アニメーション映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が2021年3月8日(月)より全国公開されました。前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」から8年以上を経ての完結編とあって多くのファンからの注目を集め、初日観客動員数53万9623人、初日興行収入は8億277万4200円と、大ヒットを予感させるスタートを切りました。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』異例の月曜公開となりましたが、お陰様で多くの方に足を運んでいただき、初日興行収入8億277万4200円、初日観客動員数53万9623人と非常に良いスタートを切ることができました。皆様には感染対策などお願いばかりで恐縮ですが、本当にありがとうございます。
— 株式会社カラー (@khara_inc) March 9, 2021
首都圏では3月7日(日)までの予定だった緊急事態宣言が延長され、劇場上映が20時までと制限される状況下も、リピーターが続出し始めている「シン・エヴァ」。今回は都内で「公開初日に3回観た」という長年の「エヴァ」ファンの声とともに、「IMAX版」や「4DX版」も同時公開となった本作を繰り返し楽しむポイントを紹介します。
※本稿では「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の内容に関するネタバレは極力避けていますが、作品未見の方は劇場鑑賞後の閲覧をおすすめします。
なぜ、公開初日に3回も観る?
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、2007年公開の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」から始まった“新劇場版”シリーズの4作目にあたる完結編。かつて1995~96年にかけ放送されたTVアニメに端を発する「新世紀エヴァンゲリオン」とは異なるストーリー展開となっており、その結末がどうなるかは公開当日になるまで誰もわかりませんでした。
こうなればファンとしては、自身で見届けるまで展開のネタバレを知りたくないのが心情。SNSを中心に不用意なネタバレを警戒するムードが高まりました。本作を8日(月)に3回観たという、GetNavi web編集部の玉造氏(30代男性)も例に漏れず「初日のネタバレが恐いため、まず可能な限りの最速回を見ることは最初に決めていました」と話します。
しかし「シン・エヴァ」は上映時間155分と、アニメ―ション映画としては異例の超長尺作品。さらに公開初日は週末ではなく、日中に観に行くハードルが高い月曜日です。緊急事態宣言の影響でレイトショーができず、上映回数の限りもある都内で、なぜ初日から3回も観ることにしたのでしょうか。この日のために急きょ有給休暇を取得したという玉造氏はこう続けました。
「エヴァンゲリオンの“終結”が受け入れられないかもと思い、あらかじめ可能な限りの回数を1日に詰め込むことにしたんです。最速の回を観たら、その朝から丸1日『シン・エヴァ』に浸りたくなるのも想像に難くなく、すぐに次の回を予約することを考えました」
上映方式の多さもリピートの原動力に
「エヴァ」への強烈な思い入れゆえの複数回リピート。しかし、いまどきは「シン・エヴァ」クラスの大作となると、そこまでディープなファンでなくても何度でも足を運んで観たくなる仕掛けが用意されています。壁一面を使った巨大スクリーンなどが特徴の「IMAX」、映画のシチュエーションに合わせ座席可動、煙、水しぶきなどで演出する「4DX」「MX4D」などの多様な上映方式がそれです。
ユナイテッド・シネマとしまえん(練馬区)に終日通ったという玉造氏にとってもこの点は重要で、初日の3回はいずれも異なる上映方式で観たとのこと。それぞれの詳細とともに感想を聞きました。
1回目(7:15~)IMAX上映
スクリーン8(収容人数374名)/音響:IMAXサウンド/座席位置:前方ブロック・最後列(スクリーン左寄り)
「開始冒頭10分(派手なアクションシーン)の音響の立体感が段違いでした。上下・奥行き感を見せつつダイナミックな動きがある冒頭シーンはIMAXで観てこそ。中盤以降にアクションが極まる怒涛のシーンも、IMAXで観るのが最も満足度が高かったと思います。ちなみにIMAX初回上映では、終了後すぐに観客席で拍手が起きました」
2回目(11:20~)通常版上映
スクリーン9(収容人数185名)/音響:5.1ch/座席位置:中央ブロック・ど真ん中
「IMAXの後に(スペックとしては劣る)通常版をあえて観てみましたが、画面が小さく、音もものたりない、というのが率直な印象。ただ、その感覚からオリジナルのテレビ版(『新世紀エヴァンゲリオン』)を家の小さなブラウン管テレビで観た、初めてのエヴァ体験を思い出したんです。そういう意味では、昔からのファンには通常版の鑑賞も推したい」
3回目(16:30~)4DX版上映
スクリーン4(収容人数104名)/音響:5.1ch/座席位置:中央ブロック・やや左寄り
「アクションシーンに合わせた発光のタイミングが良く、特に中盤以降のアクションシーンに関しては4DXが一番興奮しました。気になっていたシートの揺れ具合については、自分史上最も揺れた思い出のある『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』4DX版に比べたら、全編通して控えめで程よいと感じました」
ちなみに、こうして1日に3つの上映をイッキ見した玉造氏に、あえて「おすすめの上映方式はどれ?」という質問をぶつけてみると……「端的にどの方式がいい、と言い切るのは難しいです。TVアニメ版を観た時の初期衝動を思い出させてくれた通常上映も捨てがたい。最初はなるべくフラットな環境で観て、特別な鑑賞体験になる4DX版は3回目以降のリピートに取っておくとよいのでは」と冷静な回答。必ずしも巨大なスクリーンで観た場合でなくても別の楽しさが見出せるのは愛ゆえという感じですね。
“繰り返し”に意義のある作品
約2時間半、上映前の予告編などを含めると3時間近い長さも注目された「シン・エヴァ」。これを3連続で観る体力的な懸念については、「ずっと観ていてダレる、とか、長すぎる! という辛さは不思議にもまったくありませんでした」と語る玉造氏。しかしその上で、本作鑑賞において実は最大のポイントとされているのが「トイレ問題」。作品のネタバレ自粛ムードに包まれるSNSなどにおいても、ここだけは多くの体験者から注意喚起(?)がなされていたほど。
体力には自信があったという玉造氏も、「実は2回目の鑑賞時、中盤から尿意を感じるようになってしまい、しんどかったです。やむなくトイレ休憩を取ることにしたのですが、スクリーン真ん中の極上の席を取っていたので、途中離席から戻るのは(周囲からの目もあり)かなり難しかった」と告白。観に行く回数は問わず、やはりトイレは上映前に必ず済ませておきたいですね……。
最後に、25年来のエヴァファンが「シン・エヴァ」を初日からいきなり3連続で観て得た発見について、玉造氏はこう語りました。
「正直、この日を迎えたくなかったかも……とおそるおそる観に来ましたが、本当に“生きててよかった”という思いだし、終わってすぐにTVシリーズが見直したくなりました。過去作を見返す流れも込みで、繰り返し観ることそのものが『シン・エヴァ』鑑賞のスタイルなのではないかとも思います」
ちなみに蛇足ながら、筆者も8日(月)の初回上映から鑑賞したひとり。同じく90年代からの「エヴァ」ファンとして十二分に楽しませてもらいました。さらに今回の取材に触発されるように、現在最新最高の設備のひとつといわれる池袋・グランドシネマサンシャイン「IMAXレーザーGT版」の特等席をとってさっそく2度目も鑑賞。初回は、前作「:Q」から8年4か月間の空白を埋める圧倒的な情報量に満ち足りた思いも、感想をうまく言語化できませんでした。しかし2回目を観てみると、その印象が「かなりすばらしい!」に変わったと感じます。
「エヴァ」に思い入れの深い人は、おそらく本稿で薦めるまでもなく複数回観る計画を立てていると思いますが、あらためて何度も観る価値のある作品となった「シン・エヴァ」。いろいろな上映方式を試しつつ楽しみましょう。
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