24時間365日、最新の気象・防災情報を発信し続ける「ウェザーニュースLiVE」。リアルタイムのお天気ニュースのみならず、生活に役立つ情報なども提供していることから、終日楽しんでいるファンも多い。この話題のコンテンツの中で抜群の人気を誇るのが檜山沙耶キャスター。今年1月には初のエッセイを上梓するなど、さらなる話題を集めている。そこで、GetNavi webでは彼女の魅力に迫るべくロングインタビューを敢行。夢だった気象キャスターへの想いや番組制作の裏側、そして趣味の話など、余すことなくお話をうかがいました!
【檜山沙耶さんの撮りおろし写真】
視聴者に寄り添いつつ、誰かを傷つける言葉は絶対に使わないことをいつも意識しています
──「ウェザーニュースLiVE」で番組を担当するようになって、今年10月で5年目を迎えます。これまでを振り返るとどのような思いですか?
檜山 デビュー当時はまったく余裕がなかったです(苦笑)。でも、ようやく慣れてきたかなと感じるようにはなりました。とはいえ、これから後輩もどんどん増えていく立場になりますから、まだまだ気を引き締めていかねば! と思っています。
──番組は主に3時間の生配信ですが、緊張されることもなくなったのでしょうか?
檜山 少しずつですが、穏やかな天候の日はスムーズに進行ができるようになった気がします。でも、やはり梅雨や台風など雨が多い時期は気持ちが緩まないように気をつけています。まとまった雨が降り、それに伴った災害が発生する恐れもありますから、常に緊張感を持って臨むということを心がけています。
──では、改めての質問になりますが、檜山さんがウェザーニュースのキャスターになろうと思ったきっかけを教えてください。
檜山 私は出身が茨城県で、学生時代に東日本大震災を経験しました。その時、“いつか防災に役立てる仕事をしたい”と思ったのが最初でした。また、当時から携帯電話を使ってウェザーニュースの情報をよく見ていまして。災害時は停電などでテレビが見られなくなってしまう一方で、ネットは電波さえ飛んでいれば最新の状況を確認することができる。そうした利便性に魅力を感じたことも、ウェザーニュースのキャスターを目指すきっかけになりました。ただ、大学卒業後、会計事務所に勤めていた時期もあったんです。それでもやはり夢を諦めきれず、その後キャスター募集のオーディションを経て、ご縁があり、ウェザーニューズで働かせていただくことになりました。
──ウェザーニューズに入社する以前から気象に関する勉強はされていたんですか?
檜山 子どもの頃から空の天気を見るのは大好きだったのですが、改めてしっかりとした知識を身につけようと、働きながら、気象予報士になるための専門学校のような場所に通っていました。私はもともと理系ではないので、なかなかついていくのが大変でしたね。ただ、社内にも文系で気象予報士の資格を取得されている方がたくさんいらっしゃいますので、それを励みに今も頑張っています。
──そうなんですね。気象予報士になるためには、教養以外にどんな素養が必要だと感じていますか?
檜山 私もまだ勉強中の身ですが、予報士の方によく言われるのが、「天気は場所が1kmずれるだけでも予報が変わるから、丁寧に細かく見ていかないといけない」ということです。それを考えると、真面目さというのが大事なってくるのかなと思います。……なんてことを言うと、“私は真面目な性格です”と自分で言っているみたいで、ちょっと照れちゃいますけど(笑)。
──真面目さもですが、地道で細かい作業が苦にならない人が向いているのかもしれないですね。
檜山 そうです、そうです! フォロー、ありがとうございます(笑)。私もオタク気質なので、とことん追求するほうですし。上司にはよく、「オタク気質じゃなく、オタクでしょ」って訂正されるんですが(笑)、気象についても勉強すればするほど、どんどんとのめり込んでいきましたね。
──檜山さんのアニメ・マンガ好きは多くの方に知られていますもんね(笑)。また、キャスターのお仕事についてもお聞きしたいのですが、普段、番組前にどのような準備をされているんですか?
檜山 担当する時間帯によって少しずつ内容も変わるのですが、主に自分で原稿を作成したり、気象予報士の方と一緒にその日の天気の様子を把握していくという作業をしています。
──原稿を作成しても、天気は刻一刻と変化していくので大変そうですね。
檜山 そうなんです。ですから、番組中も変わりゆく天気図や外の様子を映像で見て、場合によっては瞬時に原稿を変えていき、どこよりも新しい情報を自分の言葉で伝えるように努めています。また、生配信ということで視聴者の皆さんからコメントをいただいたり、天気に関するお写真を送ってもらうことも多いので、そうした双方向の番組であるということも意識して進行していますね。
──近年はテレワークが増えたことで、視聴者数も増えたのではないでしょうか?
檜山 「仕事をしながら見ています」というコメントが多くなりました。それに、昨年あたりから海外の方も多く見てくださっているようで、英語で書かれたメッセージもたくさん見かけるようになりましたね。
──それは何かきっかけがあったのでしょうか?
檜山 昨年、地震速報が入った時の私の対応を切り抜いた動画が話題になりまして。それが海外の方の目にもとまったようです。
──確かにあの時の対応は見ていて印象的でした。
檜山 ありがとうございます。これは経験なのかもしれませんが、地震などの速報が入った時は、自分の中でもすぐに頭が切り替わるようになってきているんです。テレビのチャンネルを替えるように思考がパッと別のベクトルに向かう感じと言いますか。それは、これまで先輩方の姿を見て学んだことでもありますし、日々、気持ちのスイッチを切り替える訓練をしていますので、そうした努力が実ったようで、皆さんからいただいたお褒めのコメントを見て嬉しく思いましたね。
以前よりも一日一日に感謝し、大事に生きていこうと思うようになりました
──キャスターになったことで日々の生活に変化を感じることはありますか?
檜山 七十二候に触れることによって、以前よりも一日一日に感謝し、大事に生きていこうと思うようになりましたね。そのことで生活にもメリハリが生まれましたし、ささやかな幸せを楽しみたいという意識も生まれました。
──素敵ですね。今はどんなことにささやかな楽しみを感じているのでしょう?
檜山 夜風にあたることです。今の時期だと風も涼しくなってきているので、本当に気持ちよくって。……という話をすると、これまた上司に「なんだかアヤカシみたいになってきているね」と言われるんです。「どんどん、人間から離れていってるみたいだ」って(笑)。
──(笑)。一番好きな季節も今ぐらいの時期ですか?
檜山 季節で一番を選ぶなら秋ですね。「食欲の秋」「読書の秋」「芸術の秋」ということで。
──そっちの理由なんですね。気候が好きとかではなく。
檜山 もちろん、秋の天候も大好きです!(笑) 過ごしやすくて、穏やかな気持ちにもなれますから。
──では、そんな檜山さんにとっての「○○の秋」と言えば?
檜山 えー、迷いますね。「趣味の秋」でしょうか。……いや、趣味には年中没頭しているのでちょっと違いますね(笑)。あ、「芸術の秋」です! 美術館に行くのが昔から大好きなんです。気持ちが落ち着きますし、感受性が豊かになる気もするので、時間がある時は今でもよく行きます。意外と番組の原稿書きとか、配信中のコメントなどに活かされることもあるんですよ。
──それは例えば?
檜山 少し前にフェルメール展に行ったのですが、その時、声優の梅原裕一郎さんが音声ガイドのナレーションをされていまして。……いや、決して梅原さんが目的だったわけではないのですが(笑)、そのガイドで流れていた絵画解説の表現であったり、言い回しがどれも素敵だったんです。日本語には美しい言葉使いや比喩がたくさんありますので、そうしたものを自分も意識して使えるようになりたいなと思っているんです。
──なるほど。言葉を使った表現という意味では、今年1月に初のフォトエッセイ『ブルーモーメント』を上梓されましたね。周囲の反響はいかがでしたか?
檜山 多くの方から「読んだよ」と言っていただけて嬉しかったです。執筆中もたくさん支えてくれた家族からは「頑張ったね!」と「ハラハラしていたよー」という2つの言葉を頂きました。私が頑張って書いていたのを知っていたので、果たして最後までやり遂げられるのか心配だったようです(笑)。
──文体に檜山さんの優しい人柄が出ていて、読んでいてすごく心がほっこりしました。
檜山 ありがとうございます! 番組の時も同じ思いなのですが、視聴者や読者に寄り添うことを意識しました。また、思いやりを持って、決して相手を傷つけるような言葉は使わないということも大事にして。そのうえで、読んでくださる方々の生活が少しでも穏やかになるようなきっかけを与えられればいいなという思いで書かせていただきました。
──フォトエッセイを出されたことで、視聴者も増えたのでは?
檜山 本屋さんなどでたまたまフォトエッセイを見かけて、それがきっかけで番組をご覧になってくださる方もいらっしゃったようです。そうした出会いがあったのも嬉しかったですね。また、このフォトエッセイが影響しているのかは分かりませんが、少し前に映画館で話しかけていただいたということもありました。マスクをしていましたし、私の声を聞いたわけでもないはずなのに、よく気づいたなと驚きましたね。
──目立つ行動をしていたというわけでもなく?
檜山 ないです、ないです!(笑) ……あ、ひょっとすると『呪術廻戦』を観に行っていたので、もしやと思われたのかもしれません。私が『呪術廻戦』の大ファンで、何度も劇場に足を運んでいるのをきっと皆さんもご存知なので。
──そんなに何度も観に行ってるんですか?
檜山 今のところ7回行っています(笑)。最初の頃は1人でも多くの方にあの素晴らしさを知ってもらいたくて友人たちと観に行っていたんですが、あまりにも誘い過ぎて、この前はついに「もう行かない」と言われました(笑)。昔から好きなアニメ映画は何度か観に行くほうではあるんですが、7回は私も初めてです。
──それはすごいですね。でも、そんなに何度も観ていると、注目するポイントも変わってきたりしますか?
檜山 変わりますね。雨が降っているシーンで水たまりができていると、“これは相当な雨量だったんだな”と考えたり(笑)。職業柄、背景の天気はどうしても気になります。日本のアニメは背景画描写も見事ですし、季節を感じるものも多いので、よく注目して見ちゃいます。
番組中に笑いが止まらなくなる時は地獄を想像しています(笑)
──話を「ウェザーニュースLiVE」に戻しますが、キャスターの皆さんのユニークな瞬間を切り取った切り抜き動画も盛り上がっていますね。
檜山 はい。そうした形で番組の存在が多くの方に広まっていくのも、すごくありがたいなと思っています。以前から番組をご覧になられている方々に感謝の気持ちがあるのはもちろんのこと、新しい番組のファンが増えていくことも大きな励みになりますし。本当に皆さんのお力に支えられているなと実感しています。
──切り抜き動画を見ていると、天気の情報番組なのに笑いが絶えない場面がたくさんあるということに新鮮さを感じます。
檜山 きっと、何も知らずにご覧になったか方は驚きますよね(笑)。でもそれは、天候が穏やかな日だからこそできることなんです。それに3時間という長い時間を担当しているので、時には穏やかなひとときを視聴者と共有することでお互いリラックスできる。そこも「ウェザーニュースLiVE」のよさだなと感じていますね。ただ、たまに本当に笑いが止まらなくなる時がありまして。そういう瞬間は本当に大変です(笑)。
──その場合はどのように気持ちを切り替えていらっしゃるんですか?
檜山 “これ以上、笑っちゃいけない!”と思いながら、地獄を想像しています(笑)。
──地獄を?(笑)
檜山 “ここで笑ったら、おしまいだぞ!”“ペナルティがくだされるぞ!”って(笑)。実際にはそんなペナルティなんてものは一切ないんですよ。でも、自分の中でそれぐらいのことを考えないと気持ちが切り替わらないんです。
──笑いの感情をコントロールするのは難しそうですもんね。では最後に、これから初めて番組をご覧になる方に向けて、檜山さんが感じる「ウェザーニュースLiVE」の魅力を改めて教えていただけますか?
檜山 番組内では全国の天気をお届けしていますし、各地にいる視聴者から「このエリアは雨が降っていますよ」とリアルタイムの空の様子をお伝えできる。そこが大きな強みだなと思っています。また、私がウェザーニュースのキャスターを目指すきっかけにもなったように、停電になった時でもウェブで見られるのも良さのひとつ。特に津波や台風、地震の情報などは常に新しい状況をお伝えしなければいけませんし、それを配信でお届けできるのも「ウェザーニュースLiVE」ならではだと感じていますので、ぜひ活用していただければと思います。
《檜山キャスターに12の質問!》
Q01.天気を表す好きな言葉を1つ教えてください!
檜山 「碧羅の天」。晴れ渡った青空という意味です。『鬼滅の刃』を読んで知った言葉で、今とっさに頭に浮かんだのがこれでした(笑)。
Q02.梅雨の時期のオフの過ごし方は?
檜山 ずーっとおうちにいて、本を読んだり、好きなアニメを観たりしています。雨じゃなくても、完全オフの日はそんなに変わらないですね(笑)。休日はあまり予定を立てず、思いついたことをして過ごすのが好きです。
Q03.ウェザーニュースのアプリで特におすすめの機能は?
檜山 雨雲レーダー。個人的にも天気を確認する時によく使っています。これからの夏の季節は大気の状態が不安定になることが多く、たとえ晴れていてもゲリラ豪雨が発生する場合がありますので、皆さんも雨雲の流れを確認する際にぜひご活用ください。
Q04.お天気キャスターをしていて驚いた天気や空の現象は?
檜山 ちょうど今ぐらいの時期に北海道の道東あたりで、西風フェーン現象で気温が一気に上昇することがあるんです。すると、関東はおろか、状況によっては沖縄の気温を超えることもあって。初めて知った時はビックリしました。
Q05.地元・茨城のおすすめの観光スポットは?
檜山 今だと国営ひたち海浜公園のネモフィラですね。ものすごくきれいなんです。見頃は5月中旬頃までなので、まだ間に合うかなぁ。
Q06.朝起きて、最初にすることは?
檜山 やはり天気のチェックです! お布団から出て、“今日は暑いな”とか、“まだ肌寒いな”というところから始まり、次に窓の外を見て雲の量を確認しています。
Q07.天気に関する知識以外で仕事のために普段インプットしていることは?
檜山 本をたくさん読むようにしていますね。あとは、小説を朗読しているラジオ番組をよく聞いたりして、自分の中に“言葉”を落とし込むようにしています。もちろん、そこで得た表現などを真似するわけではないのですが、文章の組み立て方や語感のセンスを身に着けられればなと思っています。
Q08.本好きとのことですが、おすすめの一冊は?
檜山 原田マハさんの作品が大好きで、中でも『本日は、お日柄もよく』は何度も読みました。言葉で感動させるって素敵だなあと、読むたびに思わされます。
Q09.では、最近はまっているマンガは?
檜山 えー……たくさんありすぎて、どうしましょ(笑)。とっておきの一冊を選ぶなら『永世乙女の戦い方』。女流棋士を題材にした作品で、一見おっとりとした女性たちが勝負の中では神経を研ぎ澄ませ、戦っていく姿がものすごくかっこいいんです。作者のくずしろ先生はもともと女性の描き方がとても美しいのですが、ここぞという時に見せる底力や戦う上でのマインドの表現が実に見事で。いつもこの作品を読みながら、“私もお仕事を頑張ろう!”とパワーをもらっています。
Q10.コスプレも趣味だそうですが、今挑戦してみたいキャラクターは?
檜山 これまたたくさんありすぎますね(笑)。一番は『SPY×FAMILY』のヨル・フォージャーさん。あ〜、でも『ローゼンメイデン』の水銀燈さんも捨てがたいですし、『呪術廻戦』の狗巻(棘)くんもやりたい! ……すみません、どんどん出てきます(笑)。ちなみに、昨年は幕張でヴァイオレットちゃん(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』)をやりました。
Q11.アニメの聖地巡礼をしたことはありますか?
檜山 もちろんです!! 印象的だったのは『ARIA』の舞台になっているイタリア ヴェネツィアです。どこを眺めても絵画のようでした。実際にゴンドラに乗り、水先案内人の気持ちになれました。そして、『花咲くいろは』の舞台になっている石川県の湯涌温泉。景観が本当に素敵でした。また、私の地元・茨城の大洗も『ガールズ&パンツァー』の聖地として負けていませんよ! ……さきほどから私、アニメやマンガの話になるとものすごくしゃべってますが、大丈夫ですか?(笑)
Q12.最後に、GetNavi webということで愛用しているガジェットを教えてください。
檜山 AirPods Proをずっと使っています。通勤の時もですが、お休みの日でもよく使っていますね。ノイズキャンセリング機能があり、没入感があるので、街中でカフェに入って集中して作業をしたい時も重宝しています。
「ウェザーニュース」HP https://weathernews.jp/
「ウェザーニュース」では現在キャスターを募集中! 詳しくはHPをチェック! https://weathernews.jp/audition/
撮影/小澤正朗 取材・文/倉田モトキ