ファミコン、お笑い、アイドルにエリマキトカゲ。80年代は日本全国を巻き込むムーブメントの宝庫でした。そういえば、ミニ四駆がフィーバーしたのも80年代でしたね。
そしてこの年代は、音楽の宝庫でもあるんです。もんた&ブラザーズの「ダンシングオールナイト」、寺尾聰の「ルビーの指環」、あみんの「待つわ」といったミリオンセラーが続出していましたし、数十万枚の売り上げを誇る曲もたくさんありました。ザ・ベストテン、夜のヒットスタジオで入手できる最新ランキング情報に日本全体が一喜一憂し、自分の好きな曲がどれだけ人気があるのかで盛り上がっていた時代でした。
だからこそ聞いてみたい。あの頃のフェイバリットソングは何だったのかを。そこで80年代=多感な小中高時代を過ごして来た40代のライター・ジャーナリスト4人が、自分で所持している大好きソングのレコードを持ち寄ってDJバーに集結。再生しながら当時の思い出を語ってもらいました。
再生に使用したターンテーブルはパイオニア「PLX-1000」。質実剛健を地でいく、タフなプロフェッショナルモデルです。高トルクなモーターを用いたダイレクトドライブで、常に安定した再生を可能としています。
実は普段から、仕事に関係なく飲んでいるこの4人。何はともあれ、乾杯からのスタートです。
実験的で面白いアルバムが多かった80’s
武者:今日はジャケット買いの文化ということで、機動戦士ガンダムのLPを持ってきた……のですが、音楽推しとなるとコッチでしょうか。YMOの「増殖」です。
鈴木:YMOというと、70年代というイメージがあるかな。
安蔵:そうだね。 当時、うちの近所にできたパチンコ屋がずっと「ライディーン」かけてた。
長谷川: あー、ライディーンというとうちの母親がレオタード踊っているイメージしかないんですよ(笑)。いま思うとすごいよね。こんなにマニアックな曲で踊らせるジャズダンスのスクールって。
武者:ま、まあこの「増殖」は80年に発売されたアルバムなので。コイツがですね。アバンギャルドなチャレンジをしているんですよ。曲間にコントが入っているんです。そしてコントを担当しているのがスネークマンショーなんです! 急いで口で吸えとか、ここは警察じゃないよぉ、とかの!
安蔵:懐かしい! あったなー、どっかから「これ面白いんだよ」とカセットテープが回ってきて、聞いてみたらいまいち。でも聴き続けていたら面白くなってったアレだ。天丼ギャグだよね。
鈴木:いろんな人が参加してますよねこのアルバム。俳優さんがミュージシャンと組んでアルバムとして出すというのが画期的だったんじゃないかなって。
武者:曲の方も、やはり80年代を印象付けるバンドでしたよね。全員好きだけど、坂本龍一と細野晴臣は特に。アンド、4人目のYMOと呼ばれた松武秀樹も特に。彼らは日本にシンセサイザーブームを巻き起こしたレジェンドだと思っていて、憧れましたね。
鈴木:テクノのブームかー。あったね!
武者:時代はちょっと違うんだけど、そのあとやってきたヤマハの「DX7」ブームは、彼らが作ったものだと信じていて。僕はお金がなかったので、バイト代かき集めて「DX9」を買うのが精一杯だったんだけど。
安蔵:型番が7より9の方が、下位機種だったんだ。それも面白いな。
男に揺れる役を演じた松田聖子に傾倒する小学生時代
長谷川:私が持ってきたのはこれ。聖子ちゃんの「時間の国のアリス」。ユーミンが作曲しているんだよ。そしてB面は「夏服のイヴ」って曲なんだけど、作曲があの日野皓正なの。ジャズトランペッターの。歌詞は両方とも松本隆。
安蔵:オシャレなチームだよね。
長谷川:うん。オシャレ財産。9歳のときの曲でね。でも曲はそこまで好きじゃないの(笑)
安蔵:なんで持ってきたんだよ!
長谷川:聞いて聞いて。このB面、「夏服のイヴ」という映画の主題歌なんだけど、松田聖子と羽賀研二が出ていたのね。
鈴木:羽賀研二懐かしい!
長谷川:初めて見た邦画がこれがこれだったの、あたし。それまで洋画が好きでETとかロッキーとかみていたんだけど、これはどうしても見に行きたいからと親を説得していったの。内容はすっごいつまんなかったんだけど(笑)
安蔵:ツッコミどころ多すぎだよ!
長谷川:聖子ちゃんがボンボンの羽賀研二に惹かれるんだけど、でもバツイチ子持ちおじさんの近藤正臣にも惹かれるのね。そして男にどんどん流されて、男に依存してるっていう展開にあたしすごく影響受けちゃって。
鈴木:待って! はせともそのとき9歳っていってたよね⁉︎(笑)
長谷川:男がニュージーランドに行くといったらついていくとか、もう自分は無いのかっていうぐらいに流されちゃうの。
安蔵:昨日見ていきたかっていうかのように語ってるぞ……。
長谷川:それを見てあーニュージーランド行きたいなとか考えちゃって……なんか黙っているね。どう思った?
武者:い、いや、まあ、すごい小学生だなって。そして松田聖子の歌唱力がさすがだなって。
鈴木:名曲揃いだよね聖子ちゃん。「青い珊瑚礁」とかよかったなあ。
(そしてみんなでハモって歌い出す)
カラオケで歌える曲を積極的に開拓していた
安蔵:俺はどれにしようかな。色々持ってきたんだけどさ。
鈴木:やっぱり一番好きな曲がいいんじゃない?
安蔵:となると、思い出深いのはこれかな。尾崎 豊の「17歳の地図」。
武者:鉄板だね!
安蔵:もちろんほかの尾崎の曲も好きよ。もともと中学の先輩が好きでね、尾崎。最初はふぅんと思っていたんだけど、兄貴が持ってた「壊れた扉から」を何の気なしに聞いたら、何これいいじゃんと。
鈴木:尾崎っていうと、汗だくでステージ上転げ回ってだというイメージがあるなー(笑)
安蔵:でもこの曲はカラオケ向きだったというのがあってさ。高一の頃、渋谷の宮益坂側にあるボーリング場に、ボックス型のカラオケができたのよ。電話ボックスみたいなやつで、1人で入れるやつ。1曲100円で歌えて、よく使っていたのさ。
鈴木:あったねそういうの!みたことある!
安蔵:そして高二の頃、合コンとかで下北にあったカラオケステージのある店に行くようになってさ。そっちは1曲200円だから、歌う曲は厳選しないといけないんだけど(笑)
武者:ステージ! ボックスじゃなくて、店にいるみんなが聞けるやつだ。すごいな!
安蔵:100円のボックスの時は比較的新しい歌ばかりだった。それは古い曲だと入っていないからなんだけど。でもステージがある店となると、選曲を変えないといけなくてさ。単純に好きな曲というだけじゃなくて、みんなが認知している曲を歌うようになるんだよね。
鈴木:合コンというなら、盛り上がった方がいいもんね。
安蔵:歌いやすいんだよね。「オーマイリトルガール」とかも。これが「卒業」になると、一曲歌っただけで喉が消耗する(笑)
アングラだったバンドがお茶の間に出てくる衝撃
鈴木:どれにしようかは、本当に迷うよね。
長谷川:いっぱい持ってきたのね。
鈴木:よし。これに決めた。パーソンズの「RomanEsque-HeartAche」(ロマネスクハートエイク)で行こう!
武者:決め手のポイントはなんだろう?
鈴木:80年代から90年代にかけてのバンドブームだね! 私、昔ずっとバンドやってたんだ。だから当時はカラオケとかご法度だったんだけど(笑)
長谷川:なんでなんで。
鈴木:生音じゃないとダメっていうノリがあったんだよー。
安蔵:俺もバンドやっていたけどカラオケも大好きだったよ(笑) 俺の歌を聴けぐらいの勢いで(笑)
鈴木:で、だね。80年代からバンドブームがきて、バンドがテレビとかにも出るようになったんだよ。当時バンドブームといってもいろんなジャンルのバンドがあって、それこそヴィジュアル系とかピートロックだったり、ヨーロッパに影響されてたとか和製マドンナみたいな。
安蔵;和製〇〇ってのはあったね!
鈴木:なかには、例えばX JAPANとか普通にお茶の間のテレビに映るようになってさ。それが衝撃だったの。
武者:ごめん、それって衝撃だったの? X JAPANってマスもマスだと思ってた。
鈴木:メジャーデビューは1989年だけど、それまで10年以上もインディーズ。アングラだったんだよ。
長谷川:バンドのTV進出はイカ天の影響が大きかったね。
鈴木:パーソンズもそうなの。ビートロックがカッコよくて。あとみんなは知らないかもだけど、浜田麻里とか好きだった。あとは当時を代表するといったらレベッカとか、米米CLUBも入るのかな。
安蔵:パーソンズはジャケットもかっこいいね。
鈴木:80年代のデザインから移り変わってきた感じあるよね。そうそう変わってきたといったらファッションもそうなの。当時は音楽のジャンルごとに雑誌があって。宝島だったら宝島少女というファッションの流れがあって、一見だけでこの子たちはどんな音楽ジャンルが好きなんだなとか、どんなバンドが好きなんだなというのが見えてたんだよね。
長谷川:いまってそういうなのはないよね。趣味が細かすぎちゃっているのかな。
鈴木:そうだよね。
このように「どんな音楽を聞いてた?」「どんな学生時代だった?」というテーマは、酒の場のいいツマミとなる話題です。その時にレコードの音を聴きながら、ジャケットを見ながら喋ると会話も加速するというもの。みなさんにも、是非ともオススメしたい。好きだった曲のレコードが発売されていたなら、なくならないうちに自分だけの宝物としてゲットした方がいいですよ!
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