日々新しいトレンドが生まれては更新されていく、現在のファッションシーン。中でもスニーカーのトレンドは、恐ろしいほどに目まぐるしく流動的で、追っかけるのもひと苦労。だけどその都度新しいモデルを買い足していけるほど、財布にもクローゼットにも余裕はない。じゃあ一体、ファッションスニーカーは何を買えば良いのか!?
そんな大いなるテーマに答える絶対の真理が、ひとつだけ存在する。それは「定番モデル」。というわけで、スニーカーシーンの代表的5ブランドから、それぞれが誇る定番中の定番モデルをご紹介しよう。第4回目は、今や不動のトレンドセッターにして不屈のスニーカーイノベーター、ナイキにフォーカスします。
スニーカーの歴史とはつまり、各社のテクノロジー競争の歴史。そんな中でナイキは他社に先駆け、1978年に世界で初めて空気(正確にはガス)を使ったクッショニングシステム、『ナイキエア』を発表する。さらに日進月歩の進化を続け、1987年にはエアクッショニングのビジブル化した歴史的快作、『AIR MAX 1 』が登場した。これまで日の目を浴びることのなかった衝撃吸収機構を可視化させるという革新的なデザインで業界を震撼させるとともに、スニーカーの可能性を飛躍的に拡張することに成功した。
そしてそれから2年後の1995年には『AIR MAX 95』をリリース。ご存知の通りの社会現象を巻き起こし、ここ日本でも“ハイテクスニーカー=ナイキ”という図式を確立した。かくしてモダンスニーカーシーンのトップランナーであり続けるナイキから、いま改めて振り返りたい定番5モデルをピックアップ。スニーカー事情に造詣深い、編集ライター・ヤマモトサトシ氏のコメントの下に紹介していきます。
【解説】
ヤマモトサトシさん
ファッションやアウトドア、ライフスタイル雑誌などで、スポーツ及びアウトドア関連のプロダクトを中心に執筆。シューズ選びで重視するのは“機能美”。どんなに優れた機能があろうとも、見た目が良くないと食指は動かず、その逆もまた然り。
[01]
ビジブルエアを送り出した歴史的名作
ナイキ
AIR MAX 1
実売価格1万3500円
「スニーカー界にその名を残す伝説的デザイナー、ティンカー・ハットフィールドにより生み出されたAIR FORCEシリーズの初代モデル。なんと言ってもポイントは、世界で初めて衝撃吸収材をデザインピースとして取り入れたミッドソールの窓、『ビジブルエア』ですね。ご存知の方も多いと思いますが、実はこのデザイン、シューズに体重がかかった際にエアバッグの逃げ場を確保するという意味も兼ねての仕様でもあるんです。
発売は1987年。それからしばらくの後に始まるハイテクスニーカーブームの呼び水のひとつともなった、まさに歴史的エポックメイキングなスニーカーです」
[02]
オールドスクールからニュースクールへの過渡期を体現
ナイキ
AIR MAX 90
実売価格1万1000円
「言わずもがな、AIR MAXはナイキの看板シリーズ。正直95と迷いましたが、今回はAIR MAX 90を選出しました。定番=普遍性と捉えた時に、個人的には90の方がより普遍的に合わせやすいと思うので。
AIR MAXシリーズとしては3作目となる今作の発売は、その名前の通り1990年。ビジブルエアを強調する配色や各所のTPUパネルなどのアッパー仕様は、80年代のオールドスクールスタイルから、よりモダンなスタイルへと移行する90年代の幕開けに相応しいデザインと言えるのではないでしょうか。現代のライフスタイルに当てはめても、クラシックにもモダンにも振れる、非常に優秀な1足だと思います」
[03]
スポーツシューズの価値を超えたカルチャーアイコン
ナイキ
AIR FORCE 1 LOW
実売価格1万800円
「ナイキエアを搭載した初のバスケットボールシューズとしてデビューした、言わずと知れた大傑作。1982年に発売されると、その優れた機能性はすぐにプロのコートを席巻。さらにスポーツカルチャーに敏感なヒップホップアーティストなどストリートスターの足元を経由して、広く一般層にまで認知されることに。
発売から37年を経た現在でも、そのパーマネントなデザインは健在。スポーツシューズとして生まれ、スポーツシューズ以上の価値を持つに至った、世界でも類を見ないスニーカーです。中でもこちらのオールホワイトのローカットモデルが、ライフスタイルモデルとしては最も定番的ではないでしょうか」
[04]
ヘリテイジバスケットボールシューズの金字塔
ナイキ
BLAZER MID
実売価格1万800円前後
「今回の5モデルの中では最古参の1972年デビューモデル、BLAZER。前述のAIR FORCE 1が発売されるまで、当時のナイキバスケットボールシューズカテゴリーのコアモデルとして活躍した1足です。
すっきり細身のシルエットと無駄を省いたシンプルデザインは、まさにクラシック。トレンドや年齢に関係なく着用できる、オールタイム・ベーシックなルックスがポイントですね。ちなみに70年代には、マッドドッグの愛称で親しまれた(恐れられた?)レジェンドスケーター、トニー・アルバも愛用。『THRASHER MAGAZINE』創刊号のイラストにも描かれたというエピソードは、スケーターの間では余りにも有名です」
[05]
革命的フィッティングシステムを生み出した不朽のハイテクモデル
ナイキ
AIR HUARACHE
実売価格1万1880円前後
「シュータンとアッパーが一体となった、柔らかなネオプレン素材のブーティー構造。今でこそ他ブランドでも見受けられるシステムですが、1991年、そのオリジネーターとしてデビューしたAIR HUARACHEの特異な佇まいは、あまりにも衝撃的でした。しかしそのコンセプトは大当たり。当初ランニングカテゴリーに投入され好評を得た同システムは、後にバスケットボールシューズなどの他カテゴリーにも踏襲されます。
アイコンであるスウッシュを省略したデザインも特徴的。そこに関してはナイキ社内でも物議を醸したそうですが、スウッシュがあろうがなかろうが、一度見たら忘れられない完成されたハイテクデザインは、いつの時代も健在ですね」