2015年の新語・流行語大賞候補にもなった「インバウンド」。「外国人旅行者を自国へ誘致すること」の意味で、訪日外国人をターゲットにした経済用語として「インバウンド消費」「インバウンドマーケティング」などと用いられています。
「爆買い」という言葉使いにくかった小売店には朗報
かねてから中国人富裕層の「爆買い」が話題になってきたわけですが、「インバウンド」とはなかなか響きのいい言い換え語が浸透したと思います。まず、カッコ良さが違う! あくまでもイメージですが、ディスカウントストアや量販店など入りやすい(いい意味で、ですよ!)お店が「爆買いセール開始!」「爆買いを見越して中国人対応の接客や品揃えを……」とやるのはいいんですが、百貨店やブランド直営店、セレクトショップなどが「爆買い対応します!」とはなかなか大声で言いにくかったんじゃないでしょうか。
これが、「弊社もインバウンド需要に対応して……」「国内で急成長するグローバル市場=インバウンドマーケティングの重要性について」とかクールに言えるとなれば、言霊的に企画書が通りやすくなりそうです。爆買い対策企画書のタイトルだけ変えて、こっそり再提案した人もいるはず。
日本生まれでない「レゴ」も爆買いの対象に
イメージにだけ基づく前置きが長くなりました。(本当にすいません)
本題ですが、インバウンド消費で、トイホビー市場ももちろん潤いました。専門誌「Toy Journal」の調査では大手チェーンの各店舗で売り上げの数パーセントがインバウンド消費によるもので、店舗によっては数十パーセントがインバウンド消費だったケースもあるそうです。
具体的にどんな商品が人気だったかというと、メイド・イン・ジャパンの精巧なプラモデル、日本が本場のアニメ・ゲームキャラクターのフィギュア、サンリオやサンエックスなどの雑貨のほか、安心・安全な木製玩具(お米の素材の積み木も人気だったとか)など。
その調査で、興味深いものがありました。それは「レゴ」です。Toy Journal誌では中国人観光客のオモチャ好きがレゴを爆買いする傾向も指摘されていました。
レゴは精巧な模型・ブロックトイではありますが、メイド・イン・ジャパンでもないし、日本文化や和をモチーフにした「レゴ ニンジャゴー」も含めて日本発信のコンテンツではありません。なぜわざわざ日本でレゴを買うのでしょうか?
その理由は価格にあります。関税のために、レゴの小売価格は中国国内よりも日本のほうが安いんですね。なんと半額の感覚だとか。レゴは商品種類が多く、また数があるほど魅力が増すので、半額となれば爆買いしようってもんです。
日本人の感覚だと、「中国の物価は安い」イメージがありますが、実際は人件費が安いだけで、グローバルなブランドのアイテムはそんなに安くないことがあります(ユニクロも中国ではちょっとしたブランド衣料になるというぐらい)。
ご想像のとおり、レゴの非正規品や偽造品は中国の怪しげな商店から、下手すると普通の玩具店に並んでいたことがあります。が、価格が安ければ正規品を買いたい、という需要として読むこともできそうです(富裕層に限ると、という注釈は必要そうですが)。
中国で高額、日本で手ごろなアイテムが狙い目
来年の春節に、また「爆買い」集団がやってきます。レゴ以外にも「中国国内で実は高額扱い」なアイテムを研究すると、インバウンド需要を大きくつかむことができるかもしれませんね。
余談ですが、インバウンドな光景として空港で大量に箱を廃棄されるエピソードもあります。ゲンナリ話として消費されていますが、それならば、本体と説明書だけをコンパクトにまとめてあげる「超簡易包装」を選べるようにすると、エコ的にもインバウンド的にもいいんじゃないかなと思いました。