「週刊GetNavi」Vol.46-2
現在、全天球カメラがものすごい勢いで製品数を増やしている。手がけているのは、中国などの新興企業が多いのだが、その多くは、昨年まではGoProに代表される「アクションカム」を作っていたメーカーである。実際、1月に家電展示会・CESでは、多数のメーカーが売り込みをかけていた。そのうちいくつかが、いま、製品として日本に入ってこようとしている。
Vol.46-1でも述べたように、アクションカムと全天球カメラは構造が似ている。アクションカムの開発経験があれば、「とりあえず全天球の写真が撮れる」カメラを作るのはまったく難しくない。ある大手カメラメーカーの関係者は、「ハードウエアは過当競争になる。だからうちはやらない」と話していた。
中国の小規模なハードウエアメーカーは、とにかく流行りに敏感だ。トレンドに乗っていて作りやすいハードウエアを乗り換えていく……というところが非常に多い。2000年代中頃はMP3プレーヤーを、その後は動画プレーヤーを作り、2010年頃は電子書籍リーダーを作り、その後はアクションカムを作っていた。そうした企業が次の注目分野として全天球カメラに目を向けているのだ。
背景には、中国のスマホ市場での「VRブーム」がある。中国、それもハードウエアの多くを生産している深センでは、スマートフォンの次なるターゲットとして、バーチャルリアリティに期待する声が多い。欧米や日本と違うのは、ゲーミングPCや家庭用ゲーム機向けのVRはほとんど注目されず、もっぱらスマホ、という点。360度動画をスマホ向けに提供する企業が増え、スマホを差し込んで使う簡易HMD(ヘッドマウントディスプレイ)もとにかく増えた。高度なインタラクティビティを備えたものより、まずは360度動画で……という雲行きである。そこへのコンテンツ供給と、個人向けのデジカメ市場として、さらに全天球カメラへの注目が集まっている……という構造だと考えられる。
中国企業といっても、その内実はピンからキリまで色々だ。非常に高度な技術を持ち、Androidベースで「スマホのいらない一体型HMD」を開発しているところもあれば、プラスチックのケースをHMDとして売っているだけのところもある。正直、高度なところは日本メーカーよりも有望だ。全天球カメラにもそういうものはあり、日本への輸出も始まった「Insta360 Nano」などは「見逃せない高度なメーカー」の一例だ。
一方で、促成栽培のように出てくる全天球カメラの多くは、撮影される映像の品質に課題があるのも事実だ。それはどこで、なぜ起きるのか? その辺りの解説は次回Vol.46-3にて。
●Vol.46-3は9月7日(水)公開予定です。
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