Vol.99-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、
「携帯料金値下げ」。携帯電話料金事情に楽天モバイル登場以来となる大きな変化が起きようとしている。
2021年3月に、日本の携帯電話料金事情が大きく変わろうとしている。大手3社であるNTTドコモ・KDDI・ソフトバンクが、「月額2980円・データ容量20GB・オンライン対応」をひとつの水準とした新プランを提示し、実質的な値下げに踏み切るのだ。こうした動きは、すでに多くの方がご存知なのではないだろうか。
最初に動いたのはNTTドコモだった。同社は2020年12月3日、新料金プラン「ahamo」を発表した。このahamoによって前述の「月額2980円・データ容量20GB・オンライン対応」という基準が生まれたといえる。この新プランは、店舗での対応を省略し、オンラインでの契約やサポートを前提とすることでコストを絞っているのが特徴だ。また、NTTドコモが苦手とする20代若者市場の開拓を狙うという意図もある。
それを追う形で12月22日にソフトバンクは、仮称ながら「SoftBank on Line」を発表した。LINEという名称が入っていることからもわかるように、新たに同社傘下となったLINEと連動している点が特徴。こちらも手続きなどはすべてオンラインで行う。
本稿を執筆している1月前半の段階では、KDDIはまだ新プランを発表していない。しかし、年明けの時点で発表はもうまもなくと噂されており、新たなプランの内容も、他の2社から大きく逸脱したものにはならないだろうと予想される。
政府が促した値下げは思わぬ落とし穴を生む
そもそも、こうしたプランが出てくる理由は、政府からの強い値下げ圧力によるものだ。2020年中に、KDDIとソフトバンクは、それぞれ「UQモバイル」や「Y!モバイル」で20GBクラスの低価格プランを用意することで政府側の意向に対応した。だが、それではお気に召さなかったようで、もっとメインブランドに近い形で値下げが行われることになった。ここには色々な問題がある。それについては後ほど述べるが、消費者にとって、価格が下がることはうれしいというのもまた事実。だからこそ、これだけ多くの人が注目しているのだ。
だが、全員にとってプラスか、というとそうでもない。
まず、基本的に「家族割引などは対象外」であることに注意したい。すでに家族割や光回線とのセット割引を使っている場合、ちょっと考える必要が出てくる。家族のなかに新プランを求めない人がいて、なのに自分だけ新プランへ移行すると、全体では支払いが下がらない可能性もある。また、月に20GBは大容量に思えるが、5G時代にはそうでもない。自由に使うなら「無制限」のほうが適している。さらに、ネット販売専用なので、店頭でのサポートなどを期待できない。これを不安に感じる人もいそうだ。開始まではまだ若干時間があるので、こういった月額以外の要素も検討しておく必要はあるだろう。
また今回の低価格プラン登場は、携帯電話業界全体を見ると、必ずしもプラスであるとは言えない部分がある。業界の抱える課題を解決するどころか、より深刻なものにする可能性があるのだ。一体、それはなんなのか?そのあたりはウェブ版で解説していきたい。
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