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2015/8/31 6:00

【西田宗千佳連載】スマホで「テレビ回帰」を目指す「TVer」とは?

「週刊GetNavi」Vol.34-1

34-1

 

10月から、在京民間放送キー局5社は、共同でテレビ番組の見逃し配信サービス「TVer」を開始する。広告ベースの無料サービスで、どの番組も無料視聴できる。毎週1局につき10程度の番組が提供されるが、どれもテレビ放送されたものをほぼそのまま配信。テレビで見逃した番組をネットで視聴できる「見逃し配信」である。

 

運営は広告を原資に行われ、視聴中には動画の広告が挿入される。広告による無料視聴、というとYouTubeのような印象を受けるが、むしろ運営側がイメージしているのは、地上波でのテレビ放送そのものである。広告部分のスキップは一切できない。「見逃し配信」という性質上、同じ番組の次の回がテレビで放送されると、配信番組も入れ替わる。「最新の回だけが無料で見られる」ものと思えばわかりやすいだろう。

 

視聴の対象となるのは、スマホとタブレットとパソコン。パソコンはウェブ経由で、スマホ&タブレットはアプリ経由で視聴することになり、当初はiOS向けとAndroid向けが用意される。解像度はハイビジョンではなく、画質的にはさほど高くない。また、ネット対応のテレビやゲーム機には、当初は対応しない。

 

そんなところからは「テレビ局は、高画質配信を手放さず、ネット配信に制限をかけたいのでは」という印象も持たれそうだ。

 

しかし、そのあたりはちょっと異なる。彼らはテレビへの対応も考えているが、なによりもまず「スマホ対応が最優先であり、スマホに最適化した配信が必須である」という認識が存在するのである。

 

現在、テレビの平均視聴率は落ちてきている。テレビ番組が面白くなくなったからだ、との指摘もあるし、それももっともだとは思うが、ここで問題視するのはもう少し別の部分だ。

 

人間は「習慣」に強く支配されている。テレビが元気であった時、人々はゴールデンタイムになると、家族揃ってテレビの前に座り、番組を見る「習慣」があった。だが現在、そういう典型的な「お茶の間」の姿はうしなわれている。特に若年層にとって、ヒマな時になんとなくつけているのは、テレビではなくスマホになったからだ。

 

でも、テレビが見られていないわけではない。ネットでの話題にはテレビ発のものも少なくない。テレビを持っていない、もしくはテレビをつける習慣の薄い若者に、ネットで面白いと話題のテレビ番組に触れてもらう仕組みを作れれば、視聴習慣を取り戻すこともできるのではないか……。

 

TVerはそんなもくろみから生まれた。だから“スマホファースト”なのである。

 

だが一方、無料動画は他にもある。GYAO!ではすでに、テレビ番組の無料見逃し視聴が行なわれているし、民放各局も独自に展開中だ。有料のdTVやHuluでは、過去のものまですべてが見られる。そうしたものとTVerはどう棲み分けるのか? テレビに視聴者は本当に戻るのか? その辺はVol.34-2以降で解説していく。

 

 

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