ファッション
2018/7/20 16:00

ほぼ日本初の「太った人」向けTシャツ! 腹の出っ張りを被う「POCHA BODY」とは?

夏場は薄着で、体型が露呈してしまうことに悩むのは女性も男性も同じです。特に男性は、厚生労働省の平成28年度の発表によれば、約30.2%もの人がいわゆる「肥満者」に分類され、この密かな悩みを持つ人も少なくないはずです。そんな人たちを救うべく開発されたのがB.V.D.による、その名もPOCHA BODYというTシャツ。発売元の富士紡では特許も取るという力の入れようですが、どんな製品なのでしょうか? 富士紡の竹下高志さんに聞きました。

 

↑富士紡ホールディングス・竹下高志さん。POCHA BODYの構造について熟知されています

 

 

無視できなかった「太った人」向け市場

――これまで男性の太った方向けの商品と言うと、サカゼンなどの「体の大きい人」専門店以外ではなかなか見ることができませんでした。

 

竹下高志さん(以下:竹下) そうですよね。ところが、厚生労働省が平成28年に出した国民健康栄養調査のデータによると、30.2%が肥満者に分類されていて、さらにこの数字はこれから先も年々増加傾向にあるようです。

 

食生活が豊かになったことと、反面、身体を動かさずネットなどで様々なことができるようになったことなどの背景があり、身体の大きな方、肥満型の方に向けた商品開発は当社にとっても無視することのできないものでした。

 

その理由から数年前より「なんとかお腹の大きな男性の方にとってのTシャツを作ることができないか」と考え、開発したのがPOCHA BODYです。販売は約1年半前からでしたが、おかげさまで好評を得ています。

 

――Tシャツとパンツの2ラインがあり、特にTシャツのほうは特許も取られたということですが、構造はどうなっているんですか?

 

竹下 ちょうどお腹が出る裾に向かってフレア状の構造になっており、Aライン(上部から裾に向けて広がりのあるカタチ)を生み出しています。

 

お腹が出ている方は、通常のTシャツだとどうしても寸足らずになってしまうのですが、その寸足らずを解消するために、こういった構造になっているんですね。

 

――これはインナーとして考えれば良いですか?

 

竹下 はい。基本的にはインナーとしての開発です。

 

POCHA BODYは横にも縦にも伸びる特殊な編み方をしています。一般的にインナーとして使われる肌着は、横のみに伸縮するものが多いのですが、締め付け感を感じさせないうえ、吸水速乾機能や抗菌防臭なども持たせているので、着心地も良いはずと自負しています。

 

↑太った方の夏の悩みを解消したPOCHA BODYの構造。写真では伝わりにくいかもしれないですが、確かにお腹にあたる部分がゆったりしています

 

↑通常の白いTシャツの下に、POCHA BODYを置いた写真。前後左右とも、お腹のラインをすっぽり被う構造であることがわかります

 

 

「太った人」の人気の高まりを受けての開発!

――もともとB.V.D.は、アメリカを発祥としたストイックでオシャレな肌着を作られていました。POCHA BODYもアメリカ発だったのでしょうか?

 

竹下 いえ。これは日本でB.V.D.のライセンスを取得している富士紡による独自の商品です。

 

もともとB.V.D.は、1876年、アメリカ・ニューヨークで生まれたインナーウェアのブランドで、創業当時のコンセプトは「ヘビー・デューティ」。つまり、頑丈に作られていて、同様の商品と比べてヨレが少ないことが特徴でした。

 

日本には1909年に商標登録がされていましたが、1976年に富士紡がライセンス生産するようになりました。

 

――かつて若者から絶大な支持を得た萩原健一さんが名ドラマ「傷だらけの天使」で着ていましたよね。

 

竹下 そうです。あのドラマに影響を受けた芸能人の方が「下着はB.V.D.しか着ない」と愛用されているという話も耳にします。

 

――そういったブランド力があるなかでの、このPOCHA BODYの開発。足踏みをされるようなことはなかったんですか?

 

竹下 まったくなかったですね。まず、女性向けラインでは、こういった「プラスサイズ」の商品が根強かったことと、販促プロモーションにおいても、こういったモデルさんを起用してのものが増えました。渡辺直美さんもそうだと思いますが、ぽっちゃりした方の人気が高まっている時代です。

 

こういった経緯があったもので、躊躇はなかったですし、前述の技術面での自負もありましたので、他社に先駆けて開発、販売に至ったというわけですね。

 

↑B.V.Dの創成期のビジュアル。「ヘビー・デューティで着心地も良い」という合理性で、世界中に知られるブランドになりました

 

 

開発時のモニターは自社社員!?

――開発に際してのモニタリングはいかにして行われたのですか?

 

竹下 これは主に社内のぽっちゃり体型の社員に着てもらい、意見を聞きながら微調整をしていったところが大きいですね。

 

もともとPOCHA BODYはTシャツよりも先にトランクス、ボクサーパンツのほうを開発していたのですが、これらのラインは特にこういったモニターの意見は重要でした。

 

「このままだと、まだお腹が苦しい」「ゴムの締め付けが強い」「ゴムの跡がお腹に残る」など。こういった意見を反映し、トランクス、ボクサーパンツのラインも例えば通常よりも柔らかく、締め付けが少なく、でも耐久性もある……といったものを採用しています。

 

これらの人気も高く、秋冬からはPOCHA BODYのボクサーパンツの派生商品として、ロングボクサーというアイテムを展開する予定です。

 

――トランクス、ボクサーパンツは数々のオシャレな柄がありますが、POCHA BODYのTシャツのほうも、今後は様々なタイプが出そうでしょうか?

 

竹下 白や黒のシンプルなライン以外のものも、いつか出せたらいいなとは個人的には思います。

 

まず、POCHA BODYとしての、ここまでの機能は実現することができたので、これから先はこれを基盤に、さらにオシャレに繋がる付加価値をつけられるといいなと思っています。ぜひもっと多くの方に、B.V.D.のPOCHA BODYを知っていただき、身につけていただきたいと考えていますので。

 

 

筆者も痩せているとは言いがたく、お腹も年相応に十分出ておりますが、POCHA BODYの存在は太った男性のオシャレを後押ししてくれる画期的な商品のように思いました。ポッチャリさん、メタボさん、是非一度POCHA BODYを手にとってみてください!