デジタル
2022/9/25 6:00

【西田宗千佳連載】10月発売の「Project Cambria」でMetaは「次世代のPC」を目指す

Vol.118-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはFacebook改めMetaが手がけるVRヘッドセット。現在開発中のハードウェア「Project Cambria」に迫る。

↑Meta Quest 2。実売価格5万9400円(128GB)から。Meta社が買収したことにより、それまでのOculus Quest 2から名称を変更したVRヘッドセット。完全ワイヤレスによる操作が可能で、ゲームやフィットネスで展開されるVR空間、さらに昨今注目されているメタバース空間での移動もより自由度を増すデバイスとなっている

 

前回解説したように、Metaは「メタバースを毎日使う」ことを目的に、PCのようにビジネスシーンで使う用途の開拓に取り組んでいる。Meta Quest 2でもその片鱗は体験できるのだが、ゲーム機として使うことも想定し、価格を抑えて開発したものなので、多少無理があるのも、また事実だ。

 

そこでMetaは現在、「Project Cambria」と呼ばれるハードウェアを開発中だ。噂では、製品版は「Meta Quest Pro」になる、とも言われている。8月25日、Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、アメリカの人気ポッドキャスト番組に出演し、「10月に新デバイスが登場。カンファレンス”Connect”の場で詳細を説明する」とコメントした。彼のいう「新デバイス」こそがProject Cambriaだ。

 

Project Cambriaはカラーのカメラを内蔵し、外界の風景を「カラー画像」として捉え、3D CGを重ねて表示する機能を持つ。いわゆるARが実現できるわけだが、いままでのAR機器と違い、視界全体を覆う映像になるので、より自然でわかりやすい表示になる。実用的なARが実現すると、周囲を見つつ安全に作業もできる。カメラを使うARの場合、必要ならカメラをオフにして「VRとして没入する」こともできる。

 

また、視線や表情を認識する機能もあり、それも自然な表現にはプラスだ。アバターに自分の表情を反映させることにも使える。

 

それでいて、Meta Quest 2よりも小さくつけやすくなると想定されており、毎日仕事のために使うにはMeta Quest 2より良いものになるのでは……と期待している。

 

ただし、これはMeta側も公言していることなのだが、Project Cambriaは「高くなる」とされている。Meta Quest 2はゲーム機として売れる・普及する価格帯を目指して作られたが、Project Cambriaは業務向け・ビジネス市場向けなので、そこまで安くする必要はない。ハードウェアの中身も単純なMeta Quest 2の後継機的な路線ではなく、業務に使える最新の要素を備えたものになるので、高くなるのが必然なのだ。

 

現在は発表前なので正確な価格はもちろんわからない。だが噂では、千数百ドルになると予想されている。ゲーム機・単体のHMDとしては高額な部類だが、PCや業務用機器の代替としては納得できる価格帯である。それどころか、マイクロソフトの「HoloLens」など、過去の業務用AR機器は3000ドルから5000ドルといった価格なので、本当に1000ドル代で出てくるならバーゲン価格、といっても良いくらいである。利益率も確保しやすいので、Metaの「長期戦略でメタバースビジネスを開拓する」という戦略とも合致する。アップルなどの他社に先駆ける意味でも、ここで競争力のあるデバイスを出すことは重要だ。

 

円安が直撃する日本では、かなり高めの値付けがされそうな予感はするものの、10月が楽しみになってきた。

 

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