キャンプやトレッキング、釣り、ゴルフ、そしてバイク。コロナ禍において、アウトドアアクティビティが空前のブームとなっています。コロナ禍で閉塞感漂う状況下において、密閉・密集・密着(密接)の「三密」にならないアウトドアアクティビティは、感染対策を十分にとれば安全に活動できるとして人気なのです。
こうしたアウトドアブームを背景に注目されているのが、GORE-TEX(ゴアテックス)素材を採用したウェアおよびシューズ。GORE-TEXは、高い防水性で水が衣服内に侵入するのを防ぎ、優れた防風性により寒さを防ぎます。その一方で透湿性も保持し、ハードなアクティビティでかいた汗による蒸気を衣服外に逃がして、体を快適に保つ高機能ウェアです。
梅雨時期に大活躍する GORE-TEXウェア
ここ最近では、アウトドアアクティビティだけでなく、タウンウェアとしてもGORE-TEX製品が注目されています。過密な満員電車を避けるために自転車通勤したり、2、3駅程度なら歩いたりするビジネスパーソンが増えていますが、そうした人々にとっても急な雨が凌げて快適に通勤できると、GORE-TEX製のウェアおよびシューズが人気になっているのです。
GORE-TEXはハードな天候下にこそ真価を発揮するのですが、だからこそ汚れることも多くなります。しかし、洗濯してしまうと防水性や防風性が損なわれてしまうことを恐れ、少々の汚れならば放置してそのまま着続けるユーザーが多いのではないでしょうか。自分で洗濯するのが怖くてクリーニングに出す人も多いことでしょう。頻繁にはクリーニングに出せないので、結果として1シーズンは着っぱなし。これからの季節、梅雨にゲリラ豪雨にとGORE-TEX製品の出動機会が多くなりますが、着っぱなしだと汚れや匂いも気になってきます。
そこで今回、日本ゴア合同会社の伊藤由里子さんに、家庭でできるGORE-TEX製品のメンテナンス方法を聞いてみました。正しいメンテナンス方法を知れば、いつでも気持ちよく着ることができるし、結果的にウェアの寿命も伸び、買い替えも減りサステナブルにも繋がります。
GORE-TEXアウターウェアは自宅で洗濯OK!
――GORE-TEX製品は、洗うとせっかくの防水性が落ちてしまうと思い、家庭で洗うのを躊躇しているのですが、洗っても良いのでしょうか。
伊藤 はい、ほとんどの製品は家庭で洗うことができます。製品本来の機能を保つためにも、むしろ積極的に洗ってください。GORE-TEX製品は「GORE-TEXメンブレン」という薄いフィルム状の生地を挟んだ3層構造になっているのですが、表生地には撥水基と呼ばれる柱のようなものが直立して並んでいます。水滴よりも小さいこの柱が水を弾くのですが、汚れが付着すると撥水基が倒れてしまい、生地に水が浸透してしまうのです。雨や泥汚れだけでなく、キャンプの煙、お化粧や日焼け止め、自分の汗や皮脂が付着しても撥水性は損なわれてしまいます。こうした汚れを洗濯で落とすことにより、撥水基が再度直立し、水を弾いてくれるのです。また、裏地に汗や皮脂がたまると、生地の縫い目に貼ってある防水シームテープが剥がれやすくなってしまいます。ですから、着るたびに洗濯することをオススメします。
――洗濯して汚れを落とすことで表生地の撥水性が復活するわけですね。洗うときの注意点はありますか?
伊藤 まずは、製品についている洗濯タグを必ず確認して、その内容に従って洗濯してください。アウターウェアによって表生地・裏地に使われている素材が異なるため、洗濯・乾燥方法が異なる場合があります。次に、全てのファスナー、面ファスナーを閉じ、ポケットも閉じたら、軽く畳んで洗濯ネットに入れて洗濯機へ。液体の中性洗剤を少なめに入れて40℃以下のぬるま湯で洗濯してください。粉末洗剤は洗剤成分が残りやすいので使用は避けます。漂白剤はもちろん、しみ抜き剤も生地を痛めますので使用は避けましょう。液体洗剤でも香り成分の強い種類も避けてください。洗濯後に香りが残るというのは、その成分が生地の表面に残っているということなので、これが撥水性を低下させる可能性があるからです。
――洗濯成分を残さないことが重要なんですね。とすると、すすぎも重要になるってことですか。
伊藤 はい、すすぎは重要です。2回以上しっかりとすすいでください。脱水は軽めで大丈夫です。脱水が終わったら、ポケットに溜まった水を抜いて、日陰で吊り干ししてしっかり乾かしてください。
――ドラム式洗濯乾燥機で乾燥してもよいのでしょうか?
伊藤 製品についている洗濯表示を確認し、それに従うようにしてください。乾燥機がOKであれば、むしろ温風乾燥することで寝ている撥水基が起き、撥水性が回復します。ただし、高温は生地を痛めますので中温以下で。表生地の撥水性が落ちてきたなと思ったらウェアが乾いた後、さらに20分ほど乾燥機にかけて熱を加えることをオススメします。ご自宅に乾燥機がない場合は、アイロンを低温設定にし、当て布を挟んでアイロンがけすることで撥水基が起立して撥水性能が回復します。
――ヘアドライヤーを使用しても大丈夫だったりするのでしょうか?
伊藤 ヘアドライヤーを使う方法もあります。ただし、熱くなりすぎないように、生地から少し離れたところから低温で温風を当てるようにしてください。こうした熱処理でも撥水性が回復しなくなったら、市販の撥水スプレーを使用してください。
――そうなんですね。ほかの洗濯物と一緒に洗っても大丈夫でしょうか?
伊藤 大丈夫です。洗濯タグを確認して、同じ取り扱いの表示があるウェアと一緒に洗うことができます。
アウターウェア以外のGORE-TEX製品メンテナンス方法
――今まではアウターウェアに関してお聞きしました。それ以外のGORE-TEX製品も洗濯方法は同じでしょうか?
伊藤 どの製品でも、その製品についている洗濯方法を守っていただくのが基本です。フットウェアやアクセサリー類の帽子、グローブは手洗いを推奨します。型崩れしたり、布地以外の装着品を痛める可能性があるからです。また、フットウェアにはドライヤーの使用は避けましょう。ソールなどに使用されている接着剤などに悪影響を及ぼす可能性があります。
――GORE-TEXフットウェアは、トレッキングシューズやスニーカーの他にビジネスシューズもあって幅広いですよね。雨などで濡れてしまったフットウェアを履いて長時間歩いていると、不快感も覚えます。そうなると、撥水性・透湿性が本当ありがたく感じます。
伊藤 もしフットウェアの表面が水を弾かなくなった場合は、耐久撥水加工を行ってください。また、市販の消臭スプレーを使用しても、GORE-TEXフットウェアの機能に影響はありません。
現在、GORE-TEX製のビジネスコートも売られており、前述したように、タウンユーザーも増えています。GORE-TEXは防風性が高いことから、1枚持っているだけで秋冬春の3シーズン、さらに肌寒い梅雨時期にも着ることができます。真冬の寒い時期は中にインナーダウンを着ればよく、厚着をしなくても寒さを凌げます。GORE-TEX製品は比較的高価ですが、それゆえ機能性が高く、丈夫で長持ち。こまめにメンテナンスすればさらに長持ちするし、クリーニングに出さなくて済むので、むしろコストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
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