──2013年にモンストがスタートし、今年5周年を迎えます。これまでの変遷についてお聞かせください。
木村:私たちは“滲出(しんしゅつ)”と呼んでいるのですが、戦略的に周辺の産業へとどんどん滲み出しています。例えばグッズは最初にAmazonで販売し、手ごたえがあったため自社で店舗やECサイトを作りました。イベントなら最初は「ニコニコ超会議」などに出展し、ニーズを把握したら独自イベントを開催しました。まずは協業ベースでテストし、その後は自前主義に移行するというやり方です。自前主義にすることで、B.B.Q.というコンセプトを徹底することもできます。
──“滲出”というとじわじわ滲み出るイメージですが、展開そのものは非常にスピーディですよね。
木村:確かにスピード感は重視しています。というのも、私たちのもうひとつのテーマとして「驚きを世に提供し続けること」をテーマに掲げているからです。私たちの行動指針は、“ユーザーサプライズファースト”です。ユーザーのみなさまに常に熱量高く楽しんでいただくには、驚きが必要だと思います。お客様の声を聞かないというわけではありませんが、声をそのまま反映していたらスピードが遅くなりますし、驚きも薄いでしょう。時には失敗したり、ユーザーの方々からお叱りを受けたりすることもあるかもしれませんが、とにかく驚きを届け続けることを優先したいと考えています。
──これまでに打ち出した施策で、成功した例は?
木村:印象深いのはアニメですね。アニメを作ろうとなった際、ユーザー調査をしたところ、中高生はテレビを観ずにYouTubeを観ていることがわかりました。なかでも、10分以下の動画の人気が圧倒的に高かったんです。そこでモンストに関しても、YouTubeで1話7分ぐらいのアニメを配信することにしました。これまで本格的にYouTubeでアニメを展開する前例がなかったので不安もありましたが、結果的に1話あたり数百万視聴と成功を収めることができました。アニメに登場したキャラクターも喜んでいただき、グッズの売れ行きも上々。あの意思決定とその後の成功は私たちの糧になりました。すべて自社で手掛けたため、製作費だけで相当な費用がかかりましたからなかなか痺れる意思決定でしたね。
──アニメを配信した頃には、すでにモンストは十分な認知度を得ていましたよね。そこまで大きく育ったコンテンツをアニメ化することで、どのような効果を狙ったのでしょう。
木村:ゲーム、アニメ、ショップなど、すべてがモンストというお祭りの場を創るために必要だと考えています。ゲームだけでは表現力も限られますが、友だちと盛り上がってもらうためにはアニメのようにイマジネーションをさらに増幅させる装置が重要だと思うんです。モンストという魔法にかかってもらうためのアプローチのひとつです。
──モンストは、今年5周年を迎えます。5年も続くと、ユーザーも社会人になったり、進学したりと状況が変わってくるのではないでしょうか。そこをつなぎとめるための施策は考えていますか?
木村:無理に引き留めるのではなく、お客様のライフステージに合った遊び方をしていただければいいと考えています。私たちが目指すのはカラオケです。カラオケは、地元の友だちとも職場の人とも楽しみますよね。モンストも、カラオケのようにコミュニケーションを深める遊び場として楽しんでいただけたらうれしいです。
──しばらくモンストから離れている方に向けて、今のモンストをアピールするとしたら?
木村:今年は5周年なので、新たな取り組みをたくさん準備しています。ひとつは劇場版アニメ第2弾。ほかにもアニメ新シーズンを予定しています。ゲームの中身も、大胆に変更する予定です。時期についてはまだ発表できませんが、今までの遊び方がガラッと変わるぐらいのことを考えているのでご期待ください。