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2018/4/20 22:05

今夜開店! 「レコードショップ ギャラン堂」第1回目は昭和歌謡の巨星・筒美京平の自選作品集を全曲紹介

みなさんこんにちは! いかがお過ごしでしょうか? ギャランティーク和恵です。4月から新しい企画「レコードショップ ギャラン堂」がスタートします! 「ギャラン堂」は“架空の”レコードショップ。歌謡曲・演歌に特化した、何となく亀戸の商店街あたりにありそうな街の古いCDショップといった感じでしょうか。店長はワタクシ和恵。街のみなさんからは「ギャラン堂の和恵ちゃん」って呼ばれてます!(妄想開始)

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

毎月、各レコード会社からリリースされる歌謡曲のコンピレーションCDや復刻アルバムCDなどから、和恵イチ推しの1枚をピックアップしてみなさんにご紹介します。レビューを読んで気になったらぜひお買い求めくださいね! 「ギャラン堂」に買いに来てくれると嬉しいのですが、何度も申し上げますが「ギャラン堂」は架空のレコードショップですので、間違っても本当に亀戸まで行って探したりしないでくださいね……。

(撮影:下村しのぶ)

 

【今月の推薦盤】
「筒美京平自選作品集 シティ・ポップス編」(ユニバーサル)
「筒美京平自選作品集 アイドル・クラシックス編」(ビクター)
「筒美京平自選作品集 AOR歌謡編」(日本コロムビア)

 

今月ご紹介するのは、2018年3月7日に発売された、日本ポップス史に燦然と輝く大ヒット作曲家「筒美京平」の作家活動50周年を記念して企画された、筒美京平本人の自選による作品集です。<AOR歌謡><アイドル・クラシックス><City Pops>をテーマで3枚、それぞれのレコード会社よりリリースされています。筒美京平センセーの作品集は過去にもたくさん出ていて、さかのぼること1997年に作家生活30周年を記念して作られた「HITSTORY」(「ヒットストーリー」と「ヒストリー」を兼ねたようなタイトル)というLPサイズの特別仕様ケースで4枚ずつパッケージされた計8枚組のベストセレクションCDが発売されたのがもう20年前(めまいがする……)。

 

さらに90年代は歌謡曲再評価ブームが花開いた年でもあり、レアグルーブ的観点でセレクトされたマニアも喜ぶラインナップで各レコード会社からリリースされた「筒美京平ウルトラベストトラックス」、2007年には作家生活40周年でリリースの6枚組「THE HIT MAKER ~筒美京平の世界~」、そして作家生活45周年ではレコード会社7社の合同企画で計7枚リリースされた「GOLDEN HITSTORY」など、過去にもたくさんの作品集がリリースされていますが、今回は筒美京平センセー「自選」といういままでにないアプローチでまとめられた作品集というのが大きなポイント。しかしほとんどが過去の作品集にも収録されているおなじみの曲がほぼ並んでいるわけですが、そうはいっても筒美京平センセー本人が選んでいるのか……と思うと、自身のその曲への評価や思い入れや好みなどを想像したりして改めて聴き直す面白さもあります。さらには、最近の歌謡曲再評価の傾向において外すことのできない「AOR」「アイドル」「シティーポップ」というカテゴリーに焦点を合わせてパッケージされているというところも特筆すべきポイントです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、この度この「筒美京平自選作品集」3タイトルをレビューさせていただくにあたり、まずは120曲一気に聴き通しました。筒美京平センセーの楽曲に浸ることのできる至福の時間……。まず感動したことは、京平センセーのクリエイティブの素晴らしさはさる事ながら、歌手たちも負けず劣らず素晴らしい表現者であるということです。そして京平センセーはその歌手たちの魅力や表現力を見事に引き出しているということがよくわかります。

 

逆にいえば、筒美京平メロディとは何だろう? とあらためて考察してみるも、実は決まった特徴やクセというものがあるわけでなく、その時代の流行に合わせたサウンドに適するメロディ、そしてそれを歌う歌手の声色、キャラクター、クセ、湿度などをしっかりと計算して作品に昇華させているのだと気付かされました。表現者でもありながら実に裏方的であり、職人的であります。だからこのCDは、筒美京平センセーの作品集でもありながら、収録されている歌手たちの素晴らしい個性と表現力にただただ浸ることのできる素晴らしいアルバムともいえます。ワタシが普段から聴き慣れている歌手でも今回新しい発見があったり、いままで知らなかった曲に心を鷲掴みにされて新しい涙を誘うものもありました。このCDを手に取った皆さん、ぜひ、主役の歌手たちそれぞれの歌の表現に耳を傾けてみてください。その表現がメロディとともに活き活きと耳に飛び込んできた時、自ずと作曲家・筒美京平がいかに素晴らしい作曲家であるかということに気づかされるでしょう。

 

このアルバムを聴き通しながら晴れた日の午後に散歩していると、イヤホンから次々と押し寄せてくる名曲の数々にふと感謝の気持ちがこみ上げてきて、思わず青空に向かって心の中で叫んでしまいました。「こんなに素晴らしい歌たちを生み出してくれた京平センセー、心の底からありがとう! あなたとこの時代に一緒にいれて本当に良かった! 」

 

【聞き流しレビュー】

1枚のアルバムを曲目順に1曲ずつ短いコメントでレビューする「聞き流しレビュー」のコーナーですが、今回は初回にして豪華版、全6枚120曲という特別仕様のアルバムをご紹介ということで、全曲レビューするのは書くほうも読むほうもウンザリしてしまいそうなので、とりあえず全曲目リストを掲載しつつ1行レビューを心がけて参ります。思い入れ強くて長くなったらゴメンね。短かすぎてもゴメンね。

 

1枚目「筒美京平自選作品集〜City Pops〜」(ユニバーサル/UPCY-7457~8)

【Disc1】

1.「黄色いレモン」藤 浩一(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これCity Pop? 1曲目からいきなりズッコケますが、筒美京平センセーの作曲家としてのデビュー曲であるこの曲は、藤 浩一さん以外にも泉 健二さん、望月 浩さん(また区別しにくい名前で覚えにくい……)などが競作でリリースしています。まだ初々しさが感じられる、朗らかで優しいメロディです。

 

2.「バラ色の雲」ヴィレッジ・シンガーズ(作詞/橋本 淳 編曲/森岡賢一郎)
グループ・サウンズの誕生とともに、筒美京平センセー始め、フリーの職業作曲・作詞家たちが誕生し、活躍の場が広がりました。

 

3.「ダーティー・ドッグ」尾藤イサオ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
尾藤イサオさんの表現力ハンパないっす。City Popというか、闇市という感じ。

 

4.「スワンの涙」オックス(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
オックス大好き! 野口ヒデトのハスキーな泣き声ヴォーカルが無邪気な少年のよう。

 

5.「白いハイウェイ」ブレッド&バター(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーにとって男性ヴォーカルは、ポップさという観点でどこか少年のような中性的な声質を好んでいたようで、特にブレバタのお兄さんのヴォーカルは最高に少年的でピュア。ワタシにとっても最高に好きな男性ヴォーカルの1人です。

 

6.「サザエさん」宇野ゆう子(作詞/林 春生 編曲/筒美京平)
ある意味City Pops。みんなご存知サザエさん。子供のころから聞き馴染み過ぎていたので気付かなかったけど、サウンドはバッチリ京平サウンドです。

 

7.「ひとりの悲しみ」ズー・ニー・ヴー(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」がヒットする前にGSの「ズー・ニー・ヴー」がリリースしていた歌詞違いの同曲。ヴォーカルの町田義人さんの震えるような声が「ひとりの悲しみ」感を醸し出しています。アレンジ、「また逢う日まで」とほぼ同じだけれども何かが違う。さてそれは何か。答えは2曲後に。

 

8.「悪っぽい人だけど」森山良子(作詞/小平なほみ 編曲/筒美京平)
「たいくつだったのね よくあることだわ」のメロディが秀逸。

 

9.「また逢う日まで」尾崎紀世彦(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
答えあわせです。正解は、グルーヴィーに上下激しく動きまくるベースラインです。そのグルーヴにキーヨの力強い歌唱が乗ると、「ひとりの悲しみ」からこんなにも壮大な歌に生まれ変わるんですね。

 

10.「お世話になりました」井上順之(作詞/山上路夫 編曲/筒美京平)
これほどにも、井上 順さんのキャラクターとヴォーカルでしか表現できない歌があるだろうか。

 

11.「雪が降るのに」黛ジュン(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
あぁ……この鼻にかかった喘ぐような声が好き! 一聴すると京平センセーにしては歌謡寄りに感じますが、何気に演奏がタイトでカッコいいのです。

 

12.「愛の挽歌」つなき&みどり(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これも一聴すると歌謡寄りな印象ですが、演奏がこれまたタイトでクール。前曲「雪が降るのに」と同じようなド頭の不思議なドラムフィル然り、かなりストイックなアレンジです。この2曲を並べるなんて流石だわ。それにしてもつなき&みどり夫妻のクレッシェンド歌唱は何度聴いてもクセになります。

 

13.「青春挽歌」かまやつひろし(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
ジャパニーズ・カントリー。ムッシュのカントリー歌唱は、藁葺き屋根、水車小屋、田んぼのあぜ道に咲く野の花、手ぬぐいを頭に巻いたおばあちゃん、そんな素朴な日本の田舎の景色が見えてくるのでスゴイのです。

 

14.「或る日」ザリバ(作詞/石津善之 編曲/矢野 誠)
矢野顕子さんが所属していたグループ。ちゃんと歌ってる(怒られるわ)。

 

15.「夏しぐれ」アルフィー(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。

 

16.「忘れ雪」オフ・コース(作詞/松本 隆 編曲/矢野 誠)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。その2。そして太田裕美の誕生へと続く。

 

17.「セクシー・バスストップ」Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス(作詞/橋本 淳 編曲/高田 弘)
京平センセーが和製ディスコへと果敢に挑戦された頃に結成された覆面バンド。京平センセーも「Jack Diamond」と変名で作曲、コーラスは矢野顕子さん、ドラムに林立夫さん、ベースに後藤次利さん、ギターに鈴木 茂さんという豪華さ。しかしそれを隠して洋盤としてリリースしたそうな。

 

18.「ヒットマシーン」K・T-585 BAND(作詞/今野雄二 編曲/筒美京平)
こちらも和製ディスコへ果敢に挑戦された時期のものですが、このグループでは筒美京平名義で制作されています。当時レコード会社それぞれが企画盤としてリリースしていた「ステレオ・チェック」モノLPというのがあって、そこではミュージシャンたちが商業音楽から少し離れて好きなことをプロフェッショナルに追求できるという枠があったようで、京平センセーもこのグループでディスコ・サウンドを追求なされていたようです。

 

19.「たそがれマイ・ラブ」大橋純子(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
Aメロ「今は夏~」の出だし1発目をあのコードで歌いださせる感じの斬新さ。

 

20.「グッド・ラック」野口五郎(作詞/山川啓介 編曲/高田 弘)
ディスコ歌謡の名曲。着目すべきは編曲に高田 弘さんということですが、先ほどの「セクシー・バス・ストップ」も高田 弘さんということで、わりとディスコ・サウンドに長けてた方だったのかと改めて知りました。ワタシの中ではちあきなおみ「喝采」のアレンジャーとしての印象が強かったので。

 

21.「センチメンタル・ブルー」BUZZ(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
小出博志さんと東郷昌和さんによるフォーク・デュオ「BUZZ」。いい名前。何気にYMOの高橋幸宏さんや彼のお兄さんとの交流があったり、デビュー前のユーミンが詞を提供していたり、スノッブな方たちだったと見受けられます。小出さんの胸の奥をくすぐられるような優しい歌声が素晴らしい。

 

22.「ワールド・ファンタジー」レターメン(作詞/L.Rhee 編曲/大村雅朗)
なにコレ? オシャレ! レターメンって誰?! とWikiで調べると、アメリカのコーラス・トリオ(星屑スキャットみたいな?)なんですね。「セクシー・バス・ストップ」あたりの腰が揺れる重心重めのグルーヴから、水平飛行するようなライトな四つ打ち感あるグルーヴへ移行した78年あたりのディスコ・サウンド、ワタシの大好物です。同時期に作られた隠れた名曲「青い地平線」と同じアレンジやコード進行感。

 

【Disc2】
1.「ロキシーの夜」近田春夫(作詞/島 武実 編曲/小田健一郎)
ハルヲフォンから近田春夫としてのソロデビュー曲。近田春夫さんはロックミュージシャンにして歌謡曲研究家であり、特にヒットメーカーとしての筒美京平センセーの作曲法などを熱心に研究していたようです。

 

2.「ブルー・バタフライ」さとうあき子(作詞/松本 隆 編曲/瀬尾一三)
かなり危うい声……。

 

3.「ラスト・トレイン」宮本典子(作詞/三浦徳子 編曲/筒美京平)
ソウルフルなお声とソウルフルなお顔でキャラ立ちまくり。失恋の悲しみを振り払い立ち上がろうとする女性の心情を、彼女の伸びやかな歌唱が見事に表現しています。

 

4.「とりあえずニューヨーク」山下久美子(作詞/近田春夫 編曲/近田春夫)
ここでまた近田春夫さん×京平センセーの化学反応が。この曲の素晴らしさは、最後の最後に出てくる「とりあえずニューヨーク!」というコーラス部分です。取ってつけたように、いままでにまったく出てこなかったメロディとリズム展開でフィナーレを迎える、こういうのをワタシは「デザートメロ」と呼んでおります。

 

5.「ドラマティック・レイン」稲垣潤一(作詞/秋元 康 編曲/船山基紀)
あぁ……また京平センセーが好きそうな声! プラスティックで中性的で甘く、ワタシもこんな声だったら京平センセーに曲を書いてください! ってお願いするのに。

 

6.「夏のクラクション」稲垣潤一(作詞/売野雅勇 編曲/井上 鑑)
イントロが流れると同時に目に浮かんでくる、夏の強い日差しや湿った風やアスファルトの蜃気楼なんかが、稲垣潤一さんの甘酸っぱいヴォーカルとともに立ち上がってきます。

 

7.「Romanticが止まらない」C-C-B(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
筒美京平meetsエレクトロには欠かせない右腕的存在、船山基紀さんの素晴らしいアレンジ。そしてヴォーカルの笠 浩二さんのこれまた少年っぽい声で、地声とファルセットのあいだを行き来するギリギリの音域を歌う感じがあどけなくタマラナイ。

 

8.「その後で殺したい」SHOW-YA(作詞/秋元康 編曲/松下 誠)
筒美京平meetsロックバンド。というのはワタシの中ではあまり結びついてなかったのですが、なるほどこうなるのかと納得。寺田恵子ネーサンのヴォーカルが見事に引き立つメロディと展開が素晴らしい。

 

9.「野性の風」今井美樹(作詞/川村真澄 編曲/久石 譲)
洗いざらしの白いシャツにブルージーンズ、真っ赤なルージュ。そんな感じ。

 

10.「HI! HI! HI!」森川由加里(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
何だこのパワーソングは! エキゾでパワーソング、なんかバブルな感じでイイね。ベッド・インとかにカバーしてもらいたい。もうしてるかもしれないけど。

 

11.「夏の二週間」谷村新司(作詞/康 珍化 編曲/船山基紀)
初めて知りました。

 

12.「兆しのシーズン」中島みゆき(作詞/中島みゆき 編曲/瀬尾一三)
大好きな歌。中島みゆきさんのシングルのB面だったみたいです。過去にも「肩幅の未来」(長山洋子)、「美貌の都」(郷ひろみ)と京平センセーとの共作はありますが、これも誰かに提供する予定だったのでしょうか。でも、みゆきさんの蜃気楼のように危うく揺れるボーカルがこの曲にすごく合っていると思います。

 

13.「カナディアンアコーデオン」井上陽水(作詞/井上陽水 編曲/佐藤 準)
楽しいね。

 

14.「強い気持ち・強い愛」小沢健二(作詞/小沢健二 編曲/筒美京平・小沢健二)
筒美京平meets渋谷系。京平センセーは90年代も果敢に新しい音楽と交わっていきます。というよりむしろ、渋谷系と呼ばれるミュージシャンからのリスペクトによるアプローチによるコラボレーションでもありました。クレジットでもわかるように、共同作業により作り出されたサウンドから、お互いへのリスペクトと愛を感じます。青空に突き抜けるような歌。ワタシの青春そのもの!

 

15.「MUST BE HEAVEN」中西圭三(作詞/高見沢俊彦 編曲/小西貴雄)
恐縮ながら初めて聴きました。中西圭三さんの歌は、もちろん色んなヒット曲で耳にしていましたし、歌唱力の素晴らしさは承知でしたが、こんなにも引き込まれ、胸をグっと掴まれた歌唱は久しぶりです。歌い出しからラストへ向かうほどに少しずつ声が擦れていく中、それでも絞り出すように歌い上げる中西圭三さんのヴォーカルの凄みに、つい涙が込み上げていました。

 

16.「恋のルール・新しいルール」ピチカート・ファイヴ(作詞/小西康陽 編曲/小西康陽・福富幸宏)
筒美京平meets渋谷系その2。これもワタシの青春そのもの。小西康陽さんの京平センセーへのリスペクトは様々な作品や仕事を見てもよく分かります。しかしこの曲、かなりピチカートっぽく、アレンジの力が大きいにしても、まるで小西さんが作曲しててもおかしくないくらいピチカートなんですが、京平センセーがピチカートに寄せたのしょうか? 真偽は分かりませんが、京平センセーの呑み込みのよさみたいなものを感じます。

 

17.「Desire」DOUBLE(作詞/SACHIKO 編曲/福富幸宏)
マブいわ。

 

18.「AMBITIOUS JAPAN!」TOKIO(作詞/なかにし礼 編曲/船山基紀)
新幹線に乗れば皆が聞くあのフレーズ、Aメロの出だし部分のメロディやサビの「Be ambitious!」の部分がジングルになってるのでお馴染みかと思います。この曲がリリースされた時、「あぁ、まだまだ京平センセーは現役だ!」と実感した覚えがあります。

 

2枚目「筒美京平自選作品集〜アイドル・クラシックス〜」(ビクター/VICL-64903~4)

【Disc1】
1.「悲しみのアリア」石田ゆり(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
石田ゆりさんはいしだあゆみさんの妹で、作詞家のなかにし礼さんの奥様です。バロック調でメロディもクラシカルで美しく、まさに「アイドル・クラシック」というタイトルの1曲目にふさわしい。

 

2.「17才」南 沙織(作詞/有馬三恵子 編曲/筒美京平)
南 沙織さんがデビューするときに「何が歌えるの?」という質問に「ローズ・ガーデン」と答えたことからこの曲が生まれたという逸話は有名。ワタシはその「ローズ・ガーデン」という歌を知らず「17才」が先だったので、のちに「ローズ・ガーデン」を聴いたときの驚きは大きかった。これはパクリなんて簡単なことではない、非常に高度なサンプリングだと思いました。

 

3.「芽ばえ」麻丘めぐみ(作詞/千家和也 編曲/高田 弘)
特筆すべきは麻丘めぐみさんの高い歌唱力。フレーズ一つ一つに対する表情、声色、そして抑揚などが完璧であることに改めて気づかされました。にしても「足にまめをこさえて」ってスゴい歌詞だわね……。

 

4.「初恋のメロディー」小林麻美(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
一方、小林麻美さんの歌唱力はとてもたどたどしく、むしろ外国人かな? というくらい日本語の発音やフレーズの表情がちぐはぐ。でもそこがアイドルとしての魅力もあるのでしょう。

 

5.「私は忘れない」岡崎友紀(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
岡崎友紀さんのファルセット部分のせつなさと、地声部分の甘酸っぱさがうまくメロディのなかで表現されています。

 

6.「赤い風船」浅田美代子(作詞/安井かずみ 編曲/筒美京平)
子供心に感じる夕暮れの寂しさや怖さみたいなものを感じる曲。歌詞もよく読むとちょっと怖い。

 

7.「娘ごころ」水沢アキ(作詞/山上路夫 編曲/筒美京平)
この曲好きな人多いのよね。しかも男の人に多いの。なんだろ、ファンタジー?

 

8.「わたしの彼は左きき」麻丘めぐみ(作詞/安井かずみ 編曲/筒美京平)
やっぱ歌うまい。

 

9.「恋のインディアン人形」リンリン・ランラン(作詞/さいとう大三 編曲/筒美京平)
外国人によるカタコト日本語歌謡の金字塔。このズンドコくる重めのサウンドもたまりません。

 

10.「ほほにかかる涙」エバ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
70年代アイドル歌謡の大名曲。ゴールデン・ハーフ解散後のエバのソロ曲。アン・ルイス「グッド・バイ・マイ・ラブ」を思わすドリーミーでセンチメンタルなメロディですが、やはり京平センセー、Bメロで展開されるコード進行で歌の景色の縮尺を一気に広げるところはさすがです。

 

11.「ロマンス」岩崎宏美(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
京平センセーにとって岩崎宏美さんは、自分の音楽を表現してくれる歌手の1人として大事にされていたと思われます。京平センセーがディスコ・サウンドに傾倒し、歌謡曲との融合を試みていたころ、それと同時期に現れた彼女の歌唱力や表現力を味方につけて、ディスコ歌謡の量産にパワーを注いでいたように思えます。なので、岩崎宏美さんの70年代のオリジナル曲は、かなりクオリティの高く名曲揃いです。必聴。

 

12.「センチメンタル」岩崎宏美(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
そんなディスコ歌謡の可能性は、ざまざまな試みへと展開されます。岩崎宏美さんの2枚目のLP「ファンタジー」は、当時ラジオDJでも名を馳せていた「糸居五郎」さんを起用し、曲と曲の間をDJで繋げるという斬新なスタイルで発売されました。この「センチメンタル」もLPに収録されています。まんまディスコではなく、ディスコ・サウンドのエッセンスを見事に取り入れた、まさに「ディスコ歌謡」の名曲。

 

13.「木綿のハンカチーフ」太田裕美(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平・萩田光雄)
「日本人ならば知っておくべき歌謡曲10選」みたいなのがあるとすれば、きっとこの曲は入るのであろう、歌謡史に燦然と輝く大名曲。とりあえず若い人たちもこの曲くらいは聴いておきましょう。日本人としての嗜みです。

 

14.「セクシー・バスストップ」浅野ゆう子(作詞/橋本 淳 編曲/高田 弘)
先ほどの岩崎宏美さんの「センチメンタル」のようなディスコ歌謡ではなく、京平センセーが「Jack Diamond」名義で和製ディスコに取り組んでいた頃のインスト作品で、それを橋本 淳センセーの作詞で浅野ゆう子さんが歌ったもの。その後「ハッスル・ジェット」「ムーンライト・タクシー」と京平ディスコ3部作をリリースします。まさにゆう子はディスコ・クイーン。

 

15.「恋のハッスル・ジェット」シェリー(作詞/橋本 淳 編曲/船山基紀)
その浅野ゆう子さんがリリースした「ハッスル・ジェット」と異名同曲「恋のハッスル・ジェット」をシェリーも同時期にリリースしています。シェリーの声って、誰かの声に似てるな~と思ったら、南 沙織に似てますよね。どこか攻撃的な声。

 

16.「6年たったら」五十嵐夕紀(作詞/松任谷由実 編曲/萩田光雄)
70年代アイドル歌謡の名曲のひとつ。なんでしょう。「完璧」としかいいようがない。

 

17.「リップスティック」桜田淳子(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平)
ズンコの「リップスティクス」を歌謡ファンの中では名曲とされていて、もちろんワタシもこの曲は名曲だと思っているのですが、なんかピンと来ない感じもあって、何でだろうな~と思っていたのですが、最近分かったんです。この曲をもし岩崎宏美さんが歌ってたら、ワタシもそう納得出来てたんではないかと。ズンコ、ゴメン。

 

18.「シンデレラ」高見知佳(作詞/橋本 淳 編曲/船山基紀)
あかん! 名曲続きや! これこそホント「完璧」としかいいようがない。起承転結ある展開、そして何より高見知佳さんのヴォーカル表現の巧さ。特に高音部分。

 

19.「日曜日はストレンジャー」石野真子(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
これも歌謡ファンの中で名曲とされています。「仮面つけて生きていいのよ~」のサビメロが泣けるよぉ。でも今のいままで、「仮面つけて生きてい~ろよ~」と歌っていたのだと思ってました。最後の最後で出てくる、ワタシ曰く「デザートメロ」があり、そこで「ごちそうさま!(はぁ~いい曲!)」って気分になります。

 

20.「ROBOT(ロボット)」榊原郁恵(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
出ました、筒美京平meetsテクノ。テクノブームに対しての京平センセーの回答。バート・バカラックであろうとディスコであろうとテクノであろうと、京平センセーにかかれば誰もが美味しくいただける見事な「日本食」へと変わるのです。

 

【Disc2】
1.「センチメンタル・ジャーニー」松本伊代(作詞/湯川れい子 編曲/鷺巣詩郎)
伊代ちゃんのフワフワした歌唱が耳心地良い。すべてのフレーズの語尾が下降カーブを描くクセはむしろ高度な技術であり、聖子のような語尾をシャクり上げる巷のアイドルからは一線を画する歌唱表現方法として新鮮だったのかもしれない。

 

2.「夏色のナンシー 」早見 優(作詞/三浦徳子 編曲/茂木由多加)
近年のポップスは、AメロやBメロやサビなどのブロックごとに意外性のある転調をするというのが流行っていますが、この曲は大きく転調はしていませんがその気配を感じます。という意味でかなり新しい。

 

3.「エスカレーション」河合奈保子(作詞/売野雅勇 編曲/大村雅朗)
先ほどの「夏色のナンシー」のように、イントロや間奏に歌詞の一部を持ってきて、しかもそれをコーラスに歌わせるパターンが流行ってたのか、この頃の歌謡曲に多く見られます。オシャレではありますが、ワタシとしてはバンドとかで歌いたくてもコーラスを2人くらい雇わないと再現できないという辛さがあります。

 

4.「ト・レ・モ・ロ」柏原芳恵(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
かなり高度な楽曲かと。お茶の間を軽く突き放したような、そう簡単には飲み込ませてくれない通好みなメロディですが、京平センセーはこれをヒットさせるつもりで書いていたとすればかなり挑戦的だと思います。

 

5.「卒業」斉藤由貴(作詞/松本 隆 編曲/武部聡志)
みんなこの曲好きよね~。聞き慣れてるからあまり意識しなかったけど、このAメロの符割りとメロディってスゴい。歌詞を当てるためにこういう符割りになったのか、京平センセーがすでにこの符割りを用意していたのか。

 

6.「あなたを・もっと・知りたくて」薬師丸ひろ子(作詞/松本 隆 編曲/武部聡志)
はぁ……名曲! すべてに紗がかかっているようにキラキラしていて、なんとなくクリスタル。1985年、電電公社から民営化しNTTとなったキャンペーン・ソングとして作られたこの曲は、通信によるコミュニケーションがパーソナルでファッショナブルになってゆく新しい時代の幕開けソングともいえる。しかし現代では「あなたを・もっと・知りたくて」ではなく「わたしを・もっと・知ってほしい」になってきてますが……。

 

7.「なんてったってアイドル」小泉今日子(作詞/秋元 康 編曲/鷺巣詩郎)
アイドルのアイドルによる「アイドル」職業宣言。そんなまさかの手法もキョンキョンのキャラクターだからこそ成し得るのです。秋元 康さんってそういうところホントに凄いし、一貫してますね。

 

8.「1986年のマリリン」本田美奈子(作詞/秋元 康 編曲/新川 博)
大胆な衣装とダンス、よく覚えています。

 

9.「地上に降りた天使」水谷麻里(作詞/松本 隆 編曲/大谷和夫)
へぇ〜これ京平センセー選ぶんだ……というのが正直な感想。

 

10.「夜明けのMEW」小泉今日子(作詞/秋元 康 編曲/武部聡志)
武部聡志さんのミニマルなアレンジの素晴らしさよ。イントロはもしかして由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」へのオマージュでしょうか?

 

11.「WAKU WAKUさせて」中山美穂(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
でも船山基紀さんの濃密で豪華なアレンジも好きよ。ミポリンの奔放でじゃじゃ馬な感じが良く出てますね。

 

12.「teardrop」後藤久美子(作詞/来生えつこ 編曲/武部聡志)
名曲ですな。この頃によくあるこういうマイナー調の刹那ソングを総じて音楽的に何て呼べばいいのでしょうか。ヨーロピアンエレクトロ? ニュー・ロマンティーク? ヌーベルバーグ? 誰か教えて。

 

13.「さよならの果実たち」荻野目洋子(作詞/売野雅勇 編曲/武部聡志)
歌、ウマっ。

 

14.「ホンキをだして」酒井法子(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
歌、ウマっ。

 

15.「17才」森高千里(作詞/有馬三恵子 編曲/斉藤英夫)
DISC-1に南 沙織版「17才」と両方入っててお得ね。

 

16.「肩幅の未来」長山洋子(作詞/中島みゆき 編曲/山川恵津子)
京平センセーと中島みゆきさんがタッグを組む珍しい楽曲。割と歌謡よりなメロディなのは、いずれ長山洋子さんが演歌歌手へと転向する予感のようなものか。しかし最後の「……らちもない」ってスゴい歌詞よね。歌詞カード見ないと何言ってるのか正解が分かりませんでした。

 

17.「ときめいて」西田ひかる(作詞/松本 隆 編曲/渡辺 格)
京平センセーの90年代における大名曲。冒頭「ときめいて」の繰り返し部分で幅の広い音域を歌わせたり、サビのベースラインが8分で刻みながら1音ずつ上がっていく感じとか、すんごくときめいてる。西田ひかるもすんごく光ってる。

 

18.「元気!元気!元気!」高橋由美子(作詞/秋元 康 編曲/清水信之)
元気だね。

 

19「TENCAを取ろう! -内田の野望-」内田有紀(作詞/広瀬香美・川咲そら 編曲/松本晃彦)
広瀬香美さんが歌詞を書くと、これホントに京平センセーが書いてる? ってくらいこんなにも広瀬香美節になるのね。ったく恐ろしい女だわ。

 

20.「理由」安倍麻美(作詞/326 編曲/久保田光太郎)
筒美京平meetsドラムンベース。2003年リリースの時点で京平センセー御歳63になろうとしています。まだまだ感性がお若いこと。初めて聴きましたがメッチャいい曲ですね。歌詞は326さん。ワタシが福岡にいた頃、イラストレーターとして地元の古着屋で個展をしている彼によく会っていました。彼は覚えてないでしょうが。

 

3枚目「筒美京平自選作品集〜AOR歌謡〜」(日本コロムビア/COCP-40205~6)

【Disc1】
1.「渚のうわさ」弘田三枝子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
やっとAOR歌謡編に突入。みなさん元気ですか~? まずはAORとは何ぞやということですが、「Adult-oriented Rock」の略で「大人向けのロック」ということらしいです。しかしイマイチ定義が分かりません。とりあえずここでは「渚のうさわ」はAOR歌謡です。

 

2.「さよならのあとで」ジャッキー吉川とブルー・コメッツ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーが職業作曲家として活動をスタートし、グループ・サウンズにも楽曲を多く提供し始めたころのヒット曲。ただしグループ・サウンズというよりはムード歌謡路線の曲で、グループ・サウンズがのちに歌謡曲化していったきっかけになったといわれています。

 

3.ブルー・ライト・ヨコハマ / いしだあゆみ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーの60年代にして最大のヒット曲です。ムードを持ちながらもGSサウンドの影響もあり、そしてポップなメロディといしだあゆみさんのエレガントな雰囲気すべてがこの楽曲の魅力を作り上げているように思います。こちらも「日本人なら知っておくべき歌謡曲10選」のなかに選ばれるでしょう。

 

4.「京都・神戸・銀座」橋 幸夫(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
AORの極み幸夫。

 

5.捧げる愛は / 島倉千代子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
おチヨさんが歌うとどこか演歌の香りがしますが、この曲と「ブルー・ライト・ヨコハマ」はそんなに実は大差はありません。いしだあゆみさんが歌っているのを想像してみてください。すごくしっくりきます。でも、このおチヨさんのコロコロ節の回した歌唱がなんともクセになってしまう、ワタシの大好きな曲です。

 

6.くれないホテル / 西田佐知子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
筒美京平センセーを語る上でマニアが絶対に外せない曲、それがこの「くれないホテル」です。細野晴臣さんが筒美京平センセーにお会いした際に「西田佐知子さんの『くれないホテル』っていい曲ですよね」と尋ねると、「あぁ、あの売れなかった曲ね」と答えたという話は語り草。京平センセーにとって、いい曲は「売れた」かどうかがすべて。ただ、いまの京平センセーだったらどう答えるのでしょうか? 気になります。

 

7.粋なうわさ / ヒデとロザンナ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ヒデロザのどこかヨーロピアンな薫りがするのはやっぱりロザンナの存在によるものでしょうか。Aメロの「粋なうわさをたてられた~」という出だしが何ともオシャレ。ちなみに2番は「粋な別れと言われたね~」です。「言われたね~」って。

 

8.「フランス人のように」佐川満男(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
「フランス人のように」ってイイタイトル。4小節ずつ進行するよくある構成の曲ではなく3小節5小節で進行するトリッキーさ、さらにはAメロが3小節5小節3小節、となってるところもトリッキー。

 

9.「真夜中のボサ・ノバ」ヒデとロザンナ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ジャズ・ボッサの名曲! 近年に由紀さおりさんとピンク・マルティーニの共作「1969」でもカバーされている、マニアには有名な曲でもあります。いま聴いてもオシャレです。

 

10.「ヘッド・ライト」黒沢 明とロス・プリモス(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ザ・ムード歌謡。こういうのも書いちゃうのね。

 

11.「あなたならどうする」いしだあゆみ(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
あなたならどうする? 泣くの? 歩くの? 死んじゃうの? って、いかにもなかにし礼さんらしい歌詞です。

 

12.「雨がやんだら」朝丘雪路(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
朝丘雪路さんの「イェイェイウォウォウ歌唱」を堪能しましょう。

 

13.「絵本の中で」クロディーヌ・ロンジェ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
まったく洋楽に疎いワタシが説明するのもなんですが、クロディーヌ・ロンジェさんというフランスの歌手の方が来日した際、この曲を録音したそうです。ワタシは先にいしだあゆみさんバージョンの「絵本の中で」を聴いていたのですが、こちらがオリジナルだったんですね。京平センセーによるドリーミーなソフトロック。

 

14.「さらば恋人」堺 正章(作詞/北山 修 編曲/筒美京平)
もちろん「さらば恋人」は名曲です。しかしワタシだったら、京平センセーが全曲手がけたアルバム「サウンド・ナウ!」の中のもっといい曲を選びたいと思うのがマニアのどうしようもないところです。

 

15.「真夏の出来事」平山三紀(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
80年代初期に「廃盤ブーム」というのがありまして、中古レコード店でひと昔前の歌謡曲やビジュアルをニッチな感覚で掘り起こし楽しんでいた、いわゆる「歌謡曲再評価」の源流のような時期がありました。その時に必ず人気No.1になっていたのが、この「真夏の出来事」です。現在も再評価における「指標」のようなものになっています。

 

16.「誰も知らない」伊東ゆかり(作詞/岩谷時子 編曲/筒美京平)
すごく歌謡曲的。

 

17.「夜が明けて」坂本スミ子(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
筒美京平meetsフォルクローレ。といってもこの頃フォルクローレが流行っていたかは謎ですが、ソニーの名ディレクターの酒井政利さんによる、ヒットから遠ざかっている歌手をもう一度ヒットさせるための「クリーニング」という手法により生み出された曲。京平センセーと酒井さんのコンビによるアダルト歌謡は名曲多し。

 

18.「自由の鐘」西郷輝彦(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
京平センセーこれ選ぶんだ……。どういう思い入れや観点で選ばれたのか伺ってみたい。尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」みたいな曲。

 

19.「貴方の暗い情熱」高田恭子(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ヤバいす。見事なまでの「カーペンターズ歌謡」。A面の「ラブ」という歌もサイコーですが、やっぱコッチのほうが完成度高いですね。

 

20.「かもめ町 みなと町」五木ひろし(作詞/山口洋子 編曲/筒美京平)
一筆書きのような気持ち良いメロディと軽快なリズムゆえにスーパーキャッチー。

 

【Disc2】
1.「恋の十字路」欧陽菲菲(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
ソウルフルなロッカバラード。さらにソウルフルなフィフィがパワフルに歌うことにより、岐路に立つ女の決意みたいなものをより際立たせます。大名曲。

 

2.「二時から四時の昼下り」朱里エイコ(作詞/なかにし礼 編曲/筒美京平)
2時から4時という絶妙な時間帯で男と女がホテルで密会する。これぞAOR歌謡の真髄。

 

3.「よろしく哀愁」郷ひろみ(作詞/安井かずみ 編曲/森岡賢一郎)
郷ひろみさん×筒美京平さんで生み出された曲はほぼ名曲揃い。京平センセーにとっても郷ひろみさんの存在感やプラスチックな声はお気に入りだったのだと思います。そんな名曲は数あれど、AORという枠で選ぶならこれなのでしょう。

 

4.「飛んでイスタンブール」庄野真代(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
知ってました?この曲、もともとは野口五郎さんに書いた曲だったんですって。それを知ってこの曲をゴローの歌唱で想像してみたら、確かにこれってゴローのために書いたメロディだよね? って分かるくらい、京平センセーはゴローの声や歌唱のどこが魅力的なのかを熟知していることがよく分かります。

 

5.「銀河特急」松崎しげる(作詞/たかたかし 編曲/筒美京平)
筒美京平meetsフィリー・ソウル。良き。

 

6.「ぬくもり」細川たかし(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
サウンド的にフィリー・ソウルへ強引に持っていこうとするが、もう細川たかしさんの声がどう頑張っても演歌から逸脱出来ない感じがすごいクロスオーバー感。

 

7.「魅せられて」ジュディ・オング(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
言わずと知れた、レコード大賞受賞曲。70年代における京平センセーの最大のヒット曲にして、最後のアレンジ仕事でもあり最高峰と自ら言わしめた曲。この曲も酒井政利プロデューサーとの共同作業による「クリーニング」だったということも加えておきます。

 

8.「来夢来人」小柳ルミ子(作詞/岡田冨美子 編曲/萩田光雄)
京平センセーは高低差のある音階をよく書かれるのですが、この「来夢来人」は京平センセーの曲のなかでもかなり超難解です。歌いこなすルミ子の歌唱力の凄さよ。

 

9.「スニーカーぶる〜す」近藤真彦(作詞/松本 隆 編曲/馬飼野康二)
AORかなぁ~?

 

10.「愛しつづけるボレロ」五木ひろし(作詞/阿久 悠 編曲/船山基紀)
演歌とアーバンの融合。

 

11.「普通のラブ・ソング」水谷 豊(作詞/松本 隆 編曲/石川鷹彦)
良き。

 

12.「モロッコ」森 進一(作詞/松本 隆 編曲/井上 鑑)
モロッコ。

 

13.「こころ美人」布施 明(作詞/なかにし礼 編曲/前田憲男)
前田憲男センセーアレンジによる豪華なショータイムのような大人のラブソング。タキシードを着て歌う布施明さんが目に浮かびます。でも歌詞がショッキング!

 

14.「君だけに」少年隊(作詞/康 珍化 編曲/馬飼野康二)
少年隊にも数多く提供されてる京平センセーですが、それまでずっとアップテンポのダンスナンバーでしたが、ここでグッと大人っぽくスローなバラードを……ということで制作されたこの曲。宇宙の渚をたゆたうような壮大な歌。

 

15.「JOY」石井明美(作詞/ちあき哲也 編曲/戸塚 修)
付き合っていた、もしくは結婚していた男に別の女が出来て捨てられる……というのはよくある歌の設定ですが、ここでは女のほうが少し大人で、どこか不器用で無邪気で小心者な男に対し「自由に生きていいのよ」と、少し強がりながら呼びかける「JOY」という言葉。別れの悲しみを笑顔に変える大人のラブソング。超・名曲。

 

16.「抱きしめてTONIGHT」田原俊彦(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
よく出来ているとしか言いようがありません。

 

17.「とまどい小夜曲(セレナーデ)」高橋真梨子(作詞/松本 隆 編曲/萩田光雄)
いい!

 

18.「タイムマシーン」藤井フミヤ(作詞/藤井フミヤ 編曲/KUDO・辻剛)
ふぅ~。

 

19.「ありがとう おかげさん」都はるみ(作詞/きたやまおさむ 編曲/鷺巣詩郎)
みなさんが読んでくれたおかげでここまで来ました。ありがとう。

 

20.「ビヨンド」平山みき(作詞/橋本 淳 編曲/涌井啓一)
とうとう最後です。京平センセーの秘蔵っ子といわれた平山みきさん。このクレジットを見てください。橋本 淳さん×筒美京平さんで今でもずっと一緒に音楽制作をしているということが何より嬉しいことです。「ビヨンド」は2013年リリース。ワタシのディレクターとミキティ担当のディレクターが同じで、この曲が生まれるまでの行程をそばで見ていました。2013年版の京平センセーが取り込んだ音楽はまぎれもなく「ダフト・パンク」だと思われます。そんなサウンドに全然メロディが負けてない。そして、今でもこんなに最先端なサウンドで新曲をリリースできるミキティのPOPセンスを見初めた京平センセーは、やはり日本が誇るPOPマエストロなのです。

 

終わった! やっと終わった! 半ば強引な部分もあったけど120曲、全曲レビューやりきりました! 初回からなんでこんなに頑張ってんだろうワタシ。別に全曲じゃなくてイイですよって編集の方に言われてたのに、原稿料が上がるわけでもないのに、全部レビューしちゃいました。ここまで懲りずに読んでくださった皆様、本当にありがとございました!

 

今回は特別に3枚分をレビューしましたが、おそらく次回は1枚10曲程度のアルバムのレビューで、こんなに毎回長くはなりませんのでご心配なく。次回の「ギャラン堂」和恵の推薦盤をどうぞお楽しみに! (もう「ギャラン堂」ってことさえ長すぎて忘れてたわ……)

 

撮影協力:天盛堂(亀戸)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットの1st ALBUM「化粧室」が2018年4月25日に発売決定!これまでのシングルに加え、“星屑スキャットを見初めた男”リリー・フランキー作詞「新宿シャンソン」を初収録するなどバラエティに富んだ作品に仕上がっています。どうぞお聴き逃しなく!

【収録曲】

DISC1

1.Knock Me In The Middle Of The Night
2.愛のミスタッチ
3.ANIMALIZER (2018 new mix)
4.半蔵門シェリ
5.波の数だけターコイズ
6.降水確率
7.星屑スキャットのテーマ (2018 new mix)
8.マグネット・ジョーに気をつけろ (シングル・バージョン)
9.Interlude – Cosmetic
10.コスメティック・サイレン
11.REMEMBER THE NIGHT (2018 new mix)
12.HANA-MICHI
13.ご乱心 (2018 extended mix) ※Bonus Track

DISC2

1.新宿シャンソン

 

また、アルバムの発売を記念したライブやイベントも多数開催されます。最新情報は日本コロムビアHPの星屑スキャット インフォメーションをチェックしてみて下さい。

●2018/04/25(水) タワーレコード新宿店7Fイベントスペース 17:30〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念インストアイベント ミニライブ&サイン会」

●2018/04/25(水) HMVrecordshop新宿ALTAイベントスペース 19:30〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/04/25(水) 新宿2丁目AiSOTOPE LOUNGE 開場21:00 開演21:30

「星屑スキャット LIVE2018『化粧室』リリースパーティー」 料金:全席自由席¥3500(ドリンク代¥500込)

●2018/04/28(土) 三井アウトレットパーク大阪鶴見 3F プラザステージ 14:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/04/28(土) あべのキューズモール3Fスカイコート 17:00〜

「アルバム『化粧室』発売記念イベント ミニライブ&特典会」

●2018/04/29(日) アリオ西新井店 1階 イベント広場 16:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/05/05(土) 二子玉川 蔦屋家電 2階 ラウンジ 開場18:30 開演19:00

【蔦屋家電3周年イベント】星屑スキャットが選曲した歌謡曲歌詞に情景を重ねるTALK&LIVE with リリックスピーカー

●2018/06/02(土) イオン八事店4階G.Gモール イベントコーナー 13:00〜 / 15:00〜

「星屑スキャット『化粧室』発売記念ミニライブ&サイン会」

●2018/06/09(土)~10(日) コットンクラブ(丸の内)

「星屑スキャット LIVE2018 化粧室で逢いましょう」