Music」を発表した。これは、俗に「定額制音楽配信」「ストリーミング・ミュージック」と呼ばれるスタイルのもの。月額9.99ドルを支払えば、数百万曲のラインナップから、好きな楽曲を好きなだけ聴ける。音質も、同社のダウンロード販売ストアであるiTunes Storeで配信されているものと変わらない。Appleは6月30日に「百以上の国々でサービスを開始する」と発表している。記事執筆段階(6月11日現在)ではそのなかに日本が含まれるかどうか、公式な発表はない。しかし、音楽レーベルへの取材や、現地アメリカでの取材の感触からいえば、日本でもスタートするのはまず間違いない、と考えている。
その2日後日本でも動きがあった。LINEは、ストリーミング・ミュージックサービスの「LINE MUSIC」をスタートした。このサービスは、LINEとソニーミュージック、エイベックス、ユニバーサルミュージックとの合弁会社によって運営されるもので、月額500円と1000円(iPhoneアプリ内の価格は1080円)の2段階制。さらに、学生向けには「学割」が用意されていて、学割ならば300円・600円とかなり安価に設定されている。
日本では、ストリーミング・ミュージックは「知る人ぞ知る」的な存在だ。だが、世界的には大きな潮流となっていて、アメリカでは、CD・ダウンロードと並ぶ音楽ビジネスの柱だ。2014年にはついに、ダウンロードとストリーミングを合わせると、CDの販売を抜いてしまった。海外でのトップは欧州や米国でサービスを展開する「Spotify」。Appleも、ストリーミング・ミュージックでは彼らを追いかける存在だ。
日本でストリーミング・ミュージックが盛り上がらなかった理由を、LINE MUSIC社長の舛田 淳氏は「これまで日本は本物のストリーミング・ミュージックに出会っていなかったから」と手厳しい。聴き放題であっても、自分が聴きたい曲が見つからなければ意味がない。アメリカなどでは、新譜がディスクやダウンロード販売と同時にストリーミング・ミュージックでも提供されるし、ラインナップ数もダウンロード販売と大差ない状態なのだが、国内においては、音楽レーベルに積極性が見られず、聴ける曲が限られていた。しかし、LINE MUSICは「150万曲以上」からスタートし、Apple Musicが日本で展開する場合もそれに近い数が用意されるとみられている。
当然、日本の他の事業者も、LINEやAppleの後をおいかけ、楽曲数の多いサービスが広がっていくことになるだろう。「2015年は、日本でもストリーミング・ミュージックが開花する」と予想する音楽関係者は多い。日本はCDの売り上げが諸外国に比べ高く、ネット配信が遅れていた。だが、そのCDもついに売り上げが下降しはじめ、ダウンロード販売も、販売額がCDに追いつくことなく下降局面に入った。そこをカバーするのがストリーミングである、ということだ。
では、普及の課題はなにか? どの事業者が勝利を収めるのか? その辺はVol.32-2以降にて。
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