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2019/1/29 17:15

プロが選んだブランド別定番スニーカー5選【アシックスタイガー編】――世界のプレミアムショップも唸るゲルテクノロジー

日々新しいトレンドが生まれては更新されていく、現在のファッションシーン。中でもスニーカーのトレンドは、恐ろしいほどに目まぐるしく流動的で、追いかけるのもひと苦労。だけどその都度新しいモデルを買い足していけるほど、財布にもクローゼットにも余裕はない。じゃあ一体、ファッションスニーカーは何を買えば良いのか!?

 

そんな大いなるテーマに答える絶対の真理が、ひとつだけ存在する。それは「定番モデル」。そんなわけでスニーカーシーンの代表的ブランドから、それぞれが誇る定番中の定番モデルをご紹介。第3回目は日本が世界に誇るビッグブランド、アシックスの中でも、ライフスタイルシューズにクローズアップしたコレクションであるアシックス タイガーにフォーカスします。

 

1949年、鬼塚喜八郎により立ち上げられた鬼塚商会を前身とするアシックス。翌年リリースしたバスケットボールシューズを処女作として、さまざまなスポーツシューズを開発していく中で世界へ進出。1977年には当時のオニツカ株式会社と他2社が対等合併した、株式会社アシックスが誕生し、更に高いレベルでスポーツ専用シューズを開発していく。

 

当初ここ日本では“ファッションピースとしてのスニーカー”という価値が伴うことはなかった一方で、欧米では極東の先進国から来たハイテクスニーカーとして人気を確立。その奇妙なズレを解消するため2015年にリスタートしたコレクション、それがアシックスタイガーだ。スニーカーが最も輝いていた80〜90年代のプロダクトをモダンにリファインする同コレクションから、スニーカー事情に造詣深い編集ライター・ヤマモトサトシ氏のコメントで定番5モデルをご紹介しよう。

 

ヤマモトサトシさん

ファッションやアウトドア、ライフスタイル雑誌などで、スポーツ及びアウトドア関連のプロダクトを中心に執筆。シューズ選びで重視するのは“機能美”。どんなに優れた機能があろうとも、見た目が良くないと食指は動かず、その逆もまた然り。

 

[01]

ゲルシリーズの人気筆頭モデル

アシックスタイガー

GEL-LYTE Ⅲ

実売価格6480円

「ナイキにエア、リーボックにヘキサライトがあるように、アシックスにもオリジナルの衝撃吸収システムがあります。それがゲル。80年代中盤、各社がしのぎを削った衝撃吸収競争の中で生まれたこのオリジナル素材は、当時のアシックスを代表する最新鋭システムとして、幾つものシリーズモデルがリリースされてきました。

 

中でも一番の人気を誇るのが、この『ゲルライト3』。上野のミタスニーカーズやニューヨークのKITHなど、数々の世界的プレミアムスニーカーショップの別注モデルベースにも選ばれてきた、まさにアイコニックな1足です。インラインはもちろん、海外限定版やキーアカウントショップ別注モデルなど、豊富なバリエーションが揃うのも魅力ですね。スプリットタンと呼ばれるセンターで分割されたシュータンデザインが特徴です」

 

[02]

モノソック構造による高精度フィッティングを実現

アシックスタイガー

GEL-LYTE V

実売価格8640円

「前述の名作『ゲルライト3』発売から3年後。1993年にリリースされたゲルシリーズの5代目モデルが、この『ゲルライト5』です。ゲルの成功でクッショニング開発にマイルストーンを残したアシックスが同時進行的に目指していたのが、フィッティングの向上。その93年時点でのひとつの答えとして『ゲルライト5』に採用され、同モデルのアイコンともなったシステム、それがモノソック構造です。シュータンとアッパーが一体になった、インナーブーティーシステムですね。

 

今でこそ見慣れたシステムですが、当時はかなり革新的。それも極東の国ジャパンからのリリースですから、欧米諸国のスニーカー業界は相当ザワついたんじゃないでしょうか。その証拠に、こちらも海外有名ショップなどの別注モデルが多数あります。オーセンティックなルックスとハイテク感のバランスが絶妙です」

 

[03]

レジェンドデザイナーが生み出した名作

アシックスタイガー

GEL-KAYANO TRAINER

実売価格1万260円

「ゲルシリーズの中でも他ラインナップとは一線を画するデザインで人気を博す、『ゲルカヤノトレーナー』。アシックスランニングシューズカテゴリーのフラッグシップモデルとして、現在まで計25作も続く『ゲルカヤノ』シリーズの初代モデルです。

 

デビューは『ゲルライト5』と同じ1993年。主に北米市場に向けてリリースされたモデルで、当時日本国内での流通は極僅かだったというエピソードにも心惹かれる1足です。ちなみにモデルネームにも冠されている『カヤノ』とは、同作をデザインしたアシックスのデザイナー、榧野俊一氏の名前が由来。クワガタをモチーフにしたというデザインは、当時のスニーカー業界ではかなり異例のことだったとか。サイドのラバーパーツとモノコック構造をアイコンとする、個人的にも1番好きなモデルです」

 

[04]

アシンメトリーなデザインに現代機能を纏う

アシックスタイガー

GEL-MAI

実売価格1万800円

「全体的にベーシックなデザインが多いイメージのアシックスの中でも、ひときわの独創性を放つモデル、『ゲルマイ』。オリジナルは1999年デビューなので、今回ピックアップした5足の中では、1番の後発モデルですね。

 

アシンメトリーなシューレースデザインは、ランニング中に生じる足の屈折動作を邪魔しないため。血管が集中する足の甲への負荷を減らすべく開発されたファンクショナルなデザインです。また履き入れ口後ろ側に配されたチューブがシューレースと連動することで、足首もしっかりホールド。さらに2017年にリリースされたこちらの復刻版では、スポンジ材にゲルの機能を融合させた『フューズゲル』を搭載。現行パフォーマンスシューズにも採用される高精度なクッショニングを体感してください」

 

[05]

永久不滅のゲルシリーズ初号機

アシックスタイガー

GEL-LYTE

実売価格7560円

「ジャパンプロダクトの威信をかけて、欧米の列強メーカーに対抗すべく開発された衝撃吸収システム、ゲル。その初代搭載モデルとしてリリースされた『GT-2』の意匠を受け継ぎつつ、適材適所にリファインを施し、1987年にデビューしたこちらの『ゲルライト』。言うまでもなく、その後も連綿と続くゲルライトシリーズの長兄モデルです。

 

当時はまだ、ハイテクスニーカーブームの黎明期。その時代背景を映し出したレトロハイテクたる佇まいは、昨今のファッショントレンドにも通ずる部分があるのでは。もちろんアシックスのスニーカー史に名を残す1足である以上、その普遍性はお墨付き。しっかりとした歴史ある定番でありながら、個性的。かつ今っぽさも備えた『ゲルライト』は、今1番“美味しい”スニーカーなのかもしれませんね」