「週刊GetNavi」Vol.33-2
Windows 10へのアップグレードは、7月29日からスタートしている。この記事が掲載されている頃には、もうWindows 10を使っている人も多いのではないだろうか。過去、マイクロソフトがOSを発売する時には、「発売日」が明確に設定され、その日には「新OS搭載PC」が店頭に多数並び、OSのアップグレード版パッケージも流通を開始する……というパターンだった。だが今回、ちょっとしたイベントは行われたものの、「発売日」としての盛り上げはさほどではない。Windows 8搭載PCをWindows 10へアップグレードするサービスは店頭でも行われるものの、「Windows 10が搭載された全く新しいPC」は並んでいない。マイクロソフト側も、そうした製品は「秋頃から店頭に並び始める」としている。
なぜそうなっているのか? 理由は、Windows 10の開発体制にある。
過去のWindowsは、いわゆる「発売日」の数か月前に一度完成していた。このバージョンのことを「RTM」や「Golden Master」などと呼び、以後は、セキュリティ対策を除き、出荷から1年程度は大きな改変が行われないのが通常だった。パッケージ版を作ったり、PCに組み込んで出荷したりするには相応の時間が必要であるからだ。いまもパッケージ販売の比率が多いゲームなどでは、「完成」が発売の2か月前に設定されている、という例もある。PCのような高額製品は、特に個人向けでは年末商戦に売りやすい。だから秋を大々的な販売拡大の時期と捉え、秋に発売時期を設定するのが通例だった。事実、Windows 95からWindows 8まで、「OSの発売日」はほぼ10月・11月に集中している。そこから逆算し、RTMは7月から9月に完成するのも、やはり通例だった。
実はWindows 10においても、昨年中は同じようなスケジュールで動いていた。だから搭載PCについてはいまも「秋発売」なのである。変わったのは、マイクロソフトが「RTM」という考え方を捨て、基本的な部分が出来上がるとすぐに提供する、というスタンスに切り替えたことにある。
Windows 10は「常に成長し続けるOS」になる。数か月の単位でアップデートが繰り返されていき、7月29日の姿はあくまで「スタート時点の姿」でしかない。逆にいえば、今後Windowsは「いつ買っても最新のWindows」ということになる。意図的にアップデートを止めない限り、古いバージョンを使い続ける、ということがなくなる。これが、マイクロソフトの考える「OSのサービス化」だ。このような形になると、新OSの登場で一喜一憂する意味もなくなるので、「発売日」にもセレモニー以外の意味がなくなっていくわけだ。
そもそも、現状Windows 10へのアップグレード対象の機種であったとしても、7月29日から全機種が一斉にアップグレード可能になるわけではない。各種ドライバーやファームウエアの準備ができていて、問題なくアップグレードできるとメーカーが認識した機種から「順次アップグレード」になる。そうそう遅くはならないはず、と聞いているが、ここでも「発売日に同時に」という発想が消えているのだ。
では、マイクロソフトは「Windowsが搭載された製品」をどのような位置付けで考えているのだろうか? その辺は次回Vol.33-3にて。
「Vol.33-3」は8/7(金)ごろ更新予定です。
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